かのじょは、月の世の物語・精霊編というべき物語を構想していた。
それは日照界にあるアルタンタス浮遊大陸を舞台にした、小精霊の冒険物語だった。
かのじょの最後の作品となった、後の歌・「種」編には、わたしの想像力が影響しているが、わたしは、かのじょの協力なしに、物語を書く気はない。よってこれから、新しい物語が発表されることはないが、かのじょが考えていたこの「精霊編」のアイデアには、頭の中に閉じ込めておくには捨てがたい面白さがある。
それをこれから、少しずつ発表していこう。
物語の中に出てくる精霊は、人の姿と、別の姿の、二つの姿を持つ。別の姿は、獣に似ている。人の姿も、角があったり、瞳孔が細かったりと、人間とはずいぶん違う。美しいが、時にエキセントリックなことをする。主な使命は天然システムの管理。そして人間存在の芸術面での指導、あらゆる愛の存在の使命のための愛の補強である。かのじょはこの精霊という存在によって、自然界の愛を表現しようとしたのである。