クラリネットの本物の音色を知ったのは、音楽の授業で聴いた
「軽騎兵序曲」でクラリネットの独奏があった。

きれいな音色だった。
自分のクラリネットではそんな音は出ず、ボーボー、プープー、キーキーというだけだった。
ある時気づいたのは、私が使っていたクラリネットのマウスピースは、
先端が少し欠けていた。そのため息をたくさん使って演奏する必要があった。
高校に進み、マウスピースが欠けていないクラリネットを使えるように
なった。よく鳴った。
入部したある時、1年上の先輩が使っているクラリネットのマウスピースが
外国製のものだと知った。
先輩の音はきれいな音だった。
ある時、フランス製のマウスピースが手に入ることが分かった。
中学校の後輩のお父さんがお茶の水の楽器店に勤めていたのだ。
当時3300円したと思う。ラーメンが40円くらいの時代。
貯金をはたいて手に入れた。セルマーのC*というもの。
吹いてみると、吹きやすく、音もそれなりにいい音だった。
低音はクラリネットらしいが、中音域から高音域は今ひとつ。
後輩が入部して来た。島田くんという。彼は実にきれいな音を
出していた。よく私に奏法について質問して来たが、彼の方が
ずっと良い音だったので、うまく答えられなかった。
彼の楽器はフランス製だった。しかもクラリネット本体は木製だった。
当時クラリネットは日本製で、しかもベークライトという樹脂で作られていた。
ベークライト製のクラリネットは当時16000円。
同じ会社の木製のクラリネットは倍の値段だった。
私は、木製のクラリネットなら良い音が出せるのかと思った。
つづく