4月25日付の日医ニュースによれば、規制改革会議の終了後、議長が記者の質問に声を荒げたそうだ。
質問とは「具体的に誰が新制度(選択療養)を求めているのか?」というものである。「具体的なニーズの把握が必要ではないか?」との質問に、議長は色をなして「現制度で救われていない患者は間違いなくいる」と述べ、末期がんの患者の例を挙げたという。
議長はワラにもすがりたい患者には、ワラを与えるべきだという意見だと私は理解した。現行制度では「ワラ」には科学的根拠がなく、「ワラ」を使用すると、健康保険が使えなくなってしまう。議長はそれを気の毒だと思ったのだろう。
だが、規制改革会議は過去に「EBMの推進」を謳っている。EBMとは「エビデンス(証拠)に基づいた医療」のことで、科学的なエビデンスがない行為を、医療とは認めない立場である。つまりEBMは、当て推量や感情論を排除しているのだ。
「ワラ」を医療として認めよという気持ちは分からぬではないが、科学的であろうと努力し続けてきた保険診療とはまったく相容れない。
そして、すでに述べたように、選択療養は末期がんの患者よりも、もっと元気な患者に非科学的な「エセ医療」が堂々と施される道を開いてしまうのだ。
(ここでの議長とは岡基之・住友商事相談役である。
2014-04-22 の記事に、かわひらこさんがコメントしてくださった名簿にこの人は載っていない。メンバーが変わったのだろうか?)
(現在約39兆円の国民医療費のうち、死亡の直前6か月以内に50%以上が使われているらしい。むかしからだが、死亡の前にはどれだけ高い薬を使って、どんなに濃厚な医療を行っても健康保健支払基金はNOとは言わない。ここで査定をしたら(つまりNOと言ったら)、供養にならないではないか。遺族の強い反発も予想される。すなわち現場ではすでに「ワラ」を(健康保険の範囲内で)ふんだんに使用しているのである。)