混合診療が解禁されそうである。健康保険がまだ使えない高度先進医療を、本人の経済的負担で利用できるようにし、健康保険で科学的に有効だとすでに認められている医療はそのまま健康保険が適用できるようにするという方策だ。
これにより、高度先進医療が利用しやすくなるのは確かだが、爆発的に増えるのは高度先進医療ではなく、民間療法や盲信的な医者が勝手に信じ込んでいる「療法」になるだろうことは、確信をもって予言できる。
現在でも行われている「療法」に「○○イオン水の点滴」というのがある。「○○イオン水」とはポカリスエットを薄めたようなもので、点滴しなくても口から体に入れればよい。それをわざわざ点滴でやって、「腰痛に効く」、「がんに効く」という振れ込みで大枚を取るのだ。
「○○光線の照射」というのも跋扈するだろう。遠赤外線のようなものを照射して、「胃弱に効く」、「痔が手術しなくてもよくなる」といった文言で、これも大金を取る。光線照射はX線でなければ医師免許は要らないから。医師の指示が必要な注射が「前処置」として行われるだろう。注射の中身はただの水である。
ここで注意しなくてはならないのは、そのような「治療」を行う医者は患者を騙そうとしているわけではなく、自らその「療法」の効果を信じ切っていることだ。怪しい「療法」に執心している医者は、思われているよりもずっと大勢いる。
(実際は何の効果もない)サプリメントが大流行の現在だから、医者が薦める「療法」ならもっと信用されるだろう。サプリメントは「○○に効く」とうたっては犯罪になる。だから、「こんなにたくさんの成分がはいっています」というような宣伝しかできない。サプリメントとは要するにプラセボー(偽薬)である。プラセボーも信じれば効いたような気分になる。
アリナミンEX(
2013-08-07)やQPコーワゴールドもプラセボーである。それでも売れるのだから、医者が狂信的に信じている「療法」はプラセボー以上に一大マーケットを造りだすだろう。
混合診療の解禁を勧告した委員会は、周到にも「(健康保険外の医療は)医者と患者が合意の上で、自己責任でやってほしい」と明言している。「合意」さえすれば医者は何をやってもよいというわけである。