「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和2年(2020)8月12日(水曜日)弐
通巻第6616号
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香港警察、ジミー・ライ、アグネス・チョウらを保釈
激高する香港市民の抗議、西側の圧力に降参した?
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「逮捕劇は政治的圧力よ」。保釈されたアグネス(周庭)は第一声を記者団にあげた。保釈金は20万香港ドル(およそ300万円)。
「リンゴ日報を支援してくれ。最後まで支援してくれ」。保釈されたジミー(黎智英)は、モンコック警察署前で記者団に大きな声で言った。保釈金50万ドル(保釈金と担保金を含める=邦貨換算で750万円)。いずれもパスポートを押収された。
市民の支援は「リンゴ日報の株を買おう」だった。月曜から火曜にかけてリンゴ日報の親会社「壱」の株価は三倍になった。また号外を50万部印刷したが、どの売店でも飛ぶように売れた。ほかに同日逮捕されたジミーの息子二人を含む十名も保釈された。
香港政庁は市民から敵視されている現実が浮かんだ。
結局、この逮捕劇は政治的な圧力を示威したことになるが、逮捕理由の「香港安全法」は7月1日から施行されたわけで、逮捕理由は昨年の違法集会だから事後法の適用となり、裁判を維持できないことがわかったのかも知れない。
また世界中で巻き起こった不満、抗議の声は、香港政庁を越えて、直接的に中国共産党、習近平個人への批判でもあったため、北京は確実に世界の声が聞こえたはずである。
だが、今後懸念されるのは、保釈金を含み、長い法廷闘争の費用だろう。「香港大乱」の逮捕者は9200名。起訴された者が2000名。裁判を維持し、弁護士を雇用し、PR活動を展開して行くためにはSNSを利用してのクラウドファンディングがますます必要とされる。
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強引な逮捕劇だった、と思っていたら、今度はえらくあっさりと保釈(釈放ではなく)。
初めからすぐ保釈するつもりだったのか。
それとも、状況不利と見て慌てて釈放したか。
共産党の「『指導』という名の命令」の下に国が運営されるのが共産主義国家。
独裁政権と同じ仕組みだから、上意下達を専らとする。
そうなると、今回のことも中央、北京の意向と見るべきだろうけれど、一つ忘れてはならないのが、「下」による「上意」の忖度。
これで様々な軋轢が起こるが、責任は「下」に擦り付けられる。
下に丸投げして、後は知らん顔、というのは民主主義国家ではできない。だから、日本の場合、政府が必ず「ジミンガー」「アベガー」と叩かれる。(民主党政権の時は「ミンシュガー」「ハトヤマガー」とはならなかった。民主主義が踏みにじられていたからかな?)
けど、共産主義国家であるシナは叩かれない。
そこで、標題に。
「(共産党の)脅しか。それとも(香港政府の)勇み足か。」
一番納得できる解釈は、共産党が焚き付けて、香港政府がやり過ぎた、勇み足だった、と共産党が世界の反応を見て、取り敢えず保釈させた、というやつ。
けど、釈放、でなく保釈金を積ませる保釈という奴は、また事由をでっちあげていつでも拘留することができる、ということだから、少なくとも「勇み足」にはなっていないわけで・・・・・。