森の中でしばらくブナの樹霊と暮らしていたキオラックルを、よほど時間が経ってから、アルタンタスに住む、金色のフクロウの姿をした大きな精霊が気付いた。精霊は驚いた。もはや取り返しがつかないほど、キオラックルはブナの樹霊と心を結んでいたからである。
だが精霊はキオラックルを見捨てるわけにはいかない。彼はキオラックルを説得し、自分が開いている、小精霊たちの学校に導いていく。
そこで初めて、キオラックルは自分以外の小精霊と出会う。風変わりなキオラックルを、小精霊たちは驚きながらも、こころよく迎えた。
ここに、余編「虹」編に出て来た、黒猫の姿を取る小精霊が、エルナスと言う名前で登場する。彼はアルタンタス脱走と言う大罪を犯したがために、教室の後ろの方で、黒猫の姿に封じられ、鎖につながれていた。
エルナスはキオラックルに花将棋を教える。
キオラックルは、たいそう珍しい小精霊だった。生まれた時は、自分の別の姿を知らなかったが、先生役のフクロウの姿を取る精霊によって導かれ、自分のもう一つの姿を知った。それを見たみんなは驚いた。自然界のリズムを歌い自然界を導くことを使命とする精霊は、白蛇や熊や猿や鹿や鳥や魚類などの姿をとることが多い。だが、キオラックルはなんと、変身すると、月桂樹の若木になったのである。しかもその木は、歩こうと思えば歩くことができる。
こんな精霊はだれも見たことがない。
みなは驚いた。
キオラックルは、自分がまるでみんなと違うのだということを、このとき初めて知った。