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中村一雄の独演会、那覇市民会館は満席!小渡和道の『阿麻和利』は愛と孤独を象徴!

2012-04-15 10:02:14 | 琉球・沖縄芸能:組踊・沖縄芝居、他
             (「もどろみゆ華の命」の舞台設定の中で独演会は繰り広げられた!)

仲風の「語りたや、語りたや」が冒頭からなぜか最後まで歌い終えることができなかった中村さんだったが、しかし、その朴訥な愛嬌のあるお人柄が伺われた。

その後のプログラムはしっかり勢いにのり幕が閉まるころは氏の最高の古典音楽の歌唱を披露してくださった。それゆえに会場は拍手が鳴りやまなかった。一踊りごとに反応のいい観衆の波である。仲村一雄という歌者への熱い期待が感じられた。それに違わなかったのは、Ⅱ部の宮城美能留作新作組踊「もどろみゆ華の命」の歌・三線である。この作品は過去に二回ほど見ているが、今回宮城美能留氏の愛と孤独そのものが阿麻和利に乗り移った作品なのだと実感できた。従来の解釈とも異なる、氏の阿麻和理の内面に心を寄せた勝連城の最後の愁嘆場を描いている。ア―キ―、や述懐節が響く中、愛する百登踏揚を大城賢勇にゆだねて自害する阿麻和利を演じたのが小渡和道である。久しぶりに氏の舞台を観た。美男の阿麻和利の凛々しさが伝わってきた。小渡さんは、男性舞踊家の中で実は最も舞台映えがいい、つまり沖縄芸能界で最も美しい男性である!佐辺良和や金城真次の後輩たちに増してそのハットさせるセンシュアルな美に魅了されている女性観衆は意外と多い、に違いない。女性の貪欲な男性美を求める眼差しを一身に受けている舞踊家なのだと言えよう。昨今は舞台を観る機会があまりなかったので、気になっていたが、小渡氏の今後の数多い舞台をもっと観たいと念じるばかりである。

この新作組踊の神女たちの踊りの場面はおもろの声唱でもあり、おもろに気高い按司と詠われた阿麻和利を彷彿させる。また百登る踏揚(宮城早苗)の阿麻和利への愛が描かれているまれな作品でもある。夫婦の情愛が流れていて、政治の仕掛け・たくらみの前に引き裂かれる絆=愛を描いている。

互いに愛し合っていた阿麻和利と踏揚の物語の筋は、宮城美能留氏の愛と孤独の深さそのもののような気がしていた。愛を全うしえない時代・時勢・権力のカラクリがあり、その嵐・内戦を生きた人間たちの凄まじさがある。そこで生きた生死=愛=永遠の物語がこうして語り継がれている。

お芝居では踏揚が最初から鬼大城賢勇と情を通じていた妻だったなどの描き方がある。阿麻和利との情愛を肯定的に描いた作品は少ないのではなかろうか?男たちの権力(慾)の掌で泳いでいた哀れな女性として描かれている。阿麻和利の妻から賢勇の妻になり金丸に城をさらに滅ぼされ鬼大城は死滅し、そこからさらに生き伸びた女性である。時代の政治に翻弄された女性として描かれる。彼女の愛の素顔が伺い知れない。推測の物語が多く描かれる。

しかし宮城氏は二人の愛を信じたのである。夫婦の絆と愛情がそこに流れていて、愛する女性の将来を鬼大城賢勇に託し、自決した、という物語である。愛するゆえに道連れにしなかった!

脚本を読みたい。字幕がついていたが、リリシズムや修辞の美しさを感じさせる詞章があり、それをもっと味わってみたいと思う。


(百登踏揚と阿麻和利の別れの愁嘆場)
今回なぜか小渡和道が宮城美能留氏の生涯の愛と孤独そのものを阿麻和利として演じていたように感じられた。不思議な感動があったのは確かである。

古謝弘子の汀間とぅは良かったね!
仲里節は芝居で振りつけられた打ち組踊でやはりその抒情のセンシュアルな面にうっとりさせられる、琉歌は抒情で成り立っている。男女の思いが生きる支えである。

久米島の久米阿嘉節、黒石森城節は聞きごたえがあった。
宮城早苗の「諸屯」も玉城秀子の「本花風」も重厚感があった。二階席からみたので
顔の表情などは読みとれなかったが、広いステージを広いと感じさせない踊りの
空間、その円をなす踊りの所作や後ろ姿に、もっと舞踊の踊りの所作と空間について
書いてみたいとそそられた。

 (フィナーレ)

ところで解説だが、いつものように安次嶺律子氏は見事な進行である。臨機応変に場をつかんでいる方である。ただ今回、解説も含めすべて「ウチナーグチ」で聴きたいと思った。久米島語でもよかった。ウチナーグチで解説する芸能公演が増えることを念じている。

わした島ことばで話してほしい。それが修復の100年につながるかな?
(7年前の印象批評ですが、最近肖像権が厳しくなっています。小渡さんは友人のお一人ですが、いつでも削除いたします。7・20・19)


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