彼らは貧しいが、それも気にしない。穏やかで礼儀正しく好奇心に富む。ただ彼らの名誉にかかわるときは命も惜しまないと訪日した異人は語ってきた。
それに「正義心も強い」とスウェーデン人ツユンベリーは記録する。「だから奴隷を酷使するオランダ人を心から憎んだ」と。
出島のオランダ人が江戸城に参内する様子を詠んだ川柳が残る。
紅毛の/登城に蠅の/ついてきて
よほど彼らを嫌っていたことが分かる。
米国人はそんな日本人に喧嘩を売り、無差別爆撃をやり、原爆まで落として三百万人を殺した。
米国の悪い癖は、自分はいつも正義で、悪いのは相手だと言い張ることだ。
円が安いからとプラザ合意で円を大幅に切り上げた。それでも日本製品は強いまま。
それは日本の構造に欠陥があるからだと日米構造協議で日本解体をやらせた。
終戦時もそう。残忍なのは米国なのに「日本が残忍な侵略国家」で、「その狂気は危険なカルト神道に根差している」(米国務省)と規定した。
それに沿ってマッカーサーは「神道は邪教として迫害する」旨の総司令官命令を出した。命令は彼が創った憲法に「政教分離」の名で記された。ここでいう「教」は神道だけで、キリスト教や仏教は入らない。
現に長崎市は二十六聖人顕彰碑を市の公園に祀らせ、維持管理費を出している。
マッカーサーもキリスト教普及を職権で遂行した。中島飛行機の跡地に「国際基督教大を建てさせ、宣教師二千五百名と聖書一万冊を空輸させて」(袖井林二郎『マッカーサーの二千日』)布教を図った。
天皇家にも神道からの改宗を迫り、皇太子の家庭教師にクエーカー教徒のバイニング夫人を押し付けた。「王様と私」のアンナのつもりなのか。日本人はその非礼に言葉を失った。
(続く)
高山正之著
変見自在
「マッカーサーは慰安婦がお好き」より
新潮文庫
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