罪びとよ

「ガラスの中のアドルフ」

モデルになった実在の人物については、お話を読んで行く途中で分かった人もいると思うので、あえてフルネームは申しませんが、物語の中のアドルフは、実在のアドルフより、もっとひどいことをしています。信じられないくらい。

本当のアドルフは、それをガラスの中からずっと見ていることしかできない。
彼が望んだ幸せは、ほんとはもっと小さな、自分の大きさにちょうどいいようなものであったはずなのに。怪は彼を、人間ではなく、怪物にしてしまった。

さあいこおの、こおふく、とは、こういう、もの、な、の、か…

矛盾に沈んだ人間の魂が、自分のためだけの永遠の幸福への欲望をむさぼり始めた時、どうなってゆくのか。
神様は、人間に、まざまざとそれを、見せたのかもしれない。アドルフによって。



「怪に落ちしヨハネ」

草野に花を踏みにじり
もの言う虫を噛みつぶし
甘苦い　血の酒に酔い
舌のしびれる　毒魚の肝を食った

腐った嘘の宴に　嫌気がさし
クズどもと　すべてをののしって
森を焼き　山を砕き　河を干し
街を焼き　人を裂き　国を沈め
聖者を　丸裸にして　嘲笑った

暗い鉄の影を　重く引きずり
己のなした　すべてのことを
無いことに　しようとして
とうとう　神の胸を刺し
海のような　血を浴びた

何も　何もない
もはや　何もない
荒野　荒野に
じゅう　十字架を　立て
すがりつく
あなたに　すがりつく
愛よ
愛よ
あなたが

イエス
あなたが　すべてだった

　　*

（これはあくまでも「薪」編他に出てくる怪のヨハネであり、
聖書の中のヨハネとは全く関係ありません。以上、無粋ながら、念のため。）



「ヤオ・フェイ・ライ、ついに勝利した人」

感謝する　すべての愛に感謝する
今日わたしは　生まれ変わった
本当のわたしを　生まれて初めて　知った
わたしが　愛であることを知った

若き頃のわたしは　何も知らなかった
矛盾の闇に　心を沈め　
愛を　軽蔑し
正しいことを　腐らせ
あらゆるものに　権力のナイフをついた
長い長い間　わたしは迷っていた

感謝する　すべての愛に感謝する
長いときを　わたしのために耐え
本当のわたしを　待ってくれていた
すべての愛に感謝する

神よ　あなたに　御栄がありますように