「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和三年(2021)10月10日(日曜日)
通巻第7078号
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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良い加減にしろ!「脱炭素」は世紀の嘘。日本産業を潰し中国依存を増やす陰謀
加藤康子、池田直渡、岡崎五朗
『EV(電気自動車)推進の罠 ──脱炭素政策の嘘』(ワニブックス)
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善意による誤解とポピュリズム政治家と戦略が理解できないメディアによって日本の産業力が殺されかけている。地獄への道は善意・善意・善意が敷き詰められており、誰もが行き着く先の落とし穴に気がつかない。
それが現代日本の真相である。
EVが本格化するとトヨタは潰され、げんにホンダは2000人の早期退職。城下町に失業不安を増大している。首を絞めているのは誰だ。
脱炭素を厳格に守っているのは日本だけ。これは「かれらの利権」である。
ガソリンエンジンが電池によるEV自動車に置き換えられると電力消費は二倍になり、リチウム電池は公害を垂れ流す一方で、トヨタに代表される日本の基幹産業は立ちゆかなくなる。それは中国の陰謀であり、それに加担しているのがフォルクスワーゲンという図式である。
政府が行うべき産業政策とは経済を安定させ成長を促して雇用を増大させつつ生活を豊かにすることでなければならない。日本政府はその正反対の方向へ驀進している。
愚かな、ポピュリズム政治家は小泉ボンボンが代表するが、EVを煽るメディアもどっこいどっこいである。
日本の基幹産業は鉄鋼、造船だった。いまは衰退激しく見る影もなく、企業城下町はゴーストタウンとなった。そして日本の「基幹産業は介護」になった。
鉄鋼も造船もだめになったが、自動車は生き残っている。
加藤康子さんは言う。
「(日本は)自動車産業によって支えられているといっても過言ではありません。自動車産業は70兆円の総合産業で、部品、素材、組み立て、販売、整備、物流、交通、金融など、多岐に亘り国民経済を支えています。日本から自動車産業がなくなったら未来に豊かな暮らしを続けることはできません。EV推進は、今までのどの政策よりも、日本の経済と産業構造に決定的な打撃を与える政策です。舵取りを誤ると日本は長年培ってきた工業立国の土台を失い、多くの失業者をかかえることになります」
「早い話、エンジンとトランスミッションがバッテリーとモーターに変わると、コストの4割はリチウムイオン電池となる。この原料が中国に握られている。日本の自動車業界は中国の指図によって動かされるということになる。」
国際政治は環境・環境と五月蝿く、実現不可能なカーボンゼロのお呪いを唱えているが、この裏に隠された中国の野心、そして欧州勢のトヨタ潰しの陰謀という背景を知るべきではないか。
げんにトヨタの社長は、最大で百万人の雇用が失われるばかりか、15兆円の貿易黒字が蒸発すると警告している。
これを深刻な産業機器と認識している政治家もジャーナリストも産業人も少数派で、多くが『環境保護』の戯言に酔って、自らの首を自らで絞めている。 なるほど善意の固まりである日本人は、地獄へ向かって突進している過程になることさえ気がつかないのである。
日本政府が支援するべきはハイブリッド車である。世界のユーザーがトヨタのハイブリッドを欲しがっているのに、日本の産業を潰し、外国の産業を育成し、いつか来た道を驀進する。
中国は宇宙軍で、向こう五年ほどはアメリカより優位になる。半導体で自国内生産体制の構築を急ぎ、日本の技術を盗みだすために、エンジニアをハニー・トラップでひっかけたり、法外な報酬を餌に中国へ招聘し、2049年には「中華民族の偉大なる復興」というスローガンの元に自動車でも世界的覇権を握ろうと躍起なのである。
この野心を挫くのが日本だろうに、日本のエンジニアは国家安全保障上、中国に協力や支援をしてはいけない、という正常な感覚が欠落している。怖い話である。
バッテリーも日本人技術者を招聘しての開発からはじめ、技術を猛追して、次々にEV試作車を生産し、補助金をつけて国内で強制的に政府機関、地方政府、国有企業に売りつけ(個人は中国製EVは買わない。トヨタが圧倒的人気)、その輝かしい「実績」なるものを背景にいずれ、世界市場を乗っ取るという『偉大な』戦略を行使しているのである。
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>脱炭素を厳格に守っているのは日本だけ。これは「かれらの利権」である。
いつものことながら・・・。
で、「かれら」とはだれかと言うと、それは「中国」であり、それに「加担しているのがフォルクスワーゲン」だ、と。
ここで「陰謀」という言葉を使われると、私の頭の中には巨大な悪の組織が長い爪で地球を掴もうとしている子供じみた絵が浮かんでいたんだけれど、流石に歳を取ってしまって、そこまで漫画チックなのは浮かばなくなった。
その代わりに
「『陰謀』とは、こっそりと行われる謀(はかりごと)」
のこと、という本来の意味から眺めることができるようになった。
「巨大な悪の組織」が行おうとする謀は、必ずしも「巨大な陰謀」とは限らない。単に数年、数十年の、目先の自国の利益しか考えない場合の方が多いかもしれない。南シナ海の人工島づくりだって、一夜にして岩礁の上に家を建て、住み着いてしまうのだって、基本、変わらない。ただ単に「既成事実を作って居座っている」だけだ。尖閣上陸→居座りだって、海保の船がいなければ平気でやる。
調和とかバランスなんて全く考えない、自分さえ、自国さえよければそれで良いのだ。そして、この、調和を無視した粗雑でいい加減な規模で行われる陰謀が、一番危険だ。
「中華民族の偉大なる復興」、みたいなのは目標ではなく目的。
だから世界を支配するまでは終わらない。