(1)戦争は「停戦」からしか良心的な解決方法論(conscientious methodology of settling)は見いだせない、出てこない。そこで露は安保理でのイスラエルとハマスの戦闘に関する会合で、人道危機の回避に向けて「即時停戦」の呼びかけをした。
露のウクライナ軍事侵攻では各国の停戦要求に対して、安保理では露は拒否権行使で応じてこなかった。その露がイスラエルとハマスの戦闘に即時停戦を呼びかけるなどとダブルスタンダードの二重基準の提案が受け入れられる公算は少ないとみられる。
(2)イスラエルとハマスの戦闘は露のウクライナ軍事侵攻とは違うといいたいのだろうが、停戦からしか良心的な解決方法は出てこずにイスラエル支持の米国の立場をけん制する目的、意味とみられる。
露の恥も外聞もないダブルスタンダードの都合主義には理解もなく聞いてあきれるが、先月の北朝鮮金正恩総書記の露訪問、プーチン大統領との