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礼子も呼び、職員室の隅の椅子に座って一休みしていると、近くの席に座っていた壮年の男性教師が話しかけてきた。
「きみたち、バイクに乗っているのかい?」
小熊が答えるより先に、スマホに保存した積荷のリストを見て積み込みの手順を頭で組み立てていた礼子が返答する。
「ええ」
「危なくないかい?」
小熊も礼子も、もううんざりするくらい繰り返し聞かれた事。そのたびに返す答えを考え、相手によっては最も簡明直截(ちょくさい)な応答をやっと見つけた小熊が、礼子の替わりに答える。
「いえ、別に」
確かにバイクは危ないが、世の中には他にも危ないものが幾らでもある。退屈とか。それがわかっていない奴への答えはこれで充分。
角川スニーカー文庫
トネ・コーケン「スーパーカブ2」より
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と、いうわけで今からパンを買いに行ってきます、三宮まで。
有馬街道はクルマが一杯で、「すり抜け命」のスクーターが多いから危ないけど、こんな晴天に家の中で「退屈」と付き合っていると、精神が危なくなる。
礼子も呼び、職員室の隅の椅子に座って一休みしていると、近くの席に座っていた壮年の男性教師が話しかけてきた。
「きみたち、バイクに乗っているのかい?」
小熊が答えるより先に、スマホに保存した積荷のリストを見て積み込みの手順を頭で組み立てていた礼子が返答する。
「ええ」
「危なくないかい?」
小熊も礼子も、もううんざりするくらい繰り返し聞かれた事。そのたびに返す答えを考え、相手によっては最も簡明直截(ちょくさい)な応答をやっと見つけた小熊が、礼子の替わりに答える。
「いえ、別に」
確かにバイクは危ないが、世の中には他にも危ないものが幾らでもある。退屈とか。それがわかっていない奴への答えはこれで充分。
角川スニーカー文庫
トネ・コーケン「スーパーカブ2」より
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と、いうわけで今からパンを買いに行ってきます、三宮まで。
有馬街道はクルマが一杯で、「すり抜け命」のスクーターが多いから危ないけど、こんな晴天に家の中で「退屈」と付き合っていると、精神が危なくなる。