7月23日 NHKBS1「国際報道2019」
ⅠOC国際オリンピック委員会がまとめたオリンピック憲章は
スポーツを通して差別のない社会の実現を目指すことを掲げている。
その一環として5年前には
同性愛者への差別を許さない方針も打ち出した。
日本の大手広告代理店が去年行った調査では
日本人の8,1%
およそ11人に1人がLGBTだという結果が出ている。
こうしたなか東京都は去年
LGBTの人たちを差別を認めない法令を制定するなど
国内でもこのオリンピック憲章の精神を反映させた社会を造ろうという機運が高まっている。
ただ日本全体としてはそうした人たちへの理解は必ずしも進んではいない。
2010年に国際的な調査機関が行った
同性愛をどの程度受け入れるかという寛容度についての調査では
日本は10点中 5,14。
一方 8,18とトップレベルだったのがスウェーデンである。
町中に掲げられたレインボーフラッグ。
LGBTの人たちを象徴するもので
スウェーデンでは全国で見られる。
図書館の一番目立つところにはLGBTの書籍コーナー。
LGBTの人たちを主人公にした小説など200冊が置かれている。
(来館者)
「スウェーデンでは多様な生き方を受け入れようとしています。
そのために特別なコーナーを作り
皆が見つけやすいのはとてもいい事です。」
企業でも取り組みが進んでいる。
世界中に370店舗を構え日本にも展開する大手家具メーカー IKEA。
LGBTの人たちも積極的に採用。
個人を尊重する社風を前面に打ち出している。
同性愛者であることを社内で隠す必要はない。
(レズビアンの社員)
「あしたはハーフマラソンの大会に出ます。
今夜中に移動するつもり。」
「あなたの“妻”も一緒に練習したの?」
「いいえ
でも彼女は応援してくれるわ。」
(ゲイの社員)
「僕の“夫”はテレビを見ていたよ。」
従業員の制服は男女とも一緒。
このオフィスにあるおよそ70個のトイレはすべて個室である。
性別を問わずだれでも使うことができる。
差別や偏見のない環境のなかでLGBTの社員のその能力を最大限に発揮できるという。
(ゲイの社員 )
「私たちは誰もが互いの違いを認め合っています。
それぞれの多様性や個性を生かすことで会社に貢献できるのです。」
こうした取り組みは国連からも“先進的だ”と評価され
世界中から多様な人材が集まっている。
(イケア ダイバーシティ戦略担当責任者)
「多様な価値観を持つ人が働くことを望むので
有能な人材を採用できます。
私たちが人材を求め
人材が私たちを求めるのです。
あらゆる人のライフスタイルを尊重し
業績も上げています。」
しかしここに至るまでには苦難の歴史があった。
スウェーデンでは1980年代からLGBTの権利拡大を求める運動が盛んになった。
一方で保守的な人たちの反発は強く
運動の支持者が襲われる事件も起きた。
転機となったのは2000年代。
国が同性愛者への差別を禁止するなど法律を次々と整備したことだった。
経済が低迷し高齢化が進むなか
国として成長していくには多様な人材の活躍が欠かせないと考えたのである。
理解を進めるためまず力を入れたのが幼少期からの教育である。
LGBTに対する偏見が生まれないよう
国がカリキュラムを作っている。
「こちらが図書室です。
これは“ダディとパパとわたし”です。」
この幼稚園で読み聞かせをしているのは男性カップルが子どもを育てる絵本である。
(ニコライゴーデン幼稚園 延長)
「幼い子どもはこの本に何の疑問も持たない。
疑問を持つのは大人だけ。
“すべての人には尊厳があり平等だ”と幼い頃から教える方が簡単です。」
理解が進んでいなかった世代への対応も始まっている。
去年からスタッフ全員が専門の研修を受け
LGBTの人たちを受け入れる態勢を整えている老人ホーム。
入所者1人1人に今後LGBTの人もホームに入ることを丁寧に説明。
理解を示す人が増えている。
(老人ホーム 施設長)
「LGBTの人も含む全ての人が歓迎されていると思えることが重要です。」
国を挙げてLGBTの人たちへの差別解消に取り組んできたスウェーデン。
互いを認め合うことで暮らしやすくなったと実感する国民が増えたという。
(リンドハーゲン男女平等担当相)
「国のルールや価値観は必ず変えることができます。
そうすることで社会はよりよくより強くなるのです。」