院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

法曹のコンピュータ化の遅れ

2017-10-19 00:12:48 | コンピュータ

(弁護士ペリーメイスン。asahi-net より引用。)

 弁護士というと、アメリカでは欲深い者の味方のような悪役的存在らしい。ペリーメイスンは例外的のようだ。

 それはともかく、弁護士を初めとする法曹の免許は、むかしほどプラチナではなくなった。ひとつには法曹がコンピュータ化を怠ったからだろう。身体という自然現象さえ、医家はコンピュータ化に励んできた。

 一方法曹においては、法律は人間が造ったもので、さらに判例は有限だから、医学よりもよほどコンピュータに乗りやすいはずだ。それなのに自分の技量を過信しすぎていたのではないか?

 いまからでも遅くはない。判例を分類して記憶させておけば、一瞬で参照できるようになる。また、事件の構成要件を数値化しておけば、判決も容易に予想できるようになるはずだ。

 いちはやく医家がコンピュータを使用し、法曹が立ち遅れたのは、医家が理系出身、法曹が文系出身ということがあるのかもしれない。

 ※今日の俳句(秋)
    冷蔵庫の中に秋の蚊をりにけり

「東大に受かる人工知能」の現状

2015-09-05 03:29:47 | コンピュータ

(BSTBS 9月3日放送。)

 前回コンピュータやロボットに奪われる仕事について書いた。国立情報学研究所の新井紀子教授のグループは「東大に受かる人工知能」を研究開発している。現在、同知能はセンター試験の偏差値が48程度で、私立の文科系にはなんとか受かるそうだ。ただし、「少年ジャンプ」は永久に読めないと言っていた。(人物の表情などが理解できないから。)

 人工知能ができないのは、やはり育児や介護だそうだ。それらは個別具体的でなくてはならず、ビッグデータの検索が得意でも役に立たないそうである。

 人工知能に置き換われる仕事として、上の写真に弁護士が出ているが、やはりできるのはルーチーンな報告や判断だけで、個性的で新しい判例を導き出すようなことは人間の弁護士でないとできないという。

 まあ、常識的な結論だった。

(試験問題をコンピュータに判る形に直して入力するのだと思っていたら、そのまま入力するのだと言う。つまり、人工知能が翻訳機能をもっているのが前提になっていることには少し驚いたが。)


※今日、気にとまった短歌

  ものすごくギャグのセンスがあるガキの親が恥ずかしそうにしている  詠み人知らず

どうしても人間でなくてはできない仕事

2015-09-04 00:08:01 | コンピュータ

(保育士の仕事を学ぶ中学生。宮古毎日新聞より引用。)

 前々回、多くの仕事がコンピュータに取って代わられていると述べた。ロボット技術も非常に発達して、工場のいわゆるオートメーションの流れ作業は、人間の形はしていないがロボットの行動そのものである。

 ならば、絶対にコンピュータやロボットにはできない仕事とは何か?ちょっと考えると2つ思いつく。

(1)スキンシップが必要な仕事。たとえば育児など。(売春もそうか?)

(2)人間同士が(テレビ電話なぞではなく)実際に顔を合わせて合意したり対立したりする仕事。(営業や外交交渉の仕事。これらがテレビ会議では不可能なことは、2014-06-09 の記事2014-06-10 の記事で述べた。)

 ロボットのメンテの仕事や、食糧生産の仕事が最終的に残るだろうという向きがあろうが、ロボットがロボットを生産するという、かつて手塚治虫が描いた世界が来るだろう。

 農業は畑自体が用いられなくなるかも知れない。すべての食料(魚介類の養殖も含め)が自動生産が可能になるだろう。鉱山も自動化される。

 そうなると、究極的に人間がやらなくてはならない仕事は、エネルギー補給(電気や石油など)をして機械(ロボットなど)動かすだけになってしまうだろう。


※今日、気にとまった短歌

  カーリング選手は大変なんだなと思った今日の床掃除です  詠み人知らず

法律はコンピュータに乗せやすいのではないか?人工的なルールだから

2015-08-26 05:29:21 | コンピュータ

(行列のできる法律相談所。テレビドガッチより引用。)

 2015-03-08 の記事で、法曹界がみずからの仕事をコンピュータに乗せる努力をしてこなかったと批判した。そのときは、裁判官の独立性から考えて、裁判までコンピュータで行うのは無理だろうと考えた。

 だが、そうでもないらしい。どんな裁判官が担当しても同じ判決が出るルーチーンな事件のほうが実は多いようだ。

 上の写真の番組で、弁護士ごとに違った見解が出るのは、わざわざそういう微妙な事例をもってきているからだ。弁護士にもルーチーンな仕事のほうが多いのではないか?

