goo blog サービス終了のお知らせ 

院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

ウイルスは生命にとって必須要素!?(進化論雑考その1)

2014-12-06 06:11:18 | 生物

(ミトコンドリアの構造。生命科学教育画像集より引用。)


 生態系におけるさまざまな種は捕食や共生によって生態系を維持しているだけでは、どうもなさそうです。細胞内装置のミトコンドリアは生体の外から来たらしく、細胞核の遺伝子とは別の遺伝子をもっています。それでいてミトコンドリアは細胞内でエネルギーを産出するという、大変重要な役割をになっています。


(T4ファージ。ウィキペディア「ファージ」より引用。)

 バクテリア間でウイルスを感染させるバクテリオファージは、人間が人工的に細胞内に遺伝子を移植するのに使用します。バクテリオファージが存在するということは、異種細胞間で遺伝子がやり取りされることが生態系では普通に行われることの証拠です。

 ウイルス感染というと病気のことばかりを考えますが、じつは遺伝子のやり取りが常に行われていることを意味しており、遺伝子のやり取りは生態系が存続するためには必須な営みなのかもしれません。さらに遺伝子のやり取りは、進化にも大きく影響していると考えられます。

(従来の進化論では「進化」は「突然変異」のみによって起こるとされていますが、1個体に起きたことが種全体を支配することの説明ができませんでした。バクテリオファージによる「ウイルスの一斉感染」のように遺伝子の組み込みが生じたなら、そこの説明がつくのではないでしょうか?)

致死量とはなにか?

2014-09-05 00:07:27 | 生物
(創元推理文庫)

 青酸カリはごく少量で死にます。むかしの睡眠薬は一瓶飲めば死ねました。現在の睡眠薬はいくら飲んでも死ねません。一晩二晩ぐっすり寝て、それで何事もなかったように覚めてしまいます。

 少し前には大量服薬が流行り、それは若者のあいだでOD(over dose)というスラングで呼ばれて、私はしょっちゅう救急科に呼ばれてうんざりしていました。ODが流行ったのは、現在の睡眠薬では死なないということが知られたからです。「死なないから」ODをやる。「生命の危険がないのに、周囲を大騒ぎさせることができる」ODという方法をとる若者を私は卑怯だと思いました。もっと命を賭けた切実な行為なら同情すべき面もなくはなかったのですが。

 「致死量」とよく言われます。死ぬのに十分な薬物の量ですが、この量の意味は意外に知られていません。たとえば青酸カリなら10gでも100gでも死ねます。こうした十分量を致死量と考えている人が多いのではないでしょうか?

 また反対に、致死量とは死ぬ最小の量と考える人もいるかもしれません。実はいずれも違います。それは致死量には個体差があるからです。ある人には致死量でも、別の人は死なないかもしれません。そのため、致死量とはどういう量なのかが曖昧なのです。

 そこで考え出されたのが「LD50」(lethas dose 50)という考え方です。これは多数の生物個体に同量の毒物を与えたときに、ちょうど50%の個体が死ぬ量です。このような量なら、だいぶ幅を狭く決めることができます。

 医学部の薬理学の講義でこの概念を知ったときに、私は目から鱗が落ちたのでした。

オウム、インコを保護するNPO法人

2014-08-25 05:38:07 | 生物

(保護団体、TSUBASAのHPより引用。)

 NHKテレビで、飼えなくなったオウムやインコを専門に引き取るNPO法人が紹介されていました。

 飼えなくなるのは飼い主のエゴだと思われがちですが、オウム、インコに関してはそうではないようです。つまり、飼い主は飽きて捨てるのではなく、自身が高齢化したり死去したりして、やむなく預けるのだそうです。

 なぜかと言うと、他のペットに比べて、オウム、インコは人間並みに寿命が長く、飼い主のほうが先に老いるからです。番組では26歳とか42歳とかのオウムが出てきました。

 ペットとはどうも飼い主より先に死なないと、ペットとしての役割を十分には果たせないのではないでしょうか?

