読書。
『木のいのち木のこころ<天・地・人>』 西岡常一 小川三夫 塩野米松
を読んだ。
法隆寺最後の棟梁、宮大工の西岡常一さんと、
その弟子となり、鵤(いかるが)工舎という宮大工の会社を立ち上げ、
技術を後世に残しながら全国の寺社の仕事を受けている小川三夫さんを中心に、
作家・塩野米松さん鵤工舎で修行する弟子たちにも「聞き書き」した、
名著と呼ばれる本です。
もともと、この『木のいのち木のこころ』は三冊組の体裁で
1994年ころに出たものだったのが、2005年に合本され、
今回ぼくが読んだものになっています。
法隆寺は世界文化遺産に指定されましたが、
世界最古の木工建築なんだそうです。
聖徳太子が建てさせたもので、
建築年代は今から1300~1400年くらい前になります。
飛鳥文化の時代に建てられたものが、
ちょっとした直しはあったでしょうが、
今の時代にも立派に建っているのはすごいですよね。
法隆寺の金堂などは一番長持ちするといわれるヒノキで作られているそうです。
建築資材としては、木のランクでも、トップに君臨する木だそうです。
それで、飛鳥時代に、樹齢1000年くらいのヒノキを使ったんですが、
それが朽ちずにいまも柱や梁として建物の一部になっている。
その秘密はなんぞや、というと、
木の癖を見抜き、それを活かして組んでやるにあります。
法隆寺の宮大工にはいろいろな口伝があり、
その口伝をまもることで、
カギとなる飛鳥から伝わる宮大工の考え方の骨を現代の宮大工でも
持つことができるようでした。
さらに、西岡さんは飛鳥や白鳳の建築のあり方を知りつくすほどで、
学者と論争をしたこともあるそうです。
そして、そんな木工建築の技術を伝える、徒弟制度があります。
現代では、「悪しき徒弟制度」などというひとも多いようですが、
そこには徒弟制度ならではの、ひとを育てることの、
本質的な考え方があります。
いっしょに寝て、ご飯を食べて、風呂に入り…と同じ生活をずっと続けて、
プライバシーは無いような生活です。
大きな目的は、宮大工として一人前になること。
そのために、遠くて早い道なんだと思います。
早く効率よく教えるっていう教育方法が、
考えたりひらめいたりが苦手なひとをつくる。
そういう効率性重視の教え方で育てられると、
窮地に陥っても、自分で考えてそこから脱するみたいなことが
できないひとができてしまうと言われている。
たとえば、こないだツイターのTLに流れてたのだけれど、
このままじゃダメになるがそれでも頑張れなくて落ちていく
っていうタイプがいるという話がありました。
それは、効率の良さ重視での教育を受けてきたがためにそうなるのかなと思える。
自律的に行こう!という馬力のいる状況で、
それがまったく育まれていないんですね。
宮大工の弟子は、親方が削ったかんな屑を渡されて、
「こうやるんだ」というたったそれだけのヒントのみで、
そこから弟子はあれこれ削り方を試行錯誤して
何年もかかってやっとその方法を見つけたりする。
時間がかかるんですよね。
それを早いのがいいからとあれやこれや教えても、
そんなんじゃ、自律的な馬力は育たない。
プロセスを省略しては得られない大事なものがあるということ。
プロセスを大事にするのはサービス業も同じだから、
なんだかわかる気がするのです。
プロセスの中には、言語化できない大切なものたちが、
いっぱい生きているんですよねえ。
言外の経験ってものがプロセスの中にある。
本書で伝えられている大きなもののひとつに、
こういった、言葉では伝えられないものがあって、
それはすごく大事なものなんだよ、という教えがあります。
それを西岡さんや小川さんは、
徒弟制でもって伝えてもらい、育んでもらったし、
弟子にも伝え、育んでいる、というのがあります。
550ページを超える厚い本ですが、
夢中にさせる力を持った本だと思いました。
宮大工さんってなんだろう、というまったくの素人なぼくでも
興味を持って読めましたから、
日本の木工建築術のすごさとともに、
ひとを育てること、教育とはなにかを考えるための示唆もありますし、
それらを応用して、自らを育てることや、社会のデザインなどにも、
ちょっと話が大きくなっていますが、
役に立つと思います。
まだ400ページもあるなあ、だとかと読みましたが、
読了してみれば、読んでよかった。
おもしろかったです。