 法律は自然現象ではなく人為的に作られた「ルール」だから、本当はもっともコンピュータ化に馴染むのではないか?

 人体は自然現象でルールも複雑である。にもかかわらず、医学は多くの部分でコンピュータ化を進めてきた。いずれ、医者さえ要らなくなるだろう。(自己価値の温存という点では、コンピュータ化を怠ってきた法曹界のほうが利口かもしれないが。)


※今日、気にとまった短歌

  切れ切れの景色つないで春を見る新幹線の窓側の席 (岩手県)貝沼正子

いにしへのパソコン通信時代・「番号取りゲーム」

2015-07-27 05:19:50 | コンピュータ

(パソコン通信終了のお知らせ。マイナビニュースより引用。)

インターネットはまだなく、電話回線でパソコン通信をやっていた時代、「番号取りゲーム」というのが流行りました。(世界で初めてのネット句会 (2011-11-06) もパソ通から始まりました。)

 パソ通時代には、やりとりは掲示板だけで、そこに寄せられるメッセージには番号が自動的にふられました。そこでパソ通ファンは自分のメッセージが 1,000番 とか 10,000 番とかきりのよい数字がほしくなるらしいですね。

 何人もがそのゲームに参加して、9,500 番あたりになると猛烈に接続ダッシュが行われて、ほんのタッチの差で 10,000 番をつかみ取る人が出てきます。そういうゲームがありました。真夜中がねらい目でした。

 インターネットでもブログランキング1位を取るのが目的で、ブログの内容は問わないゲームが出てきていますね。パソ通のときもそうでしたが、このようなゲームのログは、あとから見る人には無内容で面白くもなんともありません。

 それでも、人間はどんなところでもゲームを考える逞しい存在ですね。(亡父がシベリヤ抑留中、材料を工夫して麻雀牌一式を作ってしまった日本人捕虜がいたそうです。)


※今日、気にとまった短歌

  自転車の荷台に手をのせよそ見して「乗れば?」とつぶやく君をみつめる (近江八幡市)中村由衣

  

  

データ入力ミスの発生頻度

2015-06-11 06:00:03 | コンピュータ

(データ入力の現場。岡崎情報開発センターのHPより引用。)

 日本年金機構がデータ入力を入力会社に依頼して、その入力会社が別の入力会社に仕事を丸投げしていたことが問題になっている。

 パソコンが出てくる前の大型コンピュータの時代、同じプログラムの入力を2人のキーパンチャーが行っていた。片方が誤入力をすると分かる仕組みだ。当時、大型コンピュータはプログラムのコンパイルにとても時間がかかったから、わずかなパンチミスでも最初からコンパイルをやりなおさなくてはならず、そのコストと比べれば2人がかりのキーパンチのほうが安上がりだった。

 そのころデータ入力を専門に請け負う会社ができた。コストを抑えなくてはならないから、2人で同じことを入力するという仕組みは消えた。その分、誤入力が発生する。

 科学的研究のデータ入力も、入力会社に依頼するようになった。学術論文だから、統計処理は厳密でなくてはならない。しかし、入力会社の誤入力は一定の%で必ず発生する。そこで研究者はどうしたかというと、元データに誤りがあることを織り込んで統計処理を行った。

 すなわち、むかしの論文は入力データの信頼性はここまでと腹をくくって、やっても信頼性が保証されない必要以上の統計処理は行わなかった。実に科学的な態度である。


※今日、気にとまった短歌

  約束の時間に遅れる君を待つ木立の中の静かな怒り (川崎市)和田美智子

画像ファイルの拡張子

2015-04-08 04:33:56 | コンピュータ

(モバイルでファイル転送。google play より引用。)

