8月25日 NHK海外ネットワーク
国を持たない世界最大の民族クルド。
多くが住んでいるのはシリア・イラク・イラン・トルコと4つの国に分散し
人口は約3,000万人にのぼるとみられている。
独自の文化と言語を持つ民族だが自分たちの国は無い。
そのクルド人地域が中東の混乱をよそに発展を遂げて存在感を増している。
イラクからシリアを望む国境地帯にいまシリアから大勢のクルド人が押し寄せている。
シリア国内で続く内戦から逃れてきたのである。
この1週間に逃れてきたクルド人は4万人以上。
すぐさま支援の手が差し伸べられクルド難民たちはひとまず安どの表情を浮かべる。
そして新しい土地での暮らしに思いをはせる。
「ようやくたどり着いて安心した。
ここは平和です。」
「兄弟がここにいて働いている。
良い暮らしがしたい。」
クルド難民が押しかけたのはイラク北部「クルド人自治区」と呼ばれる同じ民俗が暮らす地域である。
自治区の治安はクルド人自らが守っている。
イラクの中央政府の治安部隊とは異なり女性兵士の姿も目立つ。
自治区の中心都市アルビルはイラクの他の地域で多発するテロとは無縁の世界である。
欧米や韓国のエネルギー企業などが相次いで進出し
ヨーロッパの主要都市との直行便も就航した。
人通りが絶えることがなくショッピングモールでは輸入ブランドが軒を連ねる。
(アルビルの市民)
「ここは中東一の大都会。」
「街の発展はみんなの誇り。」
クルド人には長い苦難の道のりがあった。
クルド人が国を持たない世界最大の民族となったのは第一次世界大戦後
当時のヨーロッパ列強の論理によってオスマン帝国が分割されたことが大きく影響している。
各国の統治の元で暮らすことになったクルド人は独自の言語の使用を禁じられるなど不当な扱いを受けた。
イラク北部でも1980年代に当時のフセイン政権の化学兵器による攻撃で5千人以上が殺害されている。
そんな状況を一変させたのが10年前のイラク戦争だった。
クルド人勢力はアメリカ軍に協力してフセイン政権を崩壊に追い込み今日の繁栄へと結びつけた。
そして今クルド人自治区は中央政府の頭越しに独自のエネルギー外交を展開し
さらなる発展を目指そうとしている。
クルド人自治区とトルコとの間を結ぶ幹線道路。
トルコに向かうタンクローリーが長い列を作り運んでいるのは自治区内で生産された石油。
自治政府はこの石油を切り札にして新たな取り組みに乗り出した。
クルド人自治区を貫く新しいパイプラインの工事は着々と進められ完成間近となっている。
自治政府はイラクの中央政府の反対を押し切り建設を進めてきた。
パイプラインは自治区に莫大な利益をもたらすだけでなく
この地域の政治力学を変えようとしている。
自治政府は自前のパイプラインを持っていないため
石油を輸出するためには中央政府のパイプラインに頼らざるを得なかった。
なんとか自由に石油を輸出・販売したいと自治政府は独自のパイプライン建設に踏み切った。
さらに中央政府の警告を無視して独自の油田開発にも力を入れている。
パイプラインは対立関係にあった隣国トルコとの関係改善にもつながっている。
自治政府の公務員フォアド・ロフォさんはかつてはトルコに警戒心を抱いていた。
トルコがクルド人武装組織の掃討を理由に自治区の越境攻撃を繰り返してきたからである。
(クルド人自治政府 公務員 フォアド・ロフォさん)
「トルコによる空爆で生活は苦しくなった。
全面戦争になるのではと心配した。」
しかし今や状況は様変わりした。
公共工事の現場監督を務めるロフォさんは工事現場で毎日のようにトルコの建設業者と打ち合わせをしている。
自治区内の工事はトルコ企業がほぼ独占する形で受注しているからである。
自治区の発展にトルコの協力はもはや欠かせない。
(トルコの建設会社技師)
「トルコ人とクルド人の間にわだかまりはない。
