このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
女流作家カーソン・マッカラーズの死後、編集者だった妹が単行本未収録の初期短編などを集め、「ザ・モーゲージド・ハート」というタイトルで出版している(1972年)。
直訳すると、「抵当に入れられた心」。
僕は大学時代に東京神田の古書店街でハードカバー版を見つけて読んだ。
以来、時折そのタイトルについて考えた。
作者が生前につけたものではないのだから、さほど意味があるとは思わないが、それにしては、いい。
マッカラーズの作品タイトルはどれも印象的だ。
「心は孤独な狩人」、
「黄金の目に映るもの」、
「悲しき酒場のバラード」、
「針のない時計」、
「不思議の平方根」、
それに「木、岩、雲」。
その後、抵当権や担保とは切っても切れない職業に就いてからも、僕は考え続けた。
それが「ビフォア・サンセット」(2004年)を観た時、これまでそのタイトルのイメージを的確に説明できないでいたもどかしさが解消したような気がした。
9年間再会できなかった主人公二人は、いわば抵当に入れられた心を抱えていたのだろうと。
毎日考えるわけではないが、気づくと自分のハートは抵当に入ったまま。
それで男は小説を書いた。
女性は、、それは結末近くで明かされる。
そんなこともあって、あの映画は個人的にいとおしい作品なのだ。
「ザ・モーゲージド・ハート」は1993年に抄訳が「カーソン・マッカラーズ短編集―少年少女たちの心の世界」(近代文芸社)というタイトルで出版されている。