CubとSRと

ただの日記

「読書人」と「草民」の国だった。

2020年08月26日 | 重箱の隅
 「避諱(ひき)」について以前に書いた日記を再掲したのですが、今回は「革命の国」の面目躍如、とでも言えそうな話。
 大体が「革命の国」、ではあります。王朝が代わる(易姓)ことで国の「大勢」が一新される。「体制」は基本的には変わらないみたいですが。
 それが社会主義革命をやった。教本通りにやったわけだけれど、そこは現実主義のあの国です、本来なら共産党(指導部)と人民(労働者)で国家を成立させるべきところを、「都市民」と「農村民」という戸籍(区分)を作った。社会主義国家ではありえない階級区分です。
 そしてその
あたらしい「体制」は間違いなく一人の独裁者を生み出しただけだった。
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 「団結の日本 議論の中国」
 加地伸行 大阪大学名誉教授
 石平  評論家

 石平
 中国社会は「読書人(士大夫のこと)」と「草民(平民)」に分かれます。草民の多くは農民を指す。歴代王朝では草民は常に抑圧される対象ですが、中国共産党政権も例外ではありません。中華人民共和国の建国後、中国政府はそれまでの戸籍制度を改変し、「農村戸籍」と「都市戸籍」の二つに固定化してしまったのです。この制度は中国の歴史上、初めてのことでした。
 加地
 農民が一所懸命勉強して科挙試験に合格したら、官僚になることもかつてはできた。ところが、今はそれができなくなったわけですね。
 石平
 農民の子に生まれたら永遠に農民のまま。制度的差別を堂々と施したのです。

 中国知識人の限界

 加地
 共産主義と矛盾していますよ。しかも、この制度は今でも続いています。中国人は怒りを示していないんですか。
 石平
 毛沢東は地主階級をすべて殺しました。しかも農民を焚き付けてやったのです。これによって農村の中で農民の声を代弁する人々が消えた。もう一つ、都市戸籍の連中は、農村戸籍とは違うということで優越感を覚えるようになった。だから、その制度を率先して変えようとは思わない。逆に続けたほうが、政権にとって都合がいいと判断しています。
 加地
 この戸籍制度を解放しない限り、民主化なんてほど遠い。
 石平
 おっしゃる通りです。中国知識人の限界が露呈していると言えます。結局、農民を小バカにし、民主主義といったところで、農民たちは何も分かっていないと思っている。
 加地
 残念ながら当たっている部分もありますから(苦笑)。
 石平  
 中国国内で真剣に平等を求める声は上がっていません。農民の身分を固定化することで、農村社会を支配するとともに、都市部の人々には満足感を与える。だから、いまだに都市部の人々は農村部への差別が激しい。
 加地
 じゃあ、文革とは何だったんですか。中国共産党政権が誕生した意味は何ですか。身分差別撤廃を目指していたのではないですか。
 石平
 毛沢東は農村社会の弱さと危険性を熟知していたからこそ、政治的に徹底的に管理することにしたのです。中国の歴史を見てください。一度、農民たちが一致団結し、カリスマ的人物に煽動され、暴動が発生すると、大きな変化が起こってきました。
 加地
 黄巾の乱(後漢末の農民反乱)がそうでしょう。
 石平
 そういう意味で、毛沢東は実に巧妙な政策を施したと言えます。
 加地
 大学に進学しても身分は変わりませんか。
 石平
 中国国内で大学が乱立したので、大学の地位が低下しています。そのため大学出身者でも都市部での就職などまともにできません。結局、農村に帰るしかない。しかも、都市部はずるいことに、景気が良く人手不足のときは農村部からどんどん人を流入させ、安い賃金で雇う。ところが、いざ不景気となると、さっさと解雇し、農村部に帰らせる。上海や北京など、大都市の繁栄は農村部の犠牲で成り立っていると言っても過言ではありません。
 加地
 典型的な労働搾取ではありませんか(笑)。

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 「地主は搾取するもの。小作から借地料を取り立てて、自らは土で手を汚すこともせず、豊かに暮らしている」
 ただ、日本の地主なんかは可愛いもので、西欧の地主は借地料を取り立てるのではなく収穫物の一部を報酬として与えていただけだったし、酷いときは農民を奴隷のように扱っていた、と。学校では、そう習いました。
 シナだって魯迅の「故郷」に出てくるように地主の威勢の前では農民は小さくなっているしかなかった。
 それは確かにそうかもしれない。習ったのは誇張が過ぎる、と今では思うけれども。
 けど、その中で習わなかったところ、「農民の声を代弁する」、時には命を懸けて(傘連判状など)、という地主や総代の責任は、洋の東西を問わず為政者に向けられていました。
 これが実は重要な部分で、これから目を逸らすことですべて「搾取する者=悪」とすれば社会主義が正しい、ということになる。指導者層と労働者が同じ方向を向いて国を運営するのだ、と説く。勿論、労働者層から指導者層に移ることも研鑽次第で可能である、という。
 これが社会主義の在り方なんですが、シナはあり得ないことをした。労働者を二種類に分け、出稼ぎは良いけど、戸籍は移すことができないようにした。
コメント
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