 先日(2014-07-12)、ペットの介護や葬式のお話をしましたが、介護や葬式まですべてを飼い主にやらせてくれない動物は、ペットには向かないのかもしれませんね。

致死遺伝子

2014-07-03 00:00:18 | 生物

(つるなし朝顔。楽天市場より引用。)

 上のアサガオにはツルがありません。こういうアサガオを「つるなし朝顔」と言います。このアサガオは、種子の皮が硬くて自力で発芽することができず、人間が皮に切れ目を入れてやらなくてはなりません。つまり、人間が手を加えない自然界では生きていくことができないアサガオです。

 高校のとき致死遺伝子というものを習いました。子の遺伝形質は1:2:1となるはずなのに、1:2にしかならない植物があって、それはなぜかと考えた学者が、消えた部分の子孫は葉緑素を欠いているので育たないことを発見しました。葉緑素がない形質が発現するのは、致死遺伝子によると定義されました。

 つるなし朝顔の種子の皮が硬いという形質は致死遺伝子によるものと言ってよいでしょう。絹糸を作るカイコの場合、自然界で生き抜ける品種はすでにないそうです。カイコは人間が世話をすることによってやっと生き延びています。

 豚はどうでしょうか?犬なら放置すると野生化しますが、豚は野生化できるのでしょうか?野生化できないとすると、人間は残酷だなぁと思わずにはおれません。

男女が似すぎるとどうなるか?(2)(一夫一婦制は習性だろうか?)

2014-06-23 04:55:45 | 生物

JR東日本ジパングクラブHPより引用。)

 前回、皇帝ペンギンは、父親が卵を温めている間にメスが食料を獲りに行くと述べましたが、メスは必ず自分が産んだ卵のところ、すなわち父親のところへ戻ってきます。ですから、皇帝ペンギンは一つの卵を夫婦で育てる一夫一婦制をとっているようです。

 いっぽう、オットセイやゴリラが一夫多妻制であることは、よく知られています。人間は、現在多くの国で一夫一婦制ですが、これは本能や習性に従ったものでしょうか?

 イスラム国では男一人が複数の妻をもつことが認められていますが、この制度は習性にではなく文化にもとづくものと考えられます。

 イスラム国とは反対に、母権制の民族も存在します。たとえば、カナダの原住民ヘヤインディアンは女が一家を構え、男は女の家を渡り歩きます。そうやって子どもができるのですが、生まれた子どもたちの父親はぜんぶ別の男になるそうです。ですが、このような母権制が人類の本能や習性に基づいているとは、必ずしも言えません。これも文化なのかもしれません。

 ここで言えることは、一夫一婦制ではない夫婦制度では男と女の役割がまったく異なり、イクメンはあり得ないということです。イクメンは一夫一婦制のもと、夫婦の役割を限りなく同一に近づけようとして初めて成立しうる超人為的な制度です。

 繰り返しになりますが、人類は本能や習性によって一夫一婦制をとっているという証拠はありません。たぶん、それも文化なのだろうと推測できます。

 ところが、この文化というものが厄介で、生態系や自然をもっとも破壊するものが、じつは文化なのです。イクメンの推奨は文化的ではありますが、もしかすると種の保存には逆行しているのかもしれません。この先は次回に譲ります。

男女が似すぎるとどうなるか?(1)(生物としての人間の男女の役割分担)

2014-06-22 05:57:34 | 生物

OCN TODAY より引用。)

 生物はきわめて精妙な仕組みをもっています。種によって固有の本能や習性があって、それによって種の保存が実現されています。

 たとえば皇帝ペンギンは、2か月間マイナス40度の環境でオスが飲まず食わずで卵を温めます。そのときメスは、2か月間海に出て食料を獲ってきます。これらの習性によって、皇帝ペンギンは極寒の地での種の保存を可能にしています。

 人間は原始の姿では、どのような習性で子育てを行ってきたのでしょうか?太古の昔には粉ミルクなんてありませんでしたから、乳離れするまでは赤ちゃんは母親に育てられていたと考えられます。

 赤ちゃんの側にも習性があって、赤ちゃんは頬に乳首が触ると、そちらの方向へ首を向けます。これを吸啜(きゅうてつ)反射といいます。赤ちゃんがおっぱいがいらなくなるまでに成長すると、吸啜反射は消滅します。それが習性に従った場合の自然の成り行きです。

 父親が哺乳瓶を使って授乳することは、天与の習性や反射という恩恵に逆らうことにはならないでしょうか?自然の仕組みに従わない生き方には、どこかに無理がかかってくるように思われるのですが、それは杞憂でしょうか?