 メモリ容量や転送速度が現在ほど大きくなかった時代、「圧縮解凍」は必須技術でした。プログラムなども「圧縮」して送られましたから、それを「解凍」したら、まったく元通りになる必要がありました。LHAという北海道のお医者さんが造った圧縮解凍ソフトが世界的に使用された時代もありました。

 ところが、画像が自由にやり取りできるようになると、「非可逆圧縮」という考え方が出てきました。つまり、「解凍」しても元通りにならない「圧縮」ですね。そんなことは内容がプログラムだったら無意味ですが、内容が画像だと圧縮しても見栄えが悪くならないかが問われるようになりました。

 画像の拡張子に .jpg とか .GIF とかがあって、これらは画像の「フォーマット」と呼ばれます。しかしながら、元来は圧縮方法だったと記憶します。圧縮方法の違いによって画像の質が違うなぞということは、従来の可逆圧縮だったらあり得ないことでした。

 むかし、好事家はパソ通の時代から電話回線で画像のやりとりをしていました。(私もやりました。)1枚の画像を落とすのに30分くらいかかりました。そのころ、画像の拡張子(圧縮方法)は今よりもずっとたくさん、10種類くらいありました。.jpg は生き残りましたね。


※今日、気にとまった短歌

  帽子マスク作業服すべて白づくめ厨房の人ら売場より見ゆ (名古屋市)高井?子(にんべんに八の下に月)

弁護士資格がプラチナ資格でなくなった本当の理由

2015-03-08 05:25:19 | コンピュータ

(弁護士バッジのレプリカ。RGJPのHPより引用。)

 法科大学院を作って弁護士が大量生産されたからという理由だけで、弁護士資格がプラチナ資格ではなくなったわけではありません。弁護士の仕事が世のコンピュータ化に乗れなかったのが問題の本質です。

 弁護をコンピュータで行うソフトはありません。法学や法理論や法哲学の研究もコンピュータに馴染みません。「計量裁判」は研究されましたが、実用化できませんでした。

 一方、医師免許は未だにプラチナ免許です。それは医学のあらゆる分野にコンピュータが導入されたからです。これにより医学は長足の進歩を遂げました。失礼ですが、法曹界でのコンピュータ利用は文書がワープロ化されたくらいではないですか?争点や損害などのもろもろをコンピュータに入れて、調停や裁判などの法的手続きの参考にしてみようという機運はあるのですか?法曹の作業は微妙すぎてコンピュータには馴染まない面も多いでしょう。ですが、名医が天才的な勘で行う診断治療も、じつはコンピュータには馴染まないのです。

 CT,MRIはコンピュータなしには実現しませんでした。心電図もコンピュータで読まれます。ゲノム解析、薬品の開発、疫学的研究、診断学・・何をとってもすべてコンピュータが有効です。打診や聴診は必要がなくなりました。むかしの2次元単純レントゲン撮影の読影名人より、現在の研修医のMRI診断のほうが正確です。この30年で医学界は別世界のように変わってしまいました。

 こうした医学界から見ると、法曹界は未だに打聴診のような個人的職人芸が幅を利かせているように見えるのです。法曹界ではまだ30年前の知識が通用するのではありませんか?


※今日、気にとまった短歌

  二時間目三時間目と死にそうだ弁当の時間生き返ります (都立鷺宮高校)伊藤未来

ソフトバンクの賭け「ペッパーくん」

2015-02-25 07:16:46 | コンピュータ

(ペッパーくん。KAGUAのブログより引用。)

 「ペッパーくん」にはどうも魅力を感じません。(買いませんでしたが)ソニーのロボット犬「アイボ」は欲しいと思いました。(それでも「アイボ」は赤字だったそうです。)

 「ペッパーくん」の本体が20万円を切るというのは驚きですが、バッテリーなどの消耗品を入れると3倍くらいの価格になるそうで、プリンタと同じ考え方のようですね。

 (バッテリーをもたせるため)足の動きを犠牲にしてコミュニケーション能力のほうを重視しているようです。多数のアプリを充実させてユーザーごとに違った個性をもった「ペッパーくん」ができ、ついには手放せなくなることを狙っているようですが、機械応答のレベルはそれほど進歩しているのでしょうか?

