「アルカ山の奥で野垂れ死にか。誰も葬ってくれない。悲しんでもくれない。ひとりで馬鹿なことばかりした報いだ」
ダヴィルは吐き捨てるように言った。アシメックは、あの日山で見たアロンダの幻を思い浮かべていた。あれはあの女の霊だったのだろうか。ならばなぜあんなところに現れたのだろう。
アシメックはオラブの死とアロンダが無関係ではないような気がしていた。だがもちろん、そんなことは誰にもいうことはできない。アシメックはダヴィルの目を感じながら言った。
「とにかく、今ヤルスベ族には、おれたちへの恨みがくすぶっているんだ。これからも同じようなことは起こるだろう。嫌なことにならないよう、どうにかしなければならない」
「漁場のことはどうする」
「一度ゴリンゴと話をしてみる」
コルが歓声をあげた。板の上で、二つの独楽がぶつかったのだ。
その二日後、アシメックはヤルスベでゴリンゴと話し合った。漁場のことはなんとかなった。ゴリンゴは冷静だった。ケセン川の漁場の協定は守らなければならない。余計な争いは互いを疲れさせるだけだ。しかし話し合いをしながらも、アシメックは常に威圧的な何かを感じていた。ゴリンゴの目つきから、時々不穏な光が見える。アロンダの言葉が気になる。
要求してくる、か。何を要求してくるつもりだろう。
ヤルスベから帰る船の上で、アシメックは考えた。