(1)春闘の主要企業の集中回答日で満額回答が相次いで、鉄鋼大手では軒並み10%以上、14%の高値賃上げ、要求額を超える回答も出た。これまでの春闘では考えも出来ない異次元の賃上げで、岸田首相も物価を上回る賃上げ効果と歓迎した。
(2)平均で5%超の高い賃上げが見込まれて、しかし10%、14%賃上げとなるともはやバブル(bubble)といえる高さだ。イオン系列のパートも賃上げ6%を打ち出して流れを加速する。株価が最高値を更新して大手企業には賃上げの追い風になっており、まさに賃上げバブルだ。
(3)しかし、日本はGDPで独に抜かれて世界4位に後退して近い将来インドにも抜かれることが確実視され、円安で国民生活はエネルギー、多品種目の物価高で苦しく、日本経済の「実体」とはかけ離れており、株価の最高値更新といい大幅賃上げ続出で「狂乱」の様相も感じる。
(4)政財界からは「賃金と物価の好循環」と歓迎だが、これが岸田首相が目指す厚い中間層をつくり出す「成長と分配の好循環」につながるのかはそうは考えない。本ブログでも書いたが現在の日本経済、社会は二極化、格差拡大が進み、大企業、富裕層と中小企業、働く人と65才以上の高令者との格差社会がさらに拡大して「成長と分配の好循環」は遠のき、だから政財界も「賃金と物価の好循環」と経済成長論を言い出した。
(5)アベノミクス、大企業、富裕層の論理であり、今後日本の雇用の70%を占める中小企業に賃上げ効果、価格転嫁がどのように波及するのかが注目、問題だ。イオン系列のパートの賃上げ6%は流れになるのか、少子化で企業では賃上げをしない企業には人材は集まらないという危機感もある。
(6)格差社会の拡大の中で成長効果を分配論にどうつなげていくのか、政府の政策、方針、予算編成、配分の適正化、基準が試されることになる。