
エル・グレコ、17世紀スペイン、マニエリスム。
イエスを最初に裏切ったのはユダではない。この男である。こいつが最初に、イエスを馬鹿にしろと、みんなに言ったのだ。それからイエスが絶命するまでの間、彼らは惨い暴力をやめなかったのである。ユダはその時もうすでに故人であった。イエスを殺せたはずはない。イエスを殺した弟子たちは、その罪が自分たちに来るのを恐れて、すべてをユダに押し付けたのである。裏切り者の汚名から、ユダを救ってあげなさい。そしてその名を、再びこの男に押すのだ。それがこの男の責務だからである。