世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

月の世の物語・精霊編 6

2013-09-25 03:13:34 | 薔薇のオルゴール

旅の終着点は、深山の奥にある、記憶の花と言う、永遠に咲く花のあるところである。

アルタンタスに来た小精霊は、だれも、一度はこの花のところに来て、自分が存在することの意味を尋ねねばならない。花は、小精霊に、これからの自分の運命を導く、大変大切なことを教えてくれるという。

エルナスがそれを聞いた時、花はなんと、いたずらはやめなさい、と言ったそうだ。その言葉通り、エルナスは、決まりを破ると言うことが使命のような、いたずらばかりした。先生を一番困らすやんちゃに育ち、果てはアルタンタスを脱走すると言うことまでやりとげた。たいした小精霊である。

何度か危機を乗り越えながら旅をつづけ、深山に上り、キオラックルは花を探した。だが、なかなか花に出会えない。エルナスやアリウスの教える通りの魔法をしても、花は現れてくれない。むなしく時間が過ぎた。

キオラックルは淋しくなった。自分はなぜこんなにもみんなと違うのか、その理由を花にたずねたいのに、花は現れてくれない。

彼は親役のブナの樹霊が持たせてくれた、お守りを持っていた。それはブナの枝を細工して作った、小さな人形だった。その人形に話しかければ、ブナの木のお父さんの声で、時々答えてくれるのだ。

ブナの木のおとうさんは、花将棋を応用した、召喚の儀式を教えてくれた。その教えのとおり、自分なりの工夫をして、心を込めた儀式をすると、ようやく花は現れてくれた。
それはなんと、岩のように大きな、青い菊だった。

エルナスやアリウスに聞いていた話とずいぶん違う。キオラックルは花に、自分はなぜ生まれたのかと、問うた。

花は答えた。

特別な、あまりに特別な、愛のために。

キオラックルは、意味がわからなかったので、もう一度、それはどういう意味ですかと尋ねた。

すると花は、やさしくも厳かな声で、答えた。

今は何も、知らない方がいい。


(おわり)




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