ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、若い頃も好きだったが、中年以降に特に親しみ深く感じられるようになった。独奏者の技巧の冴えやオーケストラの華麗で色彩的な音響を誇示する種類の音楽ではないのだが、充実した中にもしみじみとした味わいがある。
LPの時代から好んで聞いているのは、ダヴィッド・オイストラフ(Vn)とジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団による演奏、1969年のEMI録音(EAA-106)、解説は渡辺學而氏。第1楽章アレグロ・ノン・トロッポ、ニ長調。オーケストラの重厚な響きで始まり、独奏ヴァイオリンが堂々と主題を歌う。協奏曲を聞く醍醐味を感じるところだ。ここでは、作曲と初演に深く関わり、献呈を受けたヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒム作のカデンツァが用いられている。第2楽章アダージョは、前奏に続くオーボエの美しいメロディのあと、オイストラフがゆったりと、大きくて優しい演奏を展開する。第3楽章では、軽快で切れの良いリズムを刻むオーケストラをバックに、独奏ヴァイオリンが技巧を駆使して活気に満ちた演奏を繰り広げ、胸がすっとするところだ。
実は、オイストラフは1967年の10月に、クリーヴランド管弦楽団の定期に登場している。このときは、ウェーバーの「オイリュアンテ」序曲の後にブラームスのヴァイオリン協奏曲があり、ソロをつとめたオイストラフが、後半ショスタコーヴィチの交響曲第10番を指揮している。セルは、60年代のクリーヴランド管弦楽団のソヴィエト楽旅に際し、多くのソ連の演奏家と接する機会を得たのかもしれない。セルがなぜかショスタコーヴィチを振ろうとしないこともさることながら、セルとの共演が、オイストラフ側のアプローチによるものらしいということも興味深い。テンポはやや速いがほとんど同じスタイルの1967年のブラームスの協奏曲が、セル最晩年のこのLPに結実したことを思うと、このEMI録音は実に得がたい記録だと思う。
CDでは、レオニード・コーガン(Vn)とキリル・コンドラシン指揮モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を聞いている。これもまた、ややタイプは異なるが、実に力に満ちた堂々たる演奏だ。第1楽章のカデンツァは、やはりヨアヒム作のものである。
参考までに、演奏データを示す。
■オイストラフ(Vn)セル/クリーヴランド管(EMI録音)
I=22'25" II=9'33" III=8'26"
■コーガン(Vn)コンドラシン/モスクワ・フィル
I=21'34" II=9'00" III=7'47"
なお、オイストラフ(Vn)セル/クリーヴランド管(1967定期)では、意外に速い。
I=21'19" II=9'20" III=7'55 となっている。
LPの時代から好んで聞いているのは、ダヴィッド・オイストラフ(Vn)とジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団による演奏、1969年のEMI録音(EAA-106)、解説は渡辺學而氏。第1楽章アレグロ・ノン・トロッポ、ニ長調。オーケストラの重厚な響きで始まり、独奏ヴァイオリンが堂々と主題を歌う。協奏曲を聞く醍醐味を感じるところだ。ここでは、作曲と初演に深く関わり、献呈を受けたヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒム作のカデンツァが用いられている。第2楽章アダージョは、前奏に続くオーボエの美しいメロディのあと、オイストラフがゆったりと、大きくて優しい演奏を展開する。第3楽章では、軽快で切れの良いリズムを刻むオーケストラをバックに、独奏ヴァイオリンが技巧を駆使して活気に満ちた演奏を繰り広げ、胸がすっとするところだ。
実は、オイストラフは1967年の10月に、クリーヴランド管弦楽団の定期に登場している。このときは、ウェーバーの「オイリュアンテ」序曲の後にブラームスのヴァイオリン協奏曲があり、ソロをつとめたオイストラフが、後半ショスタコーヴィチの交響曲第10番を指揮している。セルは、60年代のクリーヴランド管弦楽団のソヴィエト楽旅に際し、多くのソ連の演奏家と接する機会を得たのかもしれない。セルがなぜかショスタコーヴィチを振ろうとしないこともさることながら、セルとの共演が、オイストラフ側のアプローチによるものらしいということも興味深い。テンポはやや速いがほとんど同じスタイルの1967年のブラームスの協奏曲が、セル最晩年のこのLPに結実したことを思うと、このEMI録音は実に得がたい記録だと思う。
CDでは、レオニード・コーガン(Vn)とキリル・コンドラシン指揮モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を聞いている。これもまた、ややタイプは異なるが、実に力に満ちた堂々たる演奏だ。第1楽章のカデンツァは、やはりヨアヒム作のものである。
参考までに、演奏データを示す。
■オイストラフ(Vn)セル/クリーヴランド管(EMI録音)
I=22'25" II=9'33" III=8'26"
■コーガン(Vn)コンドラシン/モスクワ・フィル
I=21'34" II=9'00" III=7'47"
なお、オイストラフ(Vn)セル/クリーヴランド管(1967定期)では、意外に速い。
I=21'19" II=9'20" III=7'55 となっている。