お互いを尊重しあう仲になれた。」
(クルド人自治政府 公務員 フォアド・ロフォさん)
「たくさんのトルコ企業が進出し最新の建設技術をもたらしてくれる。」
トルコとの対立を乗り越えたクルド人自治政府。
独自外交への自信を深めている。
(クルド人自治政府 ファレハ・ムスタファ外務長官)
「トルコと粘り強く対話し対話から友好関係へと導くことができた。
我々クルド人は抑圧された過去を乗り越えより良い将来を切り開いていく。」
クルド人にとって統一した独立国家クルディスタンを立ち上げることは民族の悲願とされている。
しかし一気に独立に進むのはリスクが高く政府は周辺国との衝突を避けようと苦心している。
たとえば自治政府はパイプラインの存在をおおっぴらにすることでこれ以上中央政府を刺激したくないと
インタビューにはなかなか応じてくれず
自治政府関係者のインタニューにしても収録前は独立に向けた動きを雄弁に語っても
収録が始まると各国と協力したいと述べ本音を封じ込み低姿勢を演じているかのようである。
クルド人の動きに各国の中央政府は神経をとがらせている。
新しいパイプラインの建設についてもイラクの中央政府は
クルド人は本来ならばイラク国民全体のものであるはずの石油をいわば横取りして勝手に外国に売ろうとしている
などとして非難を強めている。
油田の権益ををめぐる対立からイラクの中央政府は去年から今年にかけ
クルド人自治区との境界に部隊を派遣しクルド人自治区の舞台と一触即発の事態になりかけた。
トルコにして経済的な利害からいまのところクルドとの関係を改善させているが
クルドの独立国家がたん叙するようなことは絶対に容認せず
分離独立の動きが本格化すれば武力で封じ込める構えを崩していない。
中東最大の民族問題とされるクルド。
クルド人が台頭するにつれ周辺国は警戒を強め
新たな紛争の火種になる危険をはらんだ動きともなっている。
国を持たない世界最大の民族クルド。
多くが住んでいるのはシリア・イラク・イラン・トルコと4つの国に分散し
人口は約3,000万人にのぼるとみられている。
独自の文化と言語を持つ民族だが自分たちの国は無い。
そのクルド人地域が中東の混乱をよそに発展を遂げて存在感を増している。
イラクからシリアを望む国境地帯にいまシリアから大勢のクルド人が押し寄せている。
シリア国内で続く内戦から逃れてきたのである。
この1週間に逃れてきたクルド人は4万人以上。
すぐさま支援の手が差し伸べられクルド難民たちはひとまず安どの表情を浮かべる。
そして新しい土地での暮らしに思いをはせる。
「ようやくたどり着いて安心した。
ここは平和です。」
「兄弟がここにいて働いている。
良い暮らしがしたい。」
クルド難民が押しかけたのはイラク北部「クルド人自治区」と呼ばれる同じ民俗が暮らす地域である。
自治区の治安はクルド人自らが守っている。
イラクの中央政府の治安部隊とは異なり女性兵士の姿も目立つ。
自治区の中心都市アルビルはイラクの他の地域で多発するテロとは無縁の世界である。
欧米や韓国のエネルギー企業などが相次いで進出し
ヨーロッパの主要都市との直行便も就航した。
人通りが絶えることがなくショッピングモールでは輸入ブランドが軒を連ねる。
(アルビルの市民)
「ここは中東一の大都会。」
「街の発展はみんなの誇り。」
クルド人には長い苦難の道のりがあった。
クルド人が国を持たない世界最大の民族となったのは第一次世界大戦後
当時のヨーロッパ列強の論理によってオスマン帝国が分割されたことが大きく影響している。
各国の統治の元で暮らすことになったクルド人は独自の言語の使用を禁じられるなど不当な扱いを受けた。
イラク北部でも1980年代に当時のフセイン政権の化学兵器による攻撃で5千人以上が殺害されている。
