7月18日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
AIの研究開発が盛んなアメリカ西海岸のサンフランシスコ。
6月にAI兵器の是非をテーマにしたシンポジウムが開かれた。
AI兵器に反対する活動家 マータ・コスミナさんは
世界50か国で展開する国際キャンペーンのメンバーの1人である。
(AI兵器反対派 コスミナさん)
「AI兵器は私たち人類に大きな害をもたらす新兵器になりかねません。」
コスミナさんら反対派が懸念するのは
AIを搭載した機械が人間の手から離れて自らの意志で人間を殺傷する
「自立型致死兵器」である。
そうした兵器の脅威を示すために作られた動画では
小型の爆弾を大量に積んだ自立型致死兵器が無差別に人を攻撃するさまを描いている。
(AI兵器反対派 コスミナさん)
「AIが画像やデータを蓄積し進化していくなかで
次第に人間の統制から離れ
最終的に機械が自ら判断する。
自立型兵器になってしまうのが恐ろしいのです。」
コスミナさんら反対派の訴えとは裏腹に
アメリカ政府はIT企業と連携してAI兵器の研究開発を強力に進めている。
そのゴールはAIを搭載したドローンの戦場でに運用である。
政府の方針に賛同しているIT企業 アンドリル社。
この企業は国境の密入国を監視するAIを搭載したカメラやドローンをアメリカ政府などに納入している。
アンドリル社幹部 ブローズさん。
いまIT業界ではITの軍事利用に協力する企業が増えているという。
(アンドリル社幹部 ブローズさん)
「政府はAI技術に取り組む優秀なエンジニアを防衛産業に戻そうと
高い報酬を払うシステムを作り始めています。」
さらにIT企業が政府に協力するようになってきた背景には
報酬だけでなく
中国とロシアの存在があるという。
ブローズ氏が今年5月 アメリカの有力外交誌「フォーリンアフェアーズ」に寄稿した論文。
そこで
中国とロシアはAI兵器の倫理的側面を考慮せずに開発を進めていると指摘し
アメリカの国を挙げてAI兵器の開発に取り組むべきだと主張している。
(アンドリル社幹部 ブローズさん)
「アメリカ政府の最大の優先事項は
大国(中国やロシア)への抑止力を持つことです。
反対派はこうした地政学や技術の現実からかけ離れています。」
一方のコスミナさんはいま最も力を入れているのがITエンジニアへの働きかけである。
座談会の企画やIT企業との面談などを通じてAI兵器の脅威を訴えている。
(IT企業関係者)
「“殺人ロボット”都の表現は過剰な印象ですが
AIには心配すべき点がたくさんあります。」
大手IT企業ではAIの軍事利用の研究をやめるところも出ている。
グーグルは大勢の従業員の抗議を受けて
去年6月 ピチャイCEOが政府への協力を中止すると発表した。
AI兵器の開発を進めるべきか
やめるべきか
アメリカのIT企業の立場が分かれている。
(AI兵器反対派 コスミナさん)
「私たちの主張を支持しAI兵器の脅威を理解してくれるIT企業は多いですが
残念なことにビジネスを重視する経営者もいます。
世界中のさまざまなグループ・団体と連携し
この問題を理解してもらい
開発推進派への圧力になってもらうのです。
AI兵器が運用されるようになってからでは手遅れだからです。
パンドラの箱を開けることになるのです。」