日暮しの種 

経済やら芸能やらスポーツやら
お勉強いたします

記録映画「東京オリンピック」

2019-08-21 07:00:00 | 編集手帳

7月27日 読売新聞「編集手帳」

 

 記録映画「東京オリンピック」(市川崑監督)の試写会が済んだあと、
河野一郎・五輪担当相が酷評した騒ぎはよく知られている。
「こんな記録映画があるか。
 作り直せ」

もちろん、
そうはならなかった。
むしろ時を追うごとに価値は高まると言えるだろう。
日本人メダリストの感動シーンが満載ですよ――
そんな宣伝文句を想像した人々の感覚を超え、
市川監督が撮ったのは、
変わりゆく日本の姿であったことは工事現場のシーンからうかがえる。

クレーンにつり下げられた鉄球が画面いっぱいに現れ、
古い建物を崩していく場面である。

鉄球の破壊力が、
日本の高度成長の一つの象徴だったことは言うまでもない。
ただし、
そうしたことは後に振り返って分かることで、
同時代に生きていると往々意識できないものかもしれない。
2020年東京五輪の開幕まで、
残り1年を切った。
公式記録映画も、
もちろん制作される。
監督は「
殯もがりの森」(仏カンヌ国際映画祭グランプリ受賞)などの作品で知られる河瀬直美さんである。

河瀬さんは何を見つけ出すだろう。
どんな時代に呼吸しているか、
教えてもらいたい。


コメント