「とにかく今日は『帰り掛けに表札を注文』することだけだ。」
「ついでに『麦茶』を買うんだ。」
「ついでに『麦茶』を買うんだ。」
というわけで、当てなしに直進していたのをやめ、右に曲がる。
この時期、葡萄が売られている。
昔は道路沿いにいくつも葡萄販売のテントが張られていたのだが、ここ数年ですっかり姿を消してしまった。時折り見えるテントは、すぐ近くにあるブドウ園の直営ばかりらしい。
今日、偶然にそのうちの一つが道路の右側に店開き(テント設営)をしているのを目にした。そこに車が並び、葡萄を買い求める客の行列ができている。
三台ほど前を走っていた高級そうなベンツが、ハザードランプを点けていきなり路上駐車。片側一車線。対向車が来るため、後ろの二台は追い越しができず、すれ違い待ち。コペンは三台目。
初めは右折して駐車場に入ろうと思ったのかもしれない。けど、駐車場と言うより砂利のままの駐車スペースで入口が分からなかったのだろうか、それとも満車で早々に諦めたのか、ベンツはやっぱり葡萄を買おうと路上を駐車場に定めたらしい。
去年も何度か買った(この場所ではない)けれど、行列を見ると、もういけない。二袋、三袋とまとめ買いをしていく客が多く、見る見るうちに売れてしまって、自分の番になった時、すっかり売れてしまっているかもとひやひやしながら並ぶのは、精神衛生上、全く良くない。
で、「そこまでして買わなくたっていいや」と思ってしまう。
「今年は買わないかもなぁ」と思いながら北へ向かう。
右に曲がった時から、新たな買い物予定品が頭に浮かんでいる。葡萄ではない。「桑の葉茶」だ。
一昨年辺りからか「柿の葉茶」を飲むようになった。そこから興味が湧き始め、熊笹茶、ドクダミ茶と試して、昨年から桑の葉茶を買うようになった。
それがすっかり気に入って何度か買っていたのだが、或る時、陳列場所に見つからないので店の人に聞くと、時期が過ぎたので来年まで入荷しません、と言われる。
それから数か月。ん?じゃ、半年も経っているのか?
なら、もう入荷しているだろう。買おう。
ところが、「先日入って来てたんだけど、みんな売れてしまって」という返事。無惨。
「じゃ、今度いつ入ってきます?」と聞いたら盆明けには入って来るかも、と言われる。電話を入れて、確認してから行くしかない。
結局、何も買わずに道の駅を後にする。
でも、いい。今日の目的は「表札の注文」。付録が「麦茶」。
帰り道で去年何回か買った農協の直販テントを目にする。葡萄の袋は僅かだが、客も二人ほど。
「今年は買わないかもなぁ」と腹立ち半分で思っていたことなど、そこはそれ「年の功」か「老人力」か、きれいさっぱり忘れて、迷わず駐車場に入るコペン。二房1500円の葡萄をトランクに入れ、ニコニコ顔で帰る。
勿論、最初の目的である「表札の注文」は忘れることなくホームセンターで済ませた。麦茶のパックも売っていたから一緒に買った。
ただ何となく走るだけで、目的は一つ、付録も一つの「ショートツーリング」。それが、思いつきのお茶探しや葡萄購入ということも含めて、曇り空の下、数時間にわたって楽しむことができた。
暑くはあっても曇り空。トップを閉めることもなく、だからエアコンをつけることも遂になかった。真夏の車でこれは気分が良い。
「予定通り」というより、予想(期待)以上の100キロショートツーリング。