9月8日 BIZ+SUNDAY
洗濯機やテレビなどの家電製品から発電用の大型タービンまで幅広い製品を手掛ける大手電機メーカー東芝。
社員20万人 売上高5兆8000億円。
6月 新たに社長に就任したのが田中久雄氏(62)。
「東芝の強みは高い技術力 豊富な人材。
これを事業の拡大 利益体質の更なる強化に結び付けていく。」
欧米やアジアなど海外駐在が長かった田中氏。
その経験がこれからのグローバル経営に必要だと社長に起用された。
就任にあたり田中社長は社内改革の方針を自らまとめた。
会議の削減 これまでの仕事のやり方は踏襲しないなどその項目は100以上にのぼる。
(東芝 田中久雄社長)
「東芝の今までやってきたことをぼくの考え方やりかたというのは1回ゼロにしてみようと。
これを1つ1つやれば東芝は変わるしもっといい会社にできるんじゃないか。」
電機業界で勝ち組と言われる東芝だが売り上げはリーマンショック前には戻っていない。
8月7日 田中社長は就任後初めてとなる経営方針説明会に臨んだ。
「これまで数年間 売上高が減少傾向であったが
今年度を起点として成長への回帰をはかる。」
田中社長は2015年度の売上高を7兆円に引き上げる計画を発表。
主力事業のエネルギーと半導体などに加え
新たに医療分野を収益の柱に据える方針を打ち出した。
東芝の医療分野の売上高は年間約4000億円。
主力製品は体の内部を映すX線診断装置、超音波診断装置など画像診断を行う高度な医療機器である。
なかでもCTは国内1位 世界でも3位のシェア。
営業マンと診療放射線技師の資格を持つ社員が定期的に意思を訪ね最新の医療機器の使い方などを説明している。
医療機器を実際に使う医師たちの満足度を高め次の受注につなげる戦略である。
(医師)
「CTは極めてレベルの高い機械工学によってできているので
正直 医者だけではすべてを理解することは難しい。
新しい技術をまた教えてもらえると次の臨床に使える。」
今後 東芝では医療分野の売上高を2015年度には今の1,5倍の6000億円まで伸ばす計画である。
日本のものづくりの歴史に大きな足跡を残してきた東芝。
日本初の電気洗濯機(1930年)や電気冷蔵庫(1930年)を作ったのは東芝だった。
しかし今こうした家電部門の売り上げは全体の10%。
テレビやパソコンのデジタルプロダクツは23%。
いま売り上げの半分近くを占めるのはエネルギー事業などの社会インフラ部門である。
この分野で新たな成長が見込まれているのがエネルギーを効率的に利用する製品やシステムである。
東芝では横浜の新興住宅街のスマートハウスに実際に社員を住まわせて使い心地などを検証している。
次世代の省エネハウス スマートハウス。
ガスを使って発電する燃料電池。
太陽光発電や夜間の安い電力をためる蓄電池。
そしてさまざまなエネルギーを最適な組み合わせで使うシステム。
3年間にわたって実際に生活しながら改善点を探ることにしている。
(スマートホーム推進部 石井康雄課長代理)
「使ってみて初めて気づくことがある。
実際にこれとこれを組み合わせたらもっといい使い方ができるとか
暮らしの中から見つけていくことが必ず必要。」
東芝はいま横浜市と連携し1900世帯の節電効果を検証するプロジェクトを進めている。
東芝のコントロールセンターには各家庭の電力の使用状況が24時間刻々と送られてくる。
どうすれば地域全体で最も効率的なエネルギーの使い方ができるのか
システムの改良を重ね将来への街づくりに役立てたいと考えている。
(スマートコミュニティー事業統括部 羽深俊一主幹)
「日本国内 海外のエネルギーマネージメントが必要とされている地域に輸出する。
そういったことも含め事業を拡大していきたい。」
一方 成長戦略の課題となっているのがテレビなどのデジタルプロダクツ部門である。
昨年度の営業損益は244億円の赤字。
赤字は2期連続である。
田中社長は今年度後半には黒字化を実現したいとしている。
そのカギを握るのが東南アジアなどの新興国。
8月 東芝はシンガポールで新型のテレビを発表した。
ハイビジョンよりも画質が鮮やかな4Kテレビでサイズは最大84インチ 価格は日本円で176万円。
東南アジアで急速に増えている富裕層がターゲットである。
東芝では現地のスタッフを増やすなど営業力を強化する方針である。
東南アジアでの東芝のテレビのシェアは15%
来年度には20%まで伸ばすとしている。
(徳光重則執行役上席常務)
「付加価値がある商品を出してその価値を認めてもらう。
販売数をあきらめずにしっかりやっていきたい。」
巨大企業を率いていくうえで田中社長は20万人の社員とのコミュニケーションを大事にしている。
田中社長は常にノートパソコンとタブレット端末を持ち歩いている。
空いた時間は社員からのメールをすべてチェック。
深夜でもこまめにメールを返信する。
「どんなに忙しくて世界のどこにいても必ず読む。
ちょっとの時間でもあればメールを見て返信するのは簡単にできる。
それがコミュニケーションの最初だと思う。」
8月からはできるだけ多くの社員と交流するため新たに社内向けSNSを作った。
社長自ら日々感じたことを発信。
どんなことも努力を惜しまなかったヤクルトスワローズ宮本選手の引退表明に触れ
企業人もプロ意識が大事だと伝えた。
社員からはさまざまな反応が寄せられている。
「経営というのは“人を通じて事をなす”と言われる方もいるように
皆さんとコミュニケーションして東芝の向う方向 目指している事業
そういったものを作り上げていくのが非常に重要だと思っている。」
田中社長は会社を成長させるために事業戦略以外にも組織改革をあげている。
コンシューマ&ライフスタイル
電子デバイス
ヘルスケア
コミュニティ・ソリューション
電力・社会インフラ
東芝は長年 事業ごとの縦割り組織だった。
今回の改革ではさらに事業に横串を指す専門の部署を立ち上げる。
それぞれの事業が持つ技術などを把握しそれを融合させて新商品などの企画を行う。
その先駆けとなる製品が発表された。
医療機器のCTで撮影した画像を裸眼でも立体的に見ることができるディスプレイである。
まるで画像が飛び出し血管の重なり具合まで細かく見えるこの装置は手術のシュミレーションがしやすくなると言う。
東芝が開発した裸眼3Dテレビの技術とCTの技術を組み合わせて作った。
開発は栃木県にある医療機器の研究所で行われた。
きっかけとなったのはCTの技術者がたまたま自社の3D技術を目にしたことだった。
毎週のように技術者同士が議論を重ね双方の技術を融合させた。
裸眼でも見える3Dテレビの生産は販売不振で打ち切られているが
組織の枠を超えた連携で技術が息を吹き返した。
(3D開発担当)
「技術がなかなか世の中の役に立つことができない状態だったので
ようやく形になりそうでちゃんと社会の役に立てそうなのですごくよかった。」
(CT開発担当)
「東芝全体でものすごくいい技術の存在を実は知らないことが多いとわかったので
いろんな部署と共同で新開発ができたら素晴らしい。」
洗濯機やテレビなどの家電製品から発電用の大型タービンまで幅広い製品を手掛ける大手電機メーカー東芝。
社員20万人 売上高5兆8000億円。
6月 新たに社長に就任したのが田中久雄氏(62)。
「東芝の強みは高い技術力 豊富な人材。
これを事業の拡大 利益体質の更なる強化に結び付けていく。」
欧米やアジアなど海外駐在が長かった田中氏。
その経験がこれからのグローバル経営に必要だと社長に起用された。
就任にあたり田中社長は社内改革の方針を自らまとめた。
会議の削減 これまでの仕事のやり方は踏襲しないなどその項目は100以上にのぼる。
(東芝 田中久雄社長)
「東芝の今までやってきたことをぼくの考え方やりかたというのは1回ゼロにしてみようと。
これを1つ1つやれば東芝は変わるしもっといい会社にできるんじゃないか。」
電機業界で勝ち組と言われる東芝だが売り上げはリーマンショック前には戻っていない。
8月7日 田中社長は就任後初めてとなる経営方針説明会に臨んだ。
「これまで数年間 売上高が減少傾向であったが
今年度を起点として成長への回帰をはかる。」
田中社長は2015年度の売上高を7兆円に引き上げる計画を発表。
主力事業のエネルギーと半導体などに加え
新たに医療分野を収益の柱に据える方針を打ち出した。
東芝の医療分野の売上高は年間約4000億円。
主力製品は体の内部を映すX線診断装置、超音波診断装置など画像診断を行う高度な医療機器である。
なかでもCTは国内1位 世界でも3位のシェア。
営業マンと診療放射線技師の資格を持つ社員が定期的に意思を訪ね最新の医療機器の使い方などを説明している。
医療機器を実際に使う医師たちの満足度を高め次の受注につなげる戦略である。
(医師)
「CTは極めてレベルの高い機械工学によってできているので
正直 医者だけではすべてを理解することは難しい。
新しい技術をまた教えてもらえると次の臨床に使える。」
今後 東芝では医療分野の売上高を2015年度には今の1,5倍の6000億円まで伸ばす計画である。
日本のものづくりの歴史に大きな足跡を残してきた東芝。
日本初の電気洗濯機(1930年)や電気冷蔵庫(1930年)を作ったのは東芝だった。
しかし今こうした家電部門の売り上げは全体の10%。
テレビやパソコンのデジタルプロダクツは23%。
いま売り上げの半分近くを占めるのはエネルギー事業などの社会インフラ部門である。
この分野で新たな成長が見込まれているのがエネルギーを効率的に利用する製品やシステムである。
東芝では横浜の新興住宅街のスマートハウスに実際に社員を住まわせて使い心地などを検証している。
次世代の省エネハウス スマートハウス。
ガスを使って発電する燃料電池。
太陽光発電や夜間の安い電力をためる蓄電池。
そしてさまざまなエネルギーを最適な組み合わせで使うシステム。
3年間にわたって実際に生活しながら改善点を探ることにしている。
(スマートホーム推進部 石井康雄課長代理)
「使ってみて初めて気づくことがある。
実際にこれとこれを組み合わせたらもっといい使い方ができるとか
暮らしの中から見つけていくことが必ず必要。」
東芝はいま横浜市と連携し1900世帯の節電効果を検証するプロジェクトを進めている。
東芝のコントロールセンターには各家庭の電力の使用状況が24時間刻々と送られてくる。
どうすれば地域全体で最も効率的なエネルギーの使い方ができるのか
システムの改良を重ね将来への街づくりに役立てたいと考えている。
(スマートコミュニティー事業統括部 羽深俊一主幹)
「日本国内 海外のエネルギーマネージメントが必要とされている地域に輸出する。
そういったことも含め事業を拡大していきたい。」
一方 成長戦略の課題となっているのがテレビなどのデジタルプロダクツ部門である。
昨年度の営業損益は244億円の赤字。
赤字は2期連続である。
田中社長は今年度後半には黒字化を実現したいとしている。
そのカギを握るのが東南アジアなどの新興国。
8月 東芝はシンガポールで新型のテレビを発表した。
ハイビジョンよりも画質が鮮やかな4Kテレビでサイズは最大84インチ 価格は日本円で176万円。
東南アジアで急速に増えている富裕層がターゲットである。
東芝では現地のスタッフを増やすなど営業力を強化する方針である。
東南アジアでの東芝のテレビのシェアは15%
来年度には20%まで伸ばすとしている。
(徳光重則執行役上席常務)
「付加価値がある商品を出してその価値を認めてもらう。
販売数をあきらめずにしっかりやっていきたい。」
巨大企業を率いていくうえで田中社長は20万人の社員とのコミュニケーションを大事にしている。
田中社長は常にノートパソコンとタブレット端末を持ち歩いている。
空いた時間は社員からのメールをすべてチェック。
深夜でもこまめにメールを返信する。
「どんなに忙しくて世界のどこにいても必ず読む。
ちょっとの時間でもあればメールを見て返信するのは簡単にできる。
それがコミュニケーションの最初だと思う。」
8月からはできるだけ多くの社員と交流するため新たに社内向けSNSを作った。
社長自ら日々感じたことを発信。
どんなことも努力を惜しまなかったヤクルトスワローズ宮本選手の引退表明に触れ
企業人もプロ意識が大事だと伝えた。
社員からはさまざまな反応が寄せられている。
「経営というのは“人を通じて事をなす”と言われる方もいるように
皆さんとコミュニケーションして東芝の向う方向 目指している事業
そういったものを作り上げていくのが非常に重要だと思っている。」
田中社長は会社を成長させるために事業戦略以外にも組織改革をあげている。
コンシューマ&ライフスタイル
電子デバイス
ヘルスケア
コミュニティ・ソリューション
電力・社会インフラ
東芝は長年 事業ごとの縦割り組織だった。
今回の改革ではさらに事業に横串を指す専門の部署を立ち上げる。
それぞれの事業が持つ技術などを把握しそれを融合させて新商品などの企画を行う。
その先駆けとなる製品が発表された。
医療機器のCTで撮影した画像を裸眼でも立体的に見ることができるディスプレイである。
まるで画像が飛び出し血管の重なり具合まで細かく見えるこの装置は手術のシュミレーションがしやすくなると言う。
東芝が開発した裸眼3Dテレビの技術とCTの技術を組み合わせて作った。
開発は栃木県にある医療機器の研究所で行われた。
きっかけとなったのはCTの技術者がたまたま自社の3D技術を目にしたことだった。
毎週のように技術者同士が議論を重ね双方の技術を融合させた。
裸眼でも見える3Dテレビの生産は販売不振で打ち切られているが
組織の枠を超えた連携で技術が息を吹き返した。
(3D開発担当)
「技術がなかなか世の中の役に立つことができない状態だったので
ようやく形になりそうでちゃんと社会の役に立てそうなのですごくよかった。」
(CT開発担当)
「東芝全体でものすごくいい技術の存在を実は知らないことが多いとわかったので
いろんな部署と共同で新開発ができたら素晴らしい。」