ハリウッドが作る「侮日映画」のあさましさ
もはや戦後ではない昭和30年代初め、「戦場にかける橋」が封切られた。
頭のいい英国人捕虜アレック・ギネスが頭の悪い日本軍にクワイ川に架ける橋の作り方を教えてやるといったストーリーだ。
実際はタイとビルマ間約400キロの鉄路建設は1万5000人の鉄道部隊が設計施工した。橋はクワイ川のほか600もあった。
この工事のお手伝いをしたのが約7万の連合国軍捕虜だった。開戦直後、自分たちの盾にしたインド兵らがやられるとすぐ降伏し、収容所でただ飯を食ってきた連中だ。
お礼奉公と思えばいいのに「キリスト教では労働は罰」とか言い、日本人にやらされたのを今でも恨んでいる。
早川雪洲以下の日本人はひたすら愚鈍で残忍に描かれたが、映画はなぜか日本で当たった。街には随分長い間クワイ河マーチが流れたものだ。
同じころ封切られたユル・ブリンナーの「王様と私」が王家を侮辱しているとタイで上映禁止になり、ジョディー・フォスターのリメイク版も含め、いまだに禁が解かれていないのと好対照を見せる。
日本でのヒットは米国の10州分の興収に相当するからハリウッドも喜んだ。
おまけに侮日ものは欧州でも喜ばれる。欧州諸国はあの戦争で植民地を失い、昔の貧乏国に逆戻りさせられた。英国はわずかなカネを貰うために王室も総出で習近平を大歓迎する屈辱にも耐えている。
で、ハリウッドは「戦場にかける橋」を書いたピエール・ブールに続編を頼んだ。それが猿、つまり日本人がゴリラ(黒人)を部下に白人を奴隷にするという「猿の惑星」だった。
日本人は他人が悪意を持つなどとは考えもしない。無邪気にこの映画を楽しみ、11州分もの興収を上げた。
その流れが「パール・ハーバー」で少し変わったと言われる。映画はいつも通り「野蛮な日本軍機」が病院を爆撃したり逃げる民間人を殺したり。
しかし日本軍機は逃げる民間人を撃たない。逃げる石原慎太郎少年に機銃掃射したのは米軍操縦士だったではないかと。ネットにこの映画のスレッドが立ち、興収は米国の1州分にも達しなかった。
(続きは明日)
高山正之著
変見自在
「朝日は今日も腹黒い」より
新潮文庫
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「ティファニーで朝食を」、だって「ふざけるな!」と思ったけど、こういうことなんですよね、何かにつけて。