白堊スポーツ - since 2004.09.18

母校・盛岡一高や岩手のスポーツ情報、読書感想、盛岡風景などをお伝えします。

昭和43年白堊野球物語16完-作:佐藤泰久(S42)

2016年09月05日 | 白堊野球物語
◆終章

興南の校歌演奏が終ると、一高応援団席から「凱歌だ、凱歌だー」という声が湧き起こる。興南には負けた、しかし敗戦歌は似合わない。
全国2485校のベスト8だ、凱歌しかないのだ。みな同じ気持ちだった。
高らかに甲子園球場に「杜 陵ぞ弥生の雲むらさきに~」と凱歌が響き渡る。
(※ずっと凱歌を歌ったと記憶していたのだが、当時の筆者の手記を読んでみると敗戦歌を歌ったとの記述があって愕然。筆者の記憶の混乱なのか? 事の真偽は当時参加した人たちの証言を待つしか無い。しかし、「物語」では凱歌を歌ったのだ、凱歌しかないのだと. .)

すべてが終った。昭和43年8月13日から20日までの長い甲子園での戦いだった。
山本邸に戻ると、10日間の疲れか出たのか綿のように眠った。

次の日、一人別れを告げて山本邸を後にし、大阪から「こだま」に乗り東京へと向かった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

筆者の夏休みは終わったが、大学の授業は始まらなかった。
学園は騒然としていた。激動する政治の季節が始まっていたのである。
「空に吸われし」(S34卒・角谷政弘著)の主人公・南部一高生は一高の卒業をもって「おおいなる準備」を終えたが、私はこのときをもって「おおいなる準備」を終えたのだった。

 「ボクらは住み心地のよい巣から飛び立った」(「空に吸われし」より)

憧れでもあり、魔物も棲む、甲子園。
その甲子園でまた暴れまくれ!

今年の一高野球部の健闘を心から願って終章とする。(完)