読書。
『たまたま 日常に潜む「偶然」を科学する』 レナード・ムロディナウ 田中三彦 訳
を読んだ。
執筆中の小説の資料として、積読状態から拾い上げた本。
これがなかなかどうしての力作で良書。大興奮です。
偶然というものに対して、どのように考えるか。
普通に生きている人は、知識もなく、教えられる機会もなく、
ただ、不思議としか言いようのない経験しかなくて、
どう消化していいかわからないシロモノだと思います。
パチンコや競馬などのギャンブルをする僕であれば、
まだ普通に暮らす人より偶然に触れる機会が多いわけで、
それなりに耐性も知識もあるかと思っていましたが、
こうやって学術的な知識をわかりやすく体系的に、
確率、統計、心理学と順を追って解説してもらえると、
格段に自分の無知と浅さを知ることになり、
だからといって本書から馬鹿にされることはないので、
非常に面白く、「そうだったか!」だとか、
「わかった!」だとか、ピンとくるところが多く、
頭からビックリマークをたくさんだしながら読みました。
いろいろ例を出して、例証する形で説いていく部分が多く、
ゆえに、納得して読めるのですが、なかなか難しい話も多かった。
個人的には、1~10章のなかで、9と10章の前半が難しかった。
これも、読んでいる時のコンディションにもよるんですよね。
多少難しくても、どんどん読めるときってあるし、
逆にさっぱり頭に入らないときもあります。
なので、そのへんはあまり参考にはならないかもしれません。
カルダーノ、パスカル、ベルヌーイからベイズ、ラプラス。
確率から統計にいたる部分、
この本の中心部なのですが、彼らが開拓した分野をみていくことで
偶然が多角的かつ客観的に捉えられるようになっていきます。
確率の部分などは、以前に読んだブルーバックスの確率の本よりも格段に
読み物として優れていて、文系の人でもついていけますね。
偶然を確率で考えるのは、
ギャンブルをする人にとってはすごくわかりやすいです。
パチンコなんかでも、たとえば1/300の台があって、
それが300回転、つまり分母の確率で当たりがひける可能性は60数%です。
場合によっては、分母の5倍、6倍、ハマって当たらないこともある。
運がいいなと思うときには、30回転くらいで当たるのが何度も連続したり。
これが「偶然」ってものなんですよね。
日常に偶然がふりそそぎ、具合が悪くなるケースってあります。
僕もなんだこりゃ!な時期を経験したことがありますが、
それも、人生を「大数の法則」で考えれば、
そのうち大きな分母の確率に収束するようなことです。
大数の法則というのは、たとえばサイコロを60回振るとする。
各々の目は1/6の確率ででますから、1から6まで10回ずつでれば気持ちいいですが、
実際は揺らぎがあって、1が15回(1/4の確率)でて、
5が3回(1/20の確率)しか出ないだとかになります。
でも、サイコロを1万回くらい振れば、
ピタッってくらいに各目の確率は1/6に近づくんですよね。
それを、大数の法則といいます。
だから、ちょっと偶然が多いときには、
そういう「引きの良さ」で確率の分母の遥か下のところで当たりを引いてるな、となり、
そのうちまったく偶然が起きなくなって確率が収束するだろう、と
おおまかな予測がついて構えていられたりする。
また、統計で考えると、こういう場合もあります。
1から100までの数値のうち、真ん中のところが膨れ上がり、
両端へ向かってしぼんでいくグラフを想像してください。
平均を50として、どういうふうに人の運勢は分布するかみたいな図なのですが、
1という位置にいるのは、まったく当たりを引けない数少ない人たち。
100という位置にいるのは、当たりが引けまくる数少ない人たち。
どうしても、そういう人たちって数%くらいはでてくるんです。
その数%にどうやら自分ははまっているのかもしれない、
という気づきを得ることは大事なんです。
なぜなら、偶然という意味の無いものに対して意味を求めだすと、
場合によっては病んでしまったり、へんな宗教にはまったり、
ろくなことにならないからです。
本書から抜き出すと、
______
意味が存在するときにその意味を知ることが重要であるように、
意味がないときにそこから意味を引き出さないようにすることも
同じくらい重要である。
本書P248
______
となる。
偶然を錯誤するのは、人間のコントロール欲求によるものだそうです。
コントロール欲求が、意味の無い偶然までに意味を見出して
コントロールしようとしてしまう。
そこで錯誤が生まれる。
そして、その錯誤によって、偏見や差別が生まれもするのです。
_______
成功者からヒーローを作りだしたり、
失敗者を軽蔑の目で見たりすることはたやすい。
だが、能力は偉業を約束してはいないし、
偉業は能力に比例するわけでもない。
だから重要なことは(中略)偶然の役割を忘れないようにすることだ。
ある分野でもっとも成功した人間をスーパーヒーローと考えることは悲劇ではない。
しかし、自分自身を信じるのではなく専門家や市場の判断を信じ、
そのために諦めてしまうのは悲劇である。
本書P320
_______
まあ、でも、すべてを、偶然なんだからしょうがないね、
としてしまうと刹那的な人生になってしまう。
決定論的に因果で考えてしまうんですよね。
過去はそうやってあと知恵でなんとか論理づけられるけれど、
未来はそうじゃない。
それが、裏を返せば、過去への論理づけも恣意的なもので
視野の狭い考えゆえの錯覚だということがわかるゆえん。
また、本書には書かれていませんが、
書いてきたように、この世界が偶然性に支配される世界で、
未来なんてわからなくても、
未来に対する予防やセキュリティは大事ですよね。
と、まあ、盛りだくさんで濃密な「偶然」科学の本なんです。
これをじっくり読むと、世の中の見え方がちょっと変わるでしょう。
『たまたま 日常に潜む「偶然」を科学する』 レナード・ムロディナウ 田中三彦 訳
を読んだ。
執筆中の小説の資料として、積読状態から拾い上げた本。
これがなかなかどうしての力作で良書。大興奮です。
偶然というものに対して、どのように考えるか。
普通に生きている人は、知識もなく、教えられる機会もなく、
ただ、不思議としか言いようのない経験しかなくて、
どう消化していいかわからないシロモノだと思います。
パチンコや競馬などのギャンブルをする僕であれば、
まだ普通に暮らす人より偶然に触れる機会が多いわけで、
それなりに耐性も知識もあるかと思っていましたが、
こうやって学術的な知識をわかりやすく体系的に、
確率、統計、心理学と順を追って解説してもらえると、
格段に自分の無知と浅さを知ることになり、
だからといって本書から馬鹿にされることはないので、
非常に面白く、「そうだったか!」だとか、
「わかった!」だとか、ピンとくるところが多く、
頭からビックリマークをたくさんだしながら読みました。
いろいろ例を出して、例証する形で説いていく部分が多く、
ゆえに、納得して読めるのですが、なかなか難しい話も多かった。
個人的には、1~10章のなかで、9と10章の前半が難しかった。
これも、読んでいる時のコンディションにもよるんですよね。
多少難しくても、どんどん読めるときってあるし、
逆にさっぱり頭に入らないときもあります。
なので、そのへんはあまり参考にはならないかもしれません。
カルダーノ、パスカル、ベルヌーイからベイズ、ラプラス。
確率から統計にいたる部分、
この本の中心部なのですが、彼らが開拓した分野をみていくことで
偶然が多角的かつ客観的に捉えられるようになっていきます。
確率の部分などは、以前に読んだブルーバックスの確率の本よりも格段に
読み物として優れていて、文系の人でもついていけますね。
偶然を確率で考えるのは、
ギャンブルをする人にとってはすごくわかりやすいです。
パチンコなんかでも、たとえば1/300の台があって、
それが300回転、つまり分母の確率で当たりがひける可能性は60数%です。
場合によっては、分母の5倍、6倍、ハマって当たらないこともある。
運がいいなと思うときには、30回転くらいで当たるのが何度も連続したり。
これが「偶然」ってものなんですよね。
日常に偶然がふりそそぎ、具合が悪くなるケースってあります。
僕もなんだこりゃ!な時期を経験したことがありますが、
それも、人生を「大数の法則」で考えれば、
そのうち大きな分母の確率に収束するようなことです。
大数の法則というのは、たとえばサイコロを60回振るとする。
各々の目は1/6の確率ででますから、1から6まで10回ずつでれば気持ちいいですが、
実際は揺らぎがあって、1が15回(1/4の確率)でて、
5が3回(1/20の確率)しか出ないだとかになります。
でも、サイコロを1万回くらい振れば、
ピタッってくらいに各目の確率は1/6に近づくんですよね。
それを、大数の法則といいます。
だから、ちょっと偶然が多いときには、
そういう「引きの良さ」で確率の分母の遥か下のところで当たりを引いてるな、となり、
そのうちまったく偶然が起きなくなって確率が収束するだろう、と
おおまかな予測がついて構えていられたりする。
また、統計で考えると、こういう場合もあります。
1から100までの数値のうち、真ん中のところが膨れ上がり、
両端へ向かってしぼんでいくグラフを想像してください。
平均を50として、どういうふうに人の運勢は分布するかみたいな図なのですが、
1という位置にいるのは、まったく当たりを引けない数少ない人たち。
100という位置にいるのは、当たりが引けまくる数少ない人たち。
どうしても、そういう人たちって数%くらいはでてくるんです。
その数%にどうやら自分ははまっているのかもしれない、
という気づきを得ることは大事なんです。
なぜなら、偶然という意味の無いものに対して意味を求めだすと、
場合によっては病んでしまったり、へんな宗教にはまったり、
ろくなことにならないからです。
本書から抜き出すと、
______
意味が存在するときにその意味を知ることが重要であるように、
意味がないときにそこから意味を引き出さないようにすることも
同じくらい重要である。
本書P248
______
となる。
偶然を錯誤するのは、人間のコントロール欲求によるものだそうです。
コントロール欲求が、意味の無い偶然までに意味を見出して
コントロールしようとしてしまう。
そこで錯誤が生まれる。
そして、その錯誤によって、偏見や差別が生まれもするのです。
_______
成功者からヒーローを作りだしたり、
失敗者を軽蔑の目で見たりすることはたやすい。
だが、能力は偉業を約束してはいないし、
偉業は能力に比例するわけでもない。
だから重要なことは(中略)偶然の役割を忘れないようにすることだ。
ある分野でもっとも成功した人間をスーパーヒーローと考えることは悲劇ではない。
しかし、自分自身を信じるのではなく専門家や市場の判断を信じ、
そのために諦めてしまうのは悲劇である。
本書P320
_______
まあ、でも、すべてを、偶然なんだからしょうがないね、
としてしまうと刹那的な人生になってしまう。
決定論的に因果で考えてしまうんですよね。
過去はそうやってあと知恵でなんとか論理づけられるけれど、
未来はそうじゃない。
それが、裏を返せば、過去への論理づけも恣意的なもので
視野の狭い考えゆえの錯覚だということがわかるゆえん。
また、本書には書かれていませんが、
書いてきたように、この世界が偶然性に支配される世界で、
未来なんてわからなくても、
未来に対する予防やセキュリティは大事ですよね。
と、まあ、盛りだくさんで濃密な「偶然」科学の本なんです。
これをじっくり読むと、世の中の見え方がちょっと変わるでしょう。