12月18日 キャッチ!
太平洋戦争中 アメリカでは約12万人の日系人が土地や財産を没収され
強制収容所に送られた。
多くがアメリカで生まれ育った人たちだったが
日系人だということだけで敵性外国人とみなされ
収容所での過酷な生活を強いられたのである。
幼いころ収容所で暮らした日系アメリカ人の俳優が体験をもとにミュージカルを企画し
ブロードウェイで上演されて話題を呼んでいる。
11月 公演が始まった「アリージャンス」。
連日多くの観客でにぎわている。
舞台は戦争の足音が忍び寄る1940年代のアメリカ。
農園を営む日系人の家族が主人公である。
日本の伝統を大切にしつつアメリカでの生活を築き上げていた。
日本からアメリカにわたってきた日系1世の役を演じるジョージ・タケイさん。
このミュージカルを企画した。
1960年代 人気シリーズ「スタートレック」に出演し一躍有名になったタケイさん。
アメリカでもっともよく知られ尊敬を集める日系人の1人である。
自分自身の経験を反映したミュージカルの上演は生涯の念願だったと言う。
(俳優 ジョージ・タケイさん)
「音楽は頭だけでなく心にも響きます。
感情に訴えるのです。」
太平洋戦争が始まり家族の運命は大きく変わる。
「カイト・キムラだな。
日本に情報を流しているな。」
敵性外国人とみなされた一家はやがて強制収容所へ送られる。
強制収容所に送られるときタケイさんは5歳だった。
その日のことを今でも鮮明に覚えているという。
(俳優 ジョージ・タケイさん)
「あの日 銃を持った2人の兵士が家にやってきました。
父と私と弟はスーツケースを持って家の外に出ました。
そして母が出てくるのを待っていました。
母は幼い妹を片手で抱いてもう一方の手でバッグを持って出てきました。
涙を流していました。
あの瞬間は恐怖そのものでした。
今でも忘れられません。」
強制収容所に連れてこられ打ちひしがれる人々を支えたのはひとつの言葉だった。
「まるで動物みたいな扱いだ。」
「イサム がまんだ。」
「がまんって何?」
「耐えることよ。」
「顔を上げ続けることだ。」
“がまん”には過酷な境遇の中でも尊厳を持って生きる日系人たちの思いが込められている。
(俳優 ジョージ・タケイさん)
「“がまん”という気持ちがあったからでしょう。
収容された恐怖を乗り越えることが出来ました。
でも“がまん”にはそれ以上の意味があります。
“がまん”は耐え忍ぶ能力を意味するだけでなく
美しさや喜びを見出す強さを意味するのです。」
パリの同時テロをきっかけに
アメリカで特定の民族や宗教に対する偏見や差別が再び生まれつつあるとタケイさんは感じている。
タケイさんはアメリカが同じ過ちを犯さないよう
ミュージカルを見てほしいという動画をインターネットに投稿した。
1週間余で9百万回以上再生され大きな反響を呼んでいる。
さらに大学などを訪問し
若い世代に日系人の歴史について話し合う活動を続けている。
(学生)
「同じような問題は今も起きています。
過去から学び
未来に向けて考える必要があると思います。」
タケイさんは今の時代こそ1人1人の国民が過去の歴史を知ることが重要だと考えている。
(俳優 ジョージ・タケイさん)
「父とはよく議論しましたが
そこで私はアメリカの民主主義について多くを学びました。
彼は私に言いました。
『アメリカの民主主義は国民が作り出している。
そしてこの国の人々は偉大なことを成し遂げる可能性を秘めている。
しかし一方で間違いを犯すこともあるのが人間だ。
民主主義の政治はわれわれ国民次第なんだ。』と。
若い世代に箱の国が犯した過ちを知ると同時に
民主主義の強さも知ってほしいのです。
民主主義を作っていくのは彼らだからです。」
出身国や宗教で相手を差別する過ちがあってはならない。
その思いを胸にタケイさんは今日も舞台に立つ。