7月18日 NHK「おはよう日本」
日本語が話せない外国人の取り調べや刑事裁判では
警察や裁判所が“司法通訳人”と呼ばれる人たちに通訳を依頼する。
ところがいま来日する外国人の増加にともなって
必要な司法通訳人が十分確保できない事態が起きている。
大阪市内で司法通訳人を育成する塾を開いている清水真さん。
司法通訳人は警察の取り調べや刑事裁判などで立ち会う通訳で
清水さんは自らの経験を生かして
全国でも珍しい専門の授業を行なっている。
実は清水さんは元兵庫県警の警察官である。
中国語を使える捜査員として30年以上にわたって外国人犯罪の捜査を担当。
そのなかで誤訳の危険性を感じてきた。
あるケースでは妻を殺害したとして逮捕された中国人が
“殺すつもりはなかった”と供述していたのに
通訳が“殺して黙らせようと思った”と通訳していたという。
(清水真さん)
「外国人の話した内容が誤訳されて
違う方向
思ってないような話になってしまうのは大問題。
そういうことが全国で散見されていることを考えると
司法通訳のトレーニングは続けていかないといけないし
能力を上げることによって
冤罪をなくし
誤訳をなくし
真相の究明をしたい。」
いま司法通訳人の必要性はますます高まっている。
来日する外国人の増加にともない通訳が必要な裁判が急増しているのである。
去年 裁判で通訳を必要とした被告の数は3,699人と
この5年間で1,6倍に増えている。
清水さんのもとには司法通訳にチャレンジしてみたいという外国人や一般の通訳が集まっている。
授業では実践的なトレーニングを心掛けている。
この日は中国語とタガログ語の通訳人約40人が参加した。
肩を軽く叩かれたことに逆上した男が相手の顔を殴ってけがをさせたという事件を想定した。
(警察官役)
「どの程度叩かれた?」
(司法通訳人役)
「どの程度殴られた?」
(容疑者役)
「強く殴ってきました。」
清水さんはこの事件では“叩く”と“殴る”の微妙な違いを伝えられるかどうかがポイントになると指摘した。
(清水さん)
「通訳は言葉の違い
“軽く叩いた”“殴った”というのを同じように言わない工夫をしてほしい。」
(参加者)
「日本語のニュアンス
どういうふうに訳したらいいか難しい。
誤訳にならないようにもっと勉強します。」
育成塾を開いてから4年。
これまでに巣立った司法通訳人は50人近くにのぼる。
外国人が公正な捜査や裁判を受けられるようにしたい。
清水さんは取り組み続けている。
(清水誠さん)
「外国人犯罪が増えてくれば
裁判官や検疫・検察と
架け橋を結ぶ存在が必要になっくる。
外国人だからといって操作が進まないということではけない。
心を訳す
本人がしゃべっている
話者の心を訳してほしい。」
司法通訳人には資格は必要ないが
高度な技術が求められるため時給は6千円以上と高額になっている。
また仕事が不定期なうえ裁判などでは準備に時間がかかり
割に合わないとして
警察や裁判所に登録する人は減っているということで
育成が課題になっている。