フロッピーディスクのプロテクト破りとクローン技術

2014-03-14 01:09:54 | 生物

(誠文堂新光社刊。)

 まだコンピュータソフトがフロッピーディスクで供給されていた20年前、フロッピーディスクにはコピーされないようにプロテクトがかかっていた。プロテクトを知恵の限りを尽くして破ることが流行って、そのための解説本が売られた(上図)。

 最後は、プロテクトの破り方が分からなくても、元のフロッピーディスクを丸ごとコピーしてしまえば、プロテクトごとコピーできて、少なくともそのフロッピーディスクは使えるという発想が出てきた。

 中味を詳細に理解できなくても目的を達成できることがある。クローン技術がそれである。生殖なしでクローン生物を造れるようになったが、できた生物の仕組みの細部までは分からない。

 上あご下あごの遺伝子と舌の遺伝子は別のはずである。しかし、新しい個体(赤んぼう)は、舌はあごのサイズより必ず小さく、口を動かしても上あごと下あごが絶対に舌を噛まないように巧妙にできている。この仕組みを詳細に知ることは、クローン技術よりも難しいだろう。

 クローン技術は、プロテクトごとフロッピーディスクをコピーしてしまうことと非常に似ている。

生物の機能を目的論的に説明するのは不可

2014-02-23 04:00:37 | 生物
(角川文庫。)

 上の本を読んでがっかりした。「キリンの首はなぜ長い?」という設問に「キリンは足が遅いから、早く敵を見つけるため」というようなありがちな説明がついている。こういう目的論的な単純な説明ではダメなのだ。

 生態系は何億年という歴史を積んで、すでに「こうあらねばならない」という姿になっているから、目的論的な説明が可能なように感じてしまうのだが。

 すでに毒をもった植物の記事(2012-09-04)で述べたけれども、有毒植物は何かの目的のために毒をもっているわけではない。もともと毒をもっているから、それを食べた動物の数を減じて、結果として捕食者の数を調節しているだけである。

 捕食者はある程度の数が有毒植物によって殺されることによって、異常繁殖せずに健康な生態系が保たれている面がある。このように、キリンの首は長いので他の肉食獣が食べにくく、そのため肉食獣は別の動物を食べ・・・アカシアの木は背が高くても、葉をキリンに食べれられ、アカシアの葉はキリンに食べられることによって・・・というように、生態系は複雑精妙なバランスをとっている。

 子どもに「早く敵を見つけるため」と一対一対応で説明するのはよくないだろう。その先に、ほぼ無限に続く生態系の連鎖があることを、ある程度ほのめかしておかなくてはならない。

長寿の秘訣

2013-09-19 04:16:44 | 生物


 長寿が本当にめでたいかどうかは、ひとまず置く。だが、世間は長寿者を羨ましがったり、祝ったりする。

 そして長寿者に判で押したようにぶつけられるのが「長寿の秘訣は?」という愚問である。その本当の答えは「運です」である。

 西洋のことわざに「長生きしたかったら長生きの両親から生まれなさい」というのがある。つまり長寿は、本人の心がけではどうにもならないことなのだ。

 ところが「秘訣は?」という問いに「運です」と答えた長寿者はめったにいない。なにかしらテキトーな理屈を言うのが常である。「毎日おちょこ一杯の酒を欠かさないこと」、「毎日、梅干しを食べること」、「よくしゃべり笑うこと」。変なのになると「毎朝、東に向かってお辞儀3回する」なぞというのもある。

 年長者を敬うのは儒教の教えだが、長寿者といえども浅はかな人がいる比率は、青壮年と変わらないようだ。一言正しく「運です」と言ってくれれば、どれだけ説得力があるか分からないのに。

 私は浅はかだと思われるのがいやだから、長寿者になったら「運です」と答えることに決めている。だが最近、体の方々にガタがきている。「運です」と答えるまでには間に合わないだろう。

コラーゲンとは何か?