『木のいのち木のこころ<天・地・人>』 西岡常一 小川三夫 塩野米松
を読んだ。
法隆寺最後の棟梁、宮大工の西岡常一さんと、
その弟子となり、鵤(いかるが)工舎という宮大工の会社を立ち上げ、
技術を後世に残しながら全国の寺社の仕事を受けている小川三夫さんを中心に、
作家・塩野米松さん鵤工舎で修行する弟子たちにも「聞き書き」した、
名著と呼ばれる本です。
もともと、この『木のいのち木のこころ』は三冊組の体裁で
1994年ころに出たものだったのが、2005年に合本され、
今回ぼくが読んだものになっています。
法隆寺は世界文化遺産に指定されましたが、
世界最古の木工建築なんだそうです。
聖徳太子が建てさせたもので、
建築年代は今から1300~1400年くらい前になります。
飛鳥文化の時代に建てられたものが、
ちょっとした直しはあったでしょうが、
今の時代にも立派に建っているのはすごいですよね。
法隆寺の金堂などは一番長持ちするといわれるヒノキで作られているそうです。
建築資材としては、木のランクでも、トップに君臨する木だそうです。
それで、飛鳥時代に、樹齢1000年くらいのヒノキを使ったんですが、
それが朽ちずにいまも柱や梁として建物の一部になっている。
その秘密はなんぞや、というと、
木の癖を見抜き、それを活かして組んでやるにあります。
法隆寺の宮大工にはいろいろな口伝があり、
その口伝をまもることで、
カギとなる飛鳥から伝わる宮大工の考え方の骨を現代の宮大工でも
持つことができるようでした。
さらに、西岡さんは飛鳥や白鳳の建築のあり方を知りつくすほどで、
学者と論争をしたこともあるそうです。
そして、そんな木工建築の技術を伝える、徒弟制度があります。
現代では、「悪しき徒弟制度」などというひとも多いようですが、
そこには徒弟制度ならではの、ひとを育てることの、
本質的な考え方があります。
いっしょに寝て、ご飯を食べて、風呂に入り…と同じ生活をずっと続けて、
プライバシーは無いような生活です。
大きな目的は、宮大工として一人前になること。
そのために、遠くて早い道なんだと思います。
早く効率よく教えるっていう教育方法が、
考えたりひらめいたりが苦手なひとをつくる。
そういう効率性重視の教え方で育てられると、
窮地に陥っても、自分で考えてそこから脱するみたいなことが
できないひとができてしまうと言われている。
たとえば、こないだツイターのTLに流れてたのだけれど、
このままじゃダメになるがそれでも頑張れなくて落ちていく
っていうタイプがいるという話がありました。
それは、効率の良さ重視での教育を受けてきたがためにそうなるのかなと思える。
自律的に行こう!という馬力のいる状況で、
それがまったく育まれていないんですね。
宮大工の弟子は、親方が削ったかんな屑を渡されて、
「こうやるんだ」というたったそれだけのヒントのみで、
そこから弟子はあれこれ削り方を試行錯誤して
何年もかかってやっとその方法を見つけたりする。
時間がかかるんですよね。
それを早いのがいいからとあれやこれや教えても、
そんなんじゃ、自律的な馬力は育たない。
プロセスを省略しては得られない大事なものがあるということ。
プロセスを大事にするのはサービス業も同じだから、
なんだかわかる気がするのです。
プロセスの中には、言語化できない大切なものたちが、
いっぱい生きているんですよねえ。
言外の経験ってものがプロセスの中にある。
本書で伝えられている大きなもののひとつに、
こういった、言葉では伝えられないものがあって、
それはすごく大事なものなんだよ、という教えがあります。
それを西岡さんや小川さんは、
徒弟制でもって伝えてもらい、育んでもらったし、
弟子にも伝え、育んでいる、というのがあります。
550ページを超える厚い本ですが、
夢中にさせる力を持った本だと思いました。
宮大工さんってなんだろう、というまったくの素人なぼくでも
興味を持って読めましたから、
日本の木工建築術のすごさとともに、
ひとを育てること、教育とはなにかを考えるための示唆もありますし、
それらを応用して、自らを育てることや、社会のデザインなどにも、
ちょっと話が大きくなっていますが、
役に立つと思います。
まだ400ページもあるなあ、だとかと読みましたが、
読了してみれば、読んでよかった。
おもしろかったです。