電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

「風のかたみ~宮澤賢治へのオマージュ」を聞く

2005年09月05日 20時26分37秒 | -室内楽
チェリストの藤原真理さんが、「風のかたみ~宮澤賢治へのオマージュ」というCDを出している。このところ、目覚しの音楽として一ヶ月以上親しんで来て、すっかり気に入ってしまった。クラシック音楽から映画音楽、宮澤賢治の作品まで網羅したコンピレーションもので、藤原真理のチェロ、三宅一徳の編曲とシンセサイザー、秦はるひ及び住江一郎のピアノ、三上明子のフルート、大西雄二のコントラバス、田中靖二のギター、三沢泉のパーカッション、そして指揮は平田英夫で、1992年~93年、コロムビアスタジオにてデジタル録音されたもの(DENON COCO-70759)である。
収録曲は以下の通り。

(1)風の又三郎/宮澤賢治/杉原泰蔵
(2)レター・フロム・ホーム/パット・メセニー
(3)春/グリーグ
(4)ノクチュルヌ/ハチャトリアン
(5)老人と海/プルートン
(6)マルセルの夏/コスマ
(7)イルカの日/ドルリュ
(8)ウォーターマーク/エンヤ
(9)ダンス・ウィズ・ウルヴズ/バリー
(10)チコと鮫/デ・マーシ
(11)小さなヘビ/ハジダキス
(12)ノクチュルヌ/フォーレ
(13)「裸の島」の主題によるパラフレーズ/林光
(14)星めぐりの歌/宮澤賢治

少し神秘性を味付けした聞きやすいもので、ハチャトリアンの「ノクチュルヌ」などという曲は、風変わりだが、なかなかいい曲だ。組曲「仮面舞踏会」から取ったものだそうだが、こんな機会でなければとても自ら聞くことはなかっただろう。
ウラディミール・コスマだとかジョン・バリーだとか、一世を風靡した映画音楽の巨匠たちの作品を、ハリウッド風スペクタクルの伴奏音楽としてでなく、音楽作品としてしっとりと聞くことだって、なかなか機会がないものだ。
藤原真理のチェロは、朗々と、よく歌う。
若い頃に、ツルゲーネフの『父と子』を読んだ。この中に、ロシアの田舎で父親がたどたどしくチェロを演奏して楽しんでいるのを、息子が否定的に見る場面が出てくる。あの父親の年齢になり、田舎でCDでチェロの音色を楽しんでいる姿は、息子の目にはどう映るのだろうかと思うが、一方で戦乱や生命の危険がなければ、やがて家族や父親の愛情を実感できる時もあるだろう。そのとき、チェロの調べが別の意味合いを持って響くことだってあるかもしれない、と思ったりもする。

宮澤賢治については、松田甚次郎や吉田コトさん、羽田元首相の父君との関係など、触れたいこともあるが、また別の機会にいたしましょう。
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