季節は変わるが、だいたい毎年行っている鵜殿。
鵜殿と言えばヨシ原。良質のヨシが採れ、雅楽のシチリキの蘆舌(ろぜつ)には、昔から鵜殿のヨシが使われているらしい。
ヨシなんて自然任せで採れるように思うが、人の管理、人の手がかかっているのだ。
冬のヨシ焼きもそうだ。
そして、ヨシの生育には水が欠かせない。
1971年に治水のための河川改修工事が行われると、水位が低下し、ヨシ原に冠水しなくなり、ヨシ原が減少。
その後、上流部に揚水ポンプを設置してヨシ原に水を流したり、切り下げ工事といって、ヨシの生えている地面を切り下げて、水が来るようにしたり・・いろいろ対策が行われてきた。
水を流す時期も大切なようで、今年はそれがうまくいかなかったのか?ヨシが全滅状態だという。
いつも眺める堤防からの景色。
オギの白い穂やヨシの茶色の穂がよく見えていた年もあるが、今年はうんと遠く、言われても見えないぐらい遠くにわずかにヨシ原が見える程度。
許可を申請してくれてあり、今日はこの鵜殿の中を歩く。
どこでもいつでも歩けるわけではなく、水の通らない時期を見計らって、管理道路・草刈りした草道などを歩く・・
案内してくれるメンバーは長年鵜殿で活動して鵜殿を熟知している人なので、これ以上はない幸せだ。
草に覆われた道
時には水のない水路の飛び石を渡る。
竹林のようなセイタカヨシのそば。
木のようなオオブタクサのそば・・ひょいと曲がって草むらへ・・
鵜殿を知り尽くした人でないと迷子になる。
観察したい植物にたどり着くなんて、海の中の砂粒を探すようなものだ。
カナムグラに覆われた草地
今年は春に水が通らなかったので、カナムグラが大繁茂。
いつも見られるゴキヅルの姿は全くない。
水が入れば、カナムグラは芽が出せず、水中でも発芽できるゴキヅルが伸びるのだ。
お昼は草のトンネルを抜けて淀川の岸辺に降りた。
少し前まではこの砂浜も水に浸かっていたそうだ。
いい天気で広々として心地よい。
今日は写真を撮らなかったが、2017年から鵜殿ヨシ原の上を通る新名神高速道路の工事が進んでいる。鉄塔が立ったり、工事中のところもある。
草に覆われたところを歩いていると、外来植物ばかりなのではと思うが、希少種も多い。
道路工事でも希少種が犠牲になっているに違いない。
たくさん観察した中で・・
ベニバナマメアサガオ
マメアサガオの品種で、花冠は薄紅、芯は濃くない。
イヌゴマ
ネナシカズラ 葉を持たない寄生植物
カナムグラの茎に寄生根をだしていた。寄主は選ばないそうだ。
サデクサ 托葉鞘の上部が広がって赤ちゃんの涎掛けのような形。
ナンバンギセル ここではオギに寄生している。
ムラサキアオゲイトウ 紫色なのに青ゲイトウとはこれいかに。
ホソバイラクサ
トラノオジソ レモンエゴマもたくさんあってそっくり。
花の色、苞の形で見分けるそうだ。
レモンエゴマの花は白、苞葉は幅広い。
トラノオジソの花はうす紫、苞葉は細い。先端にわずかに花が残っていた。
匂いも違うらしいが・・よくわからない・・
サクラタデの群生もあった。
ホソバイヌタデの群生
花は薄いピンク。葉はイヌタデに比べてやや細い。
イヌタデの群生とホソバイヌタデの群生が接していた。
シマツユクサ 小群生があり、花が残っていた。
花は小さく1㎝ぐらいか。
花弁3個は同じ薄紫 写真では見にくいが、雄しべは5本。
可愛くてきれいに撮りたいが、小さくてむつかしい。
カメノコハムシ
カメノコハムシはヒルガオ科を好むようで、ホシアサガオの葉は虫食いでボロボロ。
クツワムシがいた。
チョウセンカマキリ 脚の付け根がオレンジ色
特定外来生物に指定されている、ナガエツルノゲイトウやアレチウリもある。
一方、絶滅危惧のリストに上がる、ホソバイヌタデやアゼオトギリ、サデクサなど・・他の季節にもたくさんの希少種や在来種が生育している。
遠いけれど楽しみな観察場所である。