7月18日 読売新聞編集手帳
ずぼらでちょっと下品な中年刑事が活躍する英国の小説、
フロスト警部シリーズ(創元推理文庫)はミステリーファンに人気が高い。
その一つ『冬のフロスト』に、
夜の酒場で暴れた大勢のフーリガンがバス1台に詰め込まれ、
警察署に連行される場面がある。
「こいつらサッカーしか頭にない、
血の気の多いどあほうどもだよ」(巡査部長)。
春歌を叫び、
服は脱ぎ出すわ、
吐き散らかすわで署内は大混乱となる。
フーリガン対策に努めたサッカーW杯日韓大会を思い出す。
会場そばの繁華街は早くに店を閉め、
新幹線の酒類販売も中止に…。
同じ英国生まれの競技でも、
ラグビーは荒くれ者集団の心配はいらないらしい。
9月に開幕するW杯に合わせ、
横浜中華街では少なくとも50店が深夜0時頃までの特別営業を行うという。
横浜市も協力し、
決勝、
準決勝などを予定する日産スタジアムから、
中華街へのシャトルバスを運行する。
海外からの観戦客を運ぶバスに、
道行く人が手を振る光景が浮かんでくる。
開幕まで約2か月に迫った。
世界が熱狂する舞台といっても、
そこへの世の歩みはどこか和やかである。