8月5日 読売新聞「編集手帳」
旅人が穴に落ちた虎を助ける。
だが、
腹をすかせた虎は命の恩人に襲いかかる。
虎の行いが許されるのか。
森の中で裁判が始まった。
『うさぎのさいばん』(少年写真新聞社)は韓国に伝わる民話だそうだ。
最初に裁判官になった松の木が言う。
「人間は木を切り倒す。
だから人間が虎に食われるのは正しい」。
牛も同調する。
牛をこき使う人間は食われて当然だ、と。
恩知らずな虎の行いが論点になっていたはずが、
いつの間にか人間の所業にすり替わる。
それが昔話らしいおもしろさを醸し出すのだろう。
それにしても、
現実に起きている論点のすり替えには気まずさが残る。
日本政府が輸出手続きを優遇する対象国から韓国を除外したことに文在寅政権が反発している。
日本は貿易管理が甘いためだと説明するが、
韓国側は元徴用工問題への報復だと決めつけ、
軍事情報に関わる協定の破棄をちらつかせる。
ここまで事態を悪化させておいて、
さらに複雑化させるつもりなのか。
民話では最後にうさぎが知恵を出す。
ことの経緯を調べようと誘い、
虎を元の穴に戻すのだ。
日韓ではまだ良い知恵は出そうにない。