9月12日 編集手帳
俗に「男は度胸、女は愛あい 嬌きょう」と言うが、
男も愛嬌があるに越したことはない。
「可愛気かわいげ」にまさる長所はない、
と述べたのは評論家の谷沢永一さんである。
〈才能も智恵も努力も業績も身持ちも忠誠も、
すべてを引っくるめたところで、
ただ可愛気があるという奴やつには叶かなわない〉
と(新潮社『人間通』より)。
大相撲の元大関、
エストニア出身の把瑠都関(28)がそうだろう。
勝ち相撲のあと、
カブトムシを捕まえた少年のような笑顔で花道を引き揚げてくる。
ひいきの力士が負かされても憎めない。
早くに父親を亡くし、
女手ひとつで育てられたと聞いて、
里親になったような心持ちで土俵を見守ってきたファンもいたはずである。
膝の古傷が完治せず、
十両陥落を潮しおに引退するという。
相手の頭越しにまわしを取り、
自分の後ろへうっちゃりのように投げ捨てる。
あの「波離間はりま投げ」を披露する怪力のお相撲さんはこの先、
そうは現れないだろう。
〈蒼天に髻もとどりとけし相撲かな〉
(原石鼎せきてい)。
さみしいが、
仕方がない。
これまで遠くから無事を祈ってきただろう故郷のご母堂に、
“笑顔千両”の息子さんをお返しする。
俗に「男は度胸、女は愛あい 嬌きょう」と言うが、
男も愛嬌があるに越したことはない。
「可愛気かわいげ」にまさる長所はない、
と述べたのは評論家の谷沢永一さんである。
〈才能も智恵も努力も業績も身持ちも忠誠も、
すべてを引っくるめたところで、
ただ可愛気があるという奴やつには叶かなわない〉
と(新潮社『人間通』より)。
大相撲の元大関、
エストニア出身の把瑠都関(28)がそうだろう。
勝ち相撲のあと、
カブトムシを捕まえた少年のような笑顔で花道を引き揚げてくる。
ひいきの力士が負かされても憎めない。
早くに父親を亡くし、
女手ひとつで育てられたと聞いて、
里親になったような心持ちで土俵を見守ってきたファンもいたはずである。
膝の古傷が完治せず、
十両陥落を潮しおに引退するという。
相手の頭越しにまわしを取り、
自分の後ろへうっちゃりのように投げ捨てる。
あの「波離間はりま投げ」を披露する怪力のお相撲さんはこの先、
そうは現れないだろう。
〈蒼天に髻もとどりとけし相撲かな〉
(原石鼎せきてい)。
さみしいが、
仕方がない。
これまで遠くから無事を祈ってきただろう故郷のご母堂に、
“笑顔千両”の息子さんをお返しする。