2012-11-11 04:52:58 | 生物
 最近たんぱく質の中でもコラーゲンがことのほか注目されている。コラーゲンの含有を謳ったサプリメントも多いし、牛スジ屋の女将までが「コラーゲンたっぷりだよ」と牛スジ料理を売り込んでいる。(確かに牛スジにはコラーゲンがたくさん含まれている。)

 だが、コラーゲンは本当に「お肌」や健康に良いのだろうか?コラーゲンは皮膚の真皮に含まれている。また、骨、軟骨、腱にも利用されている。とくに腱のコラーゲンは繊維化されていて強靭である。

 コラーゲンを経口接取すると、グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリンというアミノ酸に分解されて吸収される。

 しかし、アミノ酸はたんぱく質の原料であって、吸収されたグリシン、プロリンなどがふたたびコラーゲンに合成されるとは限らない。つまり、コラーゲンをいくら摂取しても、「お肌」によいとは到底言えない。他のたんぱく質よりも「健康に良い」とも言えないのである。

 これくらいのことは、高校で生物や化学を普通に習っていれば、すぐに分かることである。だから、コラーゲンがあたかも「お肌」や健康に良いように宣伝するのは、実はペテンである。

 文系の人はもしかしたら、高校で人体の組成やたんぱく質について習わないかもしれない。もし彼らが、たんぱく質の中でも特別にコラーゲンを有難がっているとしたら、気の毒という他はない。

生命とは何か?

2012-10-25 06:37:42 | 生物
 アメリカの火星探査機が火星に着陸して、生命の痕跡を捜している。

 このほど、火星に水が流れていたことを見出して、生命が存在したのではないかとNASAは色めきたった。だが、それは思い込みに過ぎないのではないか?

 生命の定義を、自分自身を複製し続ける存在とすれば、そのために必ずしも水も酸素も必要としない。

 手塚治虫の「鉄腕アトム」には、自分自身を複製し続けるロボットが出てくる。鉄腕アトムほどには複雑でないロボットである。これは、材料と電気さえあれば次々と自分と同じロボットを造っていく。

 そのロボットは生命ではない、なぜなら人間が造ったものだからだという反論がありうるだろう。しかし、人間は元を質せば自然が造ったものである。その自然が造った人間が造ったものは、やはり自然が造ったものなのである。論理的にはそうなる。

 やれ水だ酸素だと言いつのるのは、NASAの想像力のなさを証明するようなものである。

毒をもつ植物が存在するのはなぜか?

2012-09-04 06:25:00 | 生物
 猛毒をもつ植物すなわち毒きのこや毒草は、なぜ毒をもっているのだろうか?

 植物が毒をもっているか否かは、それを食べる動物には分からないはずである。だから、動物が毒きのこや毒草を食べても、食べた個体が死ぬだけで、その情報が他の動物個体に伝わるわけではない。だとすると、捕食者から身を守るために植物は毒をもつわけではなさそうである。

 昔、あるアメリカの公園に野生の鹿がいた。その鹿を同じく野生のピューマが捕食して困ることがあった。そこで、公園の管理者はピューマを殺して鹿を守ろうとした。その結果どうなったか?天敵のピューマが減ったおかげで鹿が大繁殖した。

 面白いのは、その後である。大繁殖した鹿は公園内の植物を食べつくし、食べ物がなくなって、今度は鹿が大量に餓死したのである。

 こんな話を出したのは、もしかしたら毒のある植物は、一定数の動物を殺すことにより(すなわちピューマの役割を果たすことにより)生態系の安定性に寄与しているのではないか?

 毒をもっている植物や、そうでない植物が存在することにより、自然界の平衡は微妙にコントロールされ、あらゆる植物種や動物種が絶滅しないで済んでいるのではあるまいか?

 むろん以上は、毒きのこや毒草の存在理由にかんする私の想像に過ぎないが。

匂いによる犬の個体識別

2012-07-11 00:03:45 | 生物
 多くの国のお札に顔の絵が描かれていることは、ニセ札防止であることは、ほとんどの方がご存じだろう。

 人間の感覚は、顔に対して最も鋭敏である。少しのズレでも、顔が変化していることが分かる。また、一度見た顔と初めての顔とは、容易に識別がつく。数えられているのかどうか知らないが、人間は万単位で顔の識別ができるだろう。

 犬は匂いで人や別の犬を識別する。犬が電柱に尿をかけて縄張りを主張するように、犬は尿の匂いを何万種類と嗅ぎ分けることができるようだ。

 尿の匂いは日によってさまざまだろう。それでも、犬は個体識別ができるようである。ということは、尿が濃くても薄くても、またその日だけ特別な成分が混ざっていても、尿の匂いお核心的な部分は変わらないのだと思われる。

 その「核心」とは何だろうか?研究されているのかもしれないが、少なくとも私は、尿の何が個体識別の核心物質なのかを知らない。顔の場合のように、特定の物質ではなく、(すなわち目、鼻などの構成成分ではなく)何種類かの物質の布置が「核心」なのかもしれない。