鏡を見ると、顔がすっかりわたしになっている。
シルマがやってたときは、かなり感じのいい美人に見えたけど、今はそうでもないね。
わたしの目つきや表情が、かわいいかのじょのかたちを剋するんだ。
だからあまり表情は動かさないようにしている。
他人の形に入るなんてことは、もうこれきりだろうけど、いい経験だとは思ってるよ。
自分を抑えて、この形にあわさなきゃいけないというのは結構苦しいもんだ。
かのじょはおとなしい美女だったからね。わたしもそれを無視して自分を出すわけにはいかない。かのじょの生き方を壊さないような生き方をせねばならない。
短期間で主体が変わるのは、それがけっこうしんどいからなんだ。
わたしはここで本当のわたしを出すつもりはない。最後まで隠すつもりだよ。