 デザインでは「顔」が重要なことは言うまでもなく、たくさんのデザイナーの努力の結晶だそうです。でもこの「顔」、古典的なカマボコ目であまり魅力がありませんね。私には建築会社の人がテキトーに描いたみたいな「オジギビト」のように見えてしまいます。


(オジギビト。かぶの徒然日記より引用。)

  「ペッパーくん」はすでに量産体制にあり、中国の山東省に専用の工場ができているそうです。当たれば大きいですが、どうでしょうね?私は当たらない方に賭けようと思います。


※今日、気にとまった短歌

  キャラ弁に主役を譲り隅っこのタコのウインナー足折りたたむ (明石市)小田和子

どこへ行った?「計量裁判」の試み

2015-02-21 05:36:54 | コンピュータ

(名古屋地裁内部。裁判所のHPより引用。)

 私が大学に入ったばかりの1970年ころ、大型コンピュータが普及し、膨大な統計計算が一瞬でできるようになりました。

 それに歩調を合わせるように、「計量心理学」や「計量診断学」が勃興しました。現象を数値化して計算はコンピュータにやらせようというわけですね。

 同じころ「計量裁判」という考え方出てきました。犯罪を細かく数値化する、すなわち、犯罪被害の大きさ、常習性、動機、犯意、情状酌量などを数値化して「悪質度」が計算できれば、裁判官の恣意が入らない公正な判決が出せると考えた人々がいました。

 結果がどうなったかというと、同じ「悪質度」でも裁判官によって量刑が違うことがわかりました。私が見た本では、4人の裁判官が別々の量刑を行いました。

 そのときに、量刑が重い裁判官から軽い裁判官までA、B、C、Dと並びました。別の犯罪で同じことを行っても、この順位は変わりませんでした。それにより、裁判官の恣意性ではなく、逆に裁判官の一貫性が見えてきたのでした。

 裁判官の独立性はやはり重要で、人が人を裁くのは機械が人を裁くよりはマシだということになったのでしょうか。その後計量裁判がまだ研究されているとは聞きません。

 じつは、連続量でない(非線形な)データを線形とみなして得点をつける方法は、薬効検定では未だに行われています。うつ病の重さを表すハミルトン尺度が有名です。前にご説明した二重盲検法には抗うつ薬の場合ハミルトン尺度が用いられることが多いです。

 うつ病の重さや改善という質の問題を数値で表すのは本当はおかしいのですが、それを凌駕するだけの説得力のある研究方法がまだないのが現状なのです。


※今日、気にとまった短歌

  まどろめば腹に乗りくる猫なりきもう一度抱き荼毘師(だびし)にわたす (深谷市)上田英司

カードマネーの書き換え

2015-01-24 05:26:10 | コンピュータ

(B-CASカード。ウィキペディア「B-CAS」より引用。)

 有料テレビ専用のカードマネー(B-CASカード)が不正に改ざんされ、マスプロ電工の社員が逮捕されました。逮捕のきっかけは犯人の仲間が、改ざん用プログラムを販売したからだそうです。ということは、プログラムの販売なぞせずに自分たちだけで使用していれば、不正が明るみに出ることはありませんでした。

 スイカやマナカなど交通機関用のカードマネーは、いまや駅周辺の商店やコンビニでも使用できます。これらのカードには個人情報はいっさい書きこまれません。ですから、もし私が書き換え技術をもっていたら、必ず書き換えをやるでしょう。

 もう多くの人々が不正な書き換え法を知っていて、すでに何億円分もが使用されてしまったはずです。それが明るみに出て大問題になるのは、もう時間の問題でしょう。

 スイカやマナカの会社は性善説にたった、とてもよい会社だと私は思います。


※今日、気にとまった短歌

  女子部屋へ行けず残って大富豪革命起こせぬ5人の男子 (川崎市)かきあげ団員




OSの統一はまずいのではないでしょうか?

