7月10日 NHKBS1「国際報道2019」
これからバカンスの季節を迎えるヨーロッパでは
いま飛行機ではなく鉄道で旅行しようという動きが広がっている。
背景にあるのが
法律ばかりを重視して飛行機を使うのはやめようという
スウェーデン語で「flygskam=飛び恥」と呼ばれる運動の拡大である。
EUヨーロッパ連合の試算では
温室効果ガスの排出量が同じ条件の下では航空機の移動は鉄道に比べて20倍も多いとされている。
ヨーロッパでは
格安の運賃で近年航空路線を急速に拡大させたLCCが
環境に悪影響をもたらしているという指摘も出ていて
運動を活発化させているという。
「国内では飛行機には乗りません。
この夏はそれでも行けるところにしたんです。」
「環境への影響を抑えることはとても大事なことだと思います。」
この「飛び恥」運動が盛んな国の1つがスウェーデンである。
都市環境プランナーのエルフォーシュさん。
5年前
“休暇には鉄道を使おう”と呼びかけるため
フェイスブックで情報交換のためのページを起ち上げた。
(鉄道旅行サイト運営 エルフォーシュさん)
「彼女は3~4週間の旅行にお金がどのくらいかかるのか知りたいみたいね。」
ヨーロッパでは国ごとに鉄道を運営する会社が違い
チケットの予約や購入の手続きが煩雑である。
サイトではそうした問題を解決するための具体的なノウハウが活発にやりとりされている。
「コペンハーゲンからプラハまで列車で行った人はいる?」
「ドイツ北部のキールから直通があります。」
「ありがとう。」
続々と投稿される旅行の体験もページの大きな魅力となっている。
「多くの人がベルニナ急行について書いているのを知っていますが
先週 我々も行ったのでシェアしなければなりません。
この夏旅行するみなさんはこちらをお勧めします!」
「夢のようね ワオ!」
鉄道の旅が一気に注目されるようになったのは
去年から1人の少女が行ってきたある戦いがきっかけだった。
グレタ・トゥーンベリさんは
去年の夏から毎週金曜に議会前で温暖化対策を訴え続けたところ
若者のあいだに活動が広がり
一躍世界に注目される存在になった。
さそのトゥーンベリさんのこだわりが
飛行機を使わないことだった。
その後 “鉄道を使おう”と呼びかけるフェイスブック上のメンバーは去年の3千人ほどから急増。
10万人に届く勢いである。
こうした動きに触発され
フランスでは
鉄道で2週間余かけて日本を目指そうという若者も出てきている。
(フランスの若者)
「飛行機では見られないものが見られるはずです。」
ヨーロッパ全土に広がる運動は鉄道会社にとって追い風となっている。
スウェーデン国鉄では今年初めの3か月間の利用者が
去年に比べて8%以上増えた。
航空機の国内線の利用者が5%減ったのとは対照的である。
(スウェーデン国鉄 広報部長)
「利用者が増えるのはありがたい。
需要に応えるのは我々にとっても挑戦です。」
この運動は環境問題に積極的に取り組むスウェーデン政府も後押ししている。
鉄道による移動がより便利になるように
ヨーロッパ各国に働きかけていく考えである。
(スウェーデン イザベラ・ロビン環境相)
「国民が気候に配慮した生活を送りやすくすることが政府の優先事項です。
例えば
ストックホルムとベルリンやパリを結ぶ夜行列車の運行のその1つです。
ほかのヨーロッパの国々との間で
どう解決できるか模索しています。」