昨日の「戦場にかける橋」の続きです。
「連合国軍はインド兵らに戦わせておいて、彼らが負けると自分らはすぐに降伏した。そして「キリスト教では労働は罰」と言って、ただ捕虜生活を優雅に過ごそうと思っていた。」
「本当かね?」、と思ってしまうのは私が日本人だからでしょうか。
実際のところ、捕虜にすると食わさなきゃならないから、敢えてそうせず、見殺しにしたり皆殺しにしたり、というのが世界の常識だったような気がするんですが・・・。
だから7万人もの捕虜を養うなんて大変なことだし、「労働は罰」なんて太平楽なことを言ってたら、いつ「病気のため」とか「事故のため」に死亡、なんてことにされない(ならない)とも限らないと考えるのが普通じゃないでしょうか。
「戦場にかける橋」は大ヒットして、「猿の惑星」は日本人はまさかそんなこととは思いもせず、喜んでみていた。
けれど、「パール・ハーバー」では明らかにおかしいという意見が出てくるようになった。
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(「パール・ハーバー」の興行収入は大したものにはならなかった。)
それでも欧州市場を考えれば侮日ものはほしい。
ハリウッドが次に目を付けたのがローラ・ヒレンブランドの小説「Unbroken(アンブロークン)」だった。
捕虜になった元米国五輪選手が金属のバックルで殴られて失神するとか丸一日収容所仲間に殴られ続けるとか際限ない苛めを受ける。
そして終戦。帰国する旅の途次、列車の窓から焼け野原の広島を見て「心からの清涼感」を感じる。
しかし日本兵のズボンは紐でとめる。下士官でやっとズックのバンドがつくがバンド止めはアルミ製でバックルなどない。
いやそれが嘘かどうかは米国人にはどうでもいい。ただ彼らは日本人が残忍であればいい。小説はニューヨーク・タイムズで14週もベストセラーを続けたし、原爆も正当化できる。
映画化が望まれ、なんとアンジェリーナ・ジョリーがメガフォンを取ることが決まった。「猿の惑星」並みのヒットが予感された。
撮影は快調だった。南太平洋をゴムボートで漂流する主人公を鮫が襲い、さらに零戦が繰り返し機銃掃射を加える。
日本人はプリンス・オブ・ウェールズの乗員を助ける僚艦を攻撃しなかった。駆逐艦「雷(いかずち)」はスラバヤ沖海戦で沈めた英駆逐艦乗員422人を救助した。
恩を仇で返す描写だが、零戦はゴムボートに穴すらあけられず消えていく。
馬鹿な描写は捕虜収容所でも続く。収容所長は佐官級なのに軍曹が所長を務める。この軍曹がさんざん酷いことをしながら戦犯にもならない。牛蒡(ごぼう)を食わせたとかで死刑を宣告された者もいるというのに。
日本人への偏見と嘘で固めた彼女の映画は昨年、米国などで封切られたが、日本では前評判付き映画としては史上初の上映なしで終わった。
朝日新聞が「来年、反日専門館で公開」と嬉しそうに伝えたが、日本人も少しは他人の悪意に気がつくようになったようだ。
ブルース・ウィルスも支那製の反日映画に出る。夢は見ない方がいい。
(2015年11月5日号に掲載)
高山正之著
変見自在
「朝日は今日も腹黒い」より
新潮文庫
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「朝日は今日も腹黒い」より
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