そんな状況を一変させたのが10年前のイラク戦争だった。
クルド人勢力はアメリカ軍に協力してフセイン政権を崩壊に追い込み今日の繁栄へと結びつけた。
そして今クルド人自治区は中央政府の頭越しに独自のエネルギー外交を展開し
さらなる発展を目指そうとしている。
クルド人自治区とトルコとの間を結ぶ幹線道路。
トルコに向かうタンクローリーが長い列を作り運んでいるのは自治区内で生産された石油。
自治政府はこの石油を切り札にして新たな取り組みに乗り出した。
クルド人自治区を貫く新しいパイプラインの工事は着々と進められ完成間近となっている。
自治政府はイラクの中央政府の反対を押し切り建設を進めてきた。
パイプラインは自治区に莫大な利益をもたらすだけでなく
この地域の政治力学を変えようとしている。
自治政府は自前のパイプラインを持っていないため
石油を輸出するためには中央政府のパイプラインに頼らざるを得なかった。
なんとか自由に石油を輸出・販売したいと自治政府は独自のパイプライン建設に踏み切った。
さらに中央政府の警告を無視して独自の油田開発にも力を入れている。
パイプラインは対立関係にあった隣国トルコとの関係改善にもつながっている。
自治政府の公務員フォアド・ロフォさんはかつてはトルコに警戒心を抱いていた。
トルコがクルド人武装組織の掃討を理由に自治区の越境攻撃を繰り返してきたからである。
(クルド人自治政府 公務員 フォアド・ロフォさん)
「トルコによる空爆で生活は苦しくなった。
全面戦争になるのではと心配した。」
しかし今や状況は様変わりした。
公共工事の現場監督を務めるロフォさんは工事現場で毎日のようにトルコの建設業者と打ち合わせをしている。
自治区内の工事はトルコ企業がほぼ独占する形で受注しているからである。
自治区の発展にトルコの協力はもはや欠かせない。
(トルコの建設会社技師)
「トルコ人とクルド人の間にわだかまりはない。
お互いを尊重しあう仲になれた。」
(クルド人自治政府 公務員 フォアド・ロフォさん)
「たくさんのトルコ企業が進出し最新の建設技術をもたらしてくれる。」
トルコとの対立を乗り越えたクルド人自治政府。
独自外交への自信を深めている。
(クルド人自治政府 ファレハ・ムスタファ外務長官)
「トルコと粘り強く対話し対話から友好関係へと導くことができた。
我々クルド人は抑圧された過去を乗り越えより良い将来を切り開いていく。」
クルド人にとって統一した独立国家クルディスタンを立ち上げることは民族の悲願とされている。
しかし一気に独立に進むのはリスクが高く政府は周辺国との衝突を避けようと苦心している。
たとえば自治政府はパイプラインの存在をおおっぴらにすることでこれ以上中央政府を刺激したくないと
インタビューにはなかなか応じてくれず
自治政府関係者のインタニューにしても収録前は独立に向けた動きを雄弁に語っても
収録が始まると各国と協力したいと述べ本音を封じ込み低姿勢を演じているかのようである。
クルド人の動きに各国の中央政府は神経をとがらせている。
新しいパイプラインの建設についてもイラクの中央政府は
クルド人は本来ならばイラク国民全体のものであるはずの石油をいわば横取りして勝手に外国に売ろうとしている
などとして非難を強めている。
油田の権益ををめぐる対立からイラクの中央政府は去年から今年にかけ
クルド人自治区との境界に部隊を派遣しクルド人自治区の舞台と一触即発の事態になりかけた。
トルコにして経済的な利害からいまのところクルドとの関係を改善させているが
クルドの独立国家がたん叙するようなことは絶対に容認せず
分離独立の動きが本格化すれば武力で封じ込める構えを崩していない。
中東最大の民族問題とされるクルド。
クルド人が台頭するにつれ周辺国は警戒を強め
新たな紛争の火種になる危険をはらんだ動きともなっている。