2014-12-24 05:23:08 | コンピュータ

The X Windows system より引用。)

 2,30年前のことでしょうか、OSの決定版を作ろうという動きがありました。OSを統一すれば、OSごとにアプリケーションを作製する無駄が省けるというわけですね。

 これに対して猛烈な反対が起こりました。OSは列車のレールと同じで、一個に統一してしまうと発展性がなくなるというのです。実際、新幹線が在来線のレールを走れるようにしていた時期がありますが、そのときに車両に細工をするより、本来の新幹線のレールに新幹線を走らせるメリットのほうが圧倒的に大きいことが現在では明らかになりました。

 リニアモーターカーでは、2本のレールという概念がなくなってしまいました。

 そう考えると、現在の Windows の寡占状態は好ましくありません。ようやく MacOS がなんとか頑張っているので応援したいです。(Windows のマン・マシン・インターフェイスはマックのそれをパクッたものですし・・。)

 私は仕事場では(業者による) Linux マシンを使用しています。友人で Linux が好きな人がいます。彼によれば、Linux なら迷惑書き込みのIPアドレスが1コマンドで分かり、アメリカにはそこから発信マシンを特定する有料サービスがあるそうです。

 このようなことは Windows や MacOS ではできません。むかしはもっと沢山のOSがあったのですが、消えてしまいました。商売は弱肉強食だからでしょうが、PCの未来を考えると本当はよくないことだと思っています。

 精神疾患の分類の有名なものにICD(WHO)とDSM(米精神医学会)が別々に存在したのですが。さいきんICD委員会とDSM委員会が、互いに相談して統一分類を作ろうという動きがあります。そのようなことは精神医学を貧困にさせるだけなので、私は反対いたします。


※今日、気にとまった短歌

  虹の下を病院へ急ぎ去年(こぞ)の冬吾が子も虹もなべて消えたり  (志摩市)近藤きみ子

私のコンピュータ事始め(6)(ファミリーコンピュータ)

2014-05-27 00:14:18 | コンピュータ

(ウィキペディア「ファミリーコンピュータ」より。)

 PC-8801が出たころ、息子はまだ幼稚園だった。そのころから、ゲームセンターにはブロック崩しや卓球ゲームがあった。1個のボールが壁に反射して動作するゲームである。そのようなゲーム機で家庭用テレビで遊べるマシンがおもちゃ屋で売られていた。

 それを買いにおもちゃ屋に行ったら驚いた。それらのゲーム機を生産していた任天堂という会社が、すべてのゲーム機を回収してしまったいうではないか!あとになって分かったことだが、それはファミコンを売るための任天堂の策略だった。

 で、ファミコンを買って、また驚いた。PC-88が20万円か25万円のときに、ファミコンは2万5千円くらいだった。ところがその性能ときたら、マリオがぴょんぴょん動いて背景がどんどん左に流れていくではないか!PC-88では、絶対に実現できない機能だった。それが10分の1の値段だ。ゲームセンターや喫茶店でインベーダーゲームが大ヒットしたあと、商業用テレビゲームの映像は格段に向上した。今度はファミコンによって、商業用テレビゲームと同程度の映像が家庭で楽しめるようになったのだ。

 ここから任天堂の快進撃が始まった。一介の花札製造会社が、家庭用テレビゲームのパイオニアにのし上がった。ファミコンの肝は、グラフィック専用チップを搭載したことだ。これにより、アニメの動きが格段によくなったのだそうだ。

 かつて、IBM社は収入源としてソフトがハードを凌ぐと予言して、一時そのようになった。だが、このグラフィック専用チップの開発によって、ハードの進歩がなければソフトだけではどうにもならない、ということが明らかになった。グラフィック専用チップは、ワイヤードロジックそのものである。

 任天堂のその後の栄枯盛衰、はみなさまご存じのとおりである。最初のファミコンのソフトは、カセットといわれるROM(読み出し専用メモリ)で提供された。カセットの中にはROMが2つ入っており、左側がプログラムが入ったROM、右側がグラフィックだけが入ったROMだった。

 グラフィックの最小単位は16バイト16バイトで、そのアドレスをプログラム側から操作することによって、早くてスムーズな動きを実現していた。以上のことが分かったのは、私がROMの読み出し回路を自作して、カセットを調べたからである。そこまでして中味が知りたくなるほど、ファミコンは革命的だったのである。

 グラフィック専用チップは確か本体内部にあったと記憶する。そのチップと、CPUやグラフィックROMがどのように関係しているかまでは分からなかった。

私のコンピュータ事始め(5)(シンセサイザー)

2014-05-26 05:03:22 | コンピュータ

(現在のシンセサイザー。ECHIGOYA MUSIC ONLINE のHPより引用。)

 PC-8801/9801シリーズのマシンの裏側には、インターフェイス基盤を挿入するスロットが付いていた。PC-88/98の仕様は外部のハードと接続することを前提にしていたのだ。

 そのころ、キーボード付きのシンセサイザーが廉価で売られるようになり、私はヤマハのDX-7とローランドのMKS-7のキーボードなしのモデルを購入した。廉価になったとはいっても相当な散財だった。(DX-7と聞いてピンとくる人は、ある程度の年配でかなりの音楽好きである。)

 このブログの読者なら私が音楽好きであることはご存じだろうが、私が弾ける楽器はクラリネットやサキソホンなどの木管楽器だけである。ピアノやギターは弾けない。木管楽器は和音が出せないので、一人で弾いていても面白くない。

 そんなとき登場したのがシンセサイザーだった。シンセサイザーなら一人でオーケストラができる。でも、私はキーボードが弾けないから、パソコンでシンセサイザーを操作することにした。

 シンセサイザーでオーケストラをやることは、レースを編むような地道で根気が要る作業だった。シンセサイザー用のパソコンソフトがまだ十分でなく、BASICで書かれたと思われる遅くて低機能なソフトを購入した。そのソフトで各楽器の音程と長さをコツコツと入力した。

 それでも、たった一人でオーケストラ演奏ができる。どんな名人でもやれないようなバカテクの演奏ができる。パソコンでシンセサイザーをドライブすることは、まだ30歳台だった私の重要なホビーとなった。

◆ 今日、心にとまった短歌

   大きめのセーラー服着て自転車でひょろっと一回よろけ出て行く (松本市)山本公策

私のコンピュータ事始め(4)(PC-8801/PC-9801シリーズ)

2014-05-25 00:40:55 | コンピュータ

名古屋エコ買取HPより引用。)

 その後、日立や東芝からもワンボードマイコンが発売されて、それらはテレビに接続してBASIC言語を使うことができた。だが、それらの寿命は一時で、すぐ1982年にはNECがPC-88と翌年にはPC-98を急きょ発売して、ワンボードマイコンは短い寿命を終えた。これらには入出力にキーボードとテレビが標準装備されていた。

 NECのPCシリーズは日本を席巻したが、20万円も30万円もしてけっこう買うのがきつく、私はPC-98は中古を買った。88にはOSとBASIC言語が合体したような奇妙なOSが付いていた。だが、それがマイクロソフトのビル・ゲイツが巨万の富を築くきっかけだった。

 98にはMS-DOSというOSが付いて、すべてのアプリケーションソフトがMS-DOS上で動くようになった。このとき発売されたワープロソフト「一太郎」が大ヒットして、作者は大儲けしたが、いまはどうなったか。私は手書きで論文の原稿を書くのをやめて、「松茸」というワープロソフトで書くようになった。(学会が論文をワープロ原稿しか受け付けなくなったのは、もっとあとになってからである。)

 実用ソフト以外に、さまざまなゲームソフトも開発された。パソコン通信も始まった。(だが、まだインターネットの「イ」の字もなかった。)

 EPSONという会社がPC-98シリーズのコピー機を1,2万円安く発売し始めて、ある程度のシェアを取ったが、コピー機会社に過ぎず2流の感は否めなかった。苦節何年だったのだろうか?いま、EPSONはプリンタメーカーとして押しも押されもせぬ地位にいる。ご同慶の至りである。

 その後、アップルのマッキントッシュが一世を風靡し、やがてマッキントッシュのスペックをまるごとコピーしたWINDOWSの天下になったことは、みなさんご存じのとおりである。当然、アップルはWINDOWSを「盗作」として訴えたが、顛末は知らない。ともかくWINDOWSは今、大手を振ってまかりとおっている。