ポール・ゴーギャン、19世紀フランス、後期印象派、象徴主義。
「黄色いキリスト」はこれより前に描かれたゴーギャン自身の絵である。その絵をまた自分と一緒に描くということには深い意味がある。ゴーギャンは一時期ゴッホとの共同生活を送ったが、それはこの男が天使に強くひかれたからだ。罪のない、とてつもなく大きな存在というものにひかれるのである。そういうものになりたいという心があるからだろう。その心の奥に隠れているこの男の本当の姿を見ようとするとき、痛い絶望感をぼんやりと感じる。前面に大きく出している顔は、もちろん自分本来のものではない。画家は後に逃げるようにタヒチに向かう。そこでたくさんの絵を描くが、それは本当の自分から逃げ続けている人間の、ありもしない故郷を求めている心の影がさせたことかもしれない。