読書。
『エンタテイメントの作り方』 貴志祐介
を読んだ。
ホラーやミステリーなどのジャンルで活躍するエンタテイメント作家・貴志祐介さん。彼によるエンタテイメント小説でプロを目指す人たちに向けた「書き方入門」です。
アイデア、プロット、キャラクター、文章作法、推敲、技巧、とひととおり全て網羅されています。小説作法を広く眺めながらも、要所を衝いて、端的に短くアドバイスをくれる体裁です。
そこは、何作か小説を書いたことがある方ならばピンとくる中身だと感じられるでしょう。さらりと軽い解説文の中に、抑えるべきポイントを教える箇所が一文だけ輝いている感じなのが多いのですけども、それで十分察することができるような上手い解説ですし、逆に無駄なく理解も進むと思います。僕はまさにそうで、「そうか、これはこういうことだよな」と瞬時に考えが改まるところが多々ありました。
しかし、僕はホラーもミステリーも最近は読まなくなりましたし、書くほうでもそのジャンルは書かないので、たとえば「トリックをこしらえて」との記述からは具体的なイメージは湧きません。トリック作りと似たような苦労を執筆時にしているとは思いますが、殺人事件のトリックをこしらえるなんてトリック周辺の知識もないですからまったくわからない。本書ではトリックのつくり方を詳細に教える部分は残念ながらありませんでした(というか、企業秘密レベルですよね、こういうのは)。トリック作りに難儀している人には肩すかしかもしれませんが、その他の小説作法に「なるほどな」と頷けるアドバイスが多かったので、やっぱり広義のエンタテイメント作品に共通する部分をまずわきまえたいアマチュアには強くお薦めできます。
あと、新人賞を獲りたい人は、応募する賞の過去受賞作を片っ端から読みなさい、とありました。大学受験で過去問をやるみたいなものだ、と。僕は応募する賞の過去作って読んだことがないですねえ。傾向と対策がない。短編の賞に応募するので、受賞作が書籍化されていないのが面倒くさくなる最大の理由なのですが、これじゃいけないかな……。大学受験のときも過去問やらずにきたような……。
最後に、個人的にもっとも教えられた部分の引用をして終わります。
___
また、新人賞の応募作品には、しばしば「自分はこういう社会状況を告発したいんだ」という問題意識をもって書かれた作品が見られるが、そういう作品ほど、キャラクターに“演説”させてしまっている。それが正論であるほど読み手としては興醒めで、エンタテイメントとしては失格であると言わざるを得ない。理想は、物語が内包している主題が、読み進めるうちにごく自然に頭のなかで形を取るような小説だろう。そしてそれはおそらく、書き手にとっても無意識のうちに書きたいと思っていたものの正体であるはずなのだ。(p78)
___
たとえば、ドストエフスキー作品には演説するようなセリフ回しが多く、そこを面白く感じてきた僕なので自分が書くときでもそうするときがありますが、エンタメではなかなかうまく効果を得られないみたいです。「理想は、物語が内包している主題が、読み進めるうちにごく自然に頭のなかで形を取るような小説だろう。」とありますが、これは数年前からできればこうしたいと思っていた形でもあり、次はきっとそこを強く意識して書くと思います。
今年はこういう小説執筆指南書関係の本をまだあと数冊読んでみるつもりです。ちょっとは経験があるから、勉強になりやすそうです。アマチュア作家の皆様、励んでまいりましょう。
『エンタテイメントの作り方』 貴志祐介
を読んだ。
ホラーやミステリーなどのジャンルで活躍するエンタテイメント作家・貴志祐介さん。彼によるエンタテイメント小説でプロを目指す人たちに向けた「書き方入門」です。
アイデア、プロット、キャラクター、文章作法、推敲、技巧、とひととおり全て網羅されています。小説作法を広く眺めながらも、要所を衝いて、端的に短くアドバイスをくれる体裁です。
そこは、何作か小説を書いたことがある方ならばピンとくる中身だと感じられるでしょう。さらりと軽い解説文の中に、抑えるべきポイントを教える箇所が一文だけ輝いている感じなのが多いのですけども、それで十分察することができるような上手い解説ですし、逆に無駄なく理解も進むと思います。僕はまさにそうで、「そうか、これはこういうことだよな」と瞬時に考えが改まるところが多々ありました。
しかし、僕はホラーもミステリーも最近は読まなくなりましたし、書くほうでもそのジャンルは書かないので、たとえば「トリックをこしらえて」との記述からは具体的なイメージは湧きません。トリック作りと似たような苦労を執筆時にしているとは思いますが、殺人事件のトリックをこしらえるなんてトリック周辺の知識もないですからまったくわからない。本書ではトリックのつくり方を詳細に教える部分は残念ながらありませんでした(というか、企業秘密レベルですよね、こういうのは)。トリック作りに難儀している人には肩すかしかもしれませんが、その他の小説作法に「なるほどな」と頷けるアドバイスが多かったので、やっぱり広義のエンタテイメント作品に共通する部分をまずわきまえたいアマチュアには強くお薦めできます。
あと、新人賞を獲りたい人は、応募する賞の過去受賞作を片っ端から読みなさい、とありました。大学受験で過去問をやるみたいなものだ、と。僕は応募する賞の過去作って読んだことがないですねえ。傾向と対策がない。短編の賞に応募するので、受賞作が書籍化されていないのが面倒くさくなる最大の理由なのですが、これじゃいけないかな……。大学受験のときも過去問やらずにきたような……。
最後に、個人的にもっとも教えられた部分の引用をして終わります。
___
また、新人賞の応募作品には、しばしば「自分はこういう社会状況を告発したいんだ」という問題意識をもって書かれた作品が見られるが、そういう作品ほど、キャラクターに“演説”させてしまっている。それが正論であるほど読み手としては興醒めで、エンタテイメントとしては失格であると言わざるを得ない。理想は、物語が内包している主題が、読み進めるうちにごく自然に頭のなかで形を取るような小説だろう。そしてそれはおそらく、書き手にとっても無意識のうちに書きたいと思っていたものの正体であるはずなのだ。(p78)
___
たとえば、ドストエフスキー作品には演説するようなセリフ回しが多く、そこを面白く感じてきた僕なので自分が書くときでもそうするときがありますが、エンタメではなかなかうまく効果を得られないみたいです。「理想は、物語が内包している主題が、読み進めるうちにごく自然に頭のなかで形を取るような小説だろう。」とありますが、これは数年前からできればこうしたいと思っていた形でもあり、次はきっとそこを強く意識して書くと思います。
今年はこういう小説執筆指南書関係の本をまだあと数冊読んでみるつもりです。ちょっとは経験があるから、勉強になりやすそうです。アマチュア作家の皆様、励んでまいりましょう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます