12月22日
12月に開かれたCOP21。
これまで積極的に温室効果ガス削減を推し進めてきたイギリスは
2050年までに1990年に比べて排出量の80%を削減する野心的な目標を設定。
排出量の多い石炭火力発電所のすべてを10年後までに閉鎖するとしている首相は
会議のスピーチで目標達成のための意欲を示した。
(イギリス キャメロン首相)
「この会議で何が必要なのか。
それは2℃目標を堅持することだ。」
COP21では温室効果ガス削減への強い意志を示したイギリス。
しかし国内の温暖化対策の現状を見ると
目標達成のハードルは極めて高いのが実情である。
イギリス北部 スコットランドにあるエディンバラ大学。
二酸化炭素を地下に埋めるCCS(二酸化炭素回収貯留)と呼ばれる最新の技術を10年前から研究している。
国連も温暖化対策の重要な柱と位置付けている方法である。
この技術は
まず発電所から排出されるガスから二酸化炭素を分離して回収。
それをパイプラインを使って1000mを超える地底に封じ込めるのである。
この技術は石炭火力だけでなくガス火力でも活用が考えられている。
イギリス政府はこれまで火力発電所に対してCCSを導入するよう促し
研究を支援する方針を示してきた。
しかしキャメロン政権は財政緊縮策を進める必要があるとして
1,800億円超の支援中止を決めたのである。
CCSの技術を活用用した発電で15年後には15%の電力を賄う計画だっただけに
支援中止は温暖化対策を大きく後退させると批判も出ている。
(エディンバラ大学 ヘーゼルディーン教授)
「支援中止には驚きました。
政府は節約したいだけです。
CCSの技術の知識を広げることは困難になるでしょう。」
財政緊縮策の影響は再生可能エネルギーにも及んでいる。
イギリス政府は2015年6月に陸上の風力発電の補助を1年前倒しで終了することを決定。
さらにCOP21の閉幕のわずか5日後に
太陽光発電への補助も65%削減すると発表し
最大1,000億円の際す津を削減すると発表したのである。
再生可能エネルギーの予算削減の理由になっているのはその割高な発電コスト。
国民生活を圧迫する電気代高騰を招いているとも言われている。
しかしこれまで再生可能エネルギーの普及を推し進めてきた政府の方針転換に
業界団体は懸念を強めている。
(再生可能エネルギー関連会社 ゴードン・エッジさん)
「再生可能エネルギーの普及なしに排出量削減はできません。」
CCSへの研究支援の停止。
さらに再生可能エネルギーへの支援縮小を進めるキャメロン政権が
代替エネルギーとして期待している供給源のひとつが原子力である。
現在 稼働している9か所に加え
国内8か所に新しい発電所の建設を計画中。
2030年には発電量の40%を原子力で賄う計画である。
10月には中国の習近平国家主席が訪英し
中国からの2兆円にも及ぶ巨額な融資受け入れが決まった。
しかし減速する中国経済のあおりを受けて
遅れ気味な計画がさらに遅れる可能性も出てきている。
当初 2023年とされていた運転開始は
石炭火力発電所がすべて閉鎖される2025年までずれ込み
このままでは電力需給がひっ迫するという懸念も出ている。
(労働組合 P・ホワイトワースト)
「政府の方針は電力供給に打撃を与えるでしょう。
方針変更がなければこの国は大停電に襲われます。」