このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
私がデパートの紳士服売り場にフロアリーダーとして勤務していた頃のことだ。
その日は後輩の接遇に関するクレーム処理のため、お客様相談室のN室長とともにお客様宅を訪問することになっていた。
真冬の寒い日だった。
一軒目は室長がそつなく対応し、お客様にも別れ際には笑顔が見られるほどになっていた。
二軒目のお宅の近くまで来ると、室長は車を停めて口を開いた。
今からお伺いする方は私も何度か対応させていただいているが難しい方で、時間も長くかかると思う。私は終わったらそこのタクシープールで車をつかまえるので、きみはこの車で一足先に戻りなさい。
そういうわけには行きません、と私は拒んだが、とても若いお嬢さんに聞かせられないような話も出るだろうから、と室長も譲らず、約束の時間が迫っていたこともあって一人で車を降りてスタスタと立ち去った。
私は指示に従わず、車のエンジンを切ってそのまま待った。
二時間以上たって、やや疲れた顔の室長が路上に現れた。
会社の車と中にいる私を見つけ、驚きの表情を浮かべながら歩み寄ると、後部ドアを開けながら言った、
「ダメじゃないか、上司の言うことを聞かないで。」
「すみません、でも私のできることはこのくらいかな、と思って。」
「-そうか。きみはいい幹部職員になるだろうね。ずっと仕事を続けるのですよ。」
その後、室長と顔を合わせることはほとんどなかったのだが、昨年、彼は代表取締役に就任し、私は店長職を拝命した。
私はあの冬の日にいただいた励ましの言葉を胸に置いて精勤してきた。
頑張れば、時々報われることはあるのだ。