泣きたいことの材料なら、本当は、在庫はいくらもありました。心の中に作りあげた、大きな堰の向こうには、それが弾けとんだらどうしようもなくなるほどの、秘めた感情の水がため込まれていました。
でも私は、それをずっと隠していました。それができなければ、大人ではないと思っていましたし、いつまでも悲哀に溺れて自分を哀れんでいるような人間でいたくはありませんでした。悲しみや孤独や絶望や、叫びだしたくなるような現実の前でも、負けたくなかった。常に明るい明日を作り出せる、本当の自分の力を信じたかった。
(2005年3月ちこり33号、言霊ノート)