1月8日 編集手帳
江戸の雑俳にある。
〈飯はよいものと気のつく松の内〉(『武玉川(むたまがわ)』)。
元日から餅ずくめで重たい“餅腹(もちばら)” になり、
「普段の飯は良いものだな」と気づいたらしい。
「松の内」は松飾りのある間、
元日から7日までを指す。
食生活が様変わりして餅腹も過去の言葉になったが、
年末からの食べ過ぎと飲み過ぎで腹の辺が重たく感じられる方は多かろう。
松飾りの取れるきょう8日は薬師如来の縁日、
「初薬師」の日でもある。
衆生の病苦を救ってくれるというその仏に、
疲れた胃腸を含めて健康を祈願する善男善女でにぎわうに違いない。
きな臭い中東情勢に、
隣国の愚かにして乱暴な振る舞いと、
新聞をひらけば頭痛と悪寒を覚えるニュースが紙面を埋めている。
わが身と家族の身体のみならず、
地球の病苦も救っていただきたいと願う年の初めである。
「初昔(はつむかし)」という言葉がある。
松の内から見た去年を意味する。
ついこのあいだ送ったばかりの年を“昔”呼ばわりは大仰だと、
以前は思っていた。
10大ニュース級の出来事つづきに、
除夜の鐘を聴いたのが遠い日に感じられてならない。
なるほど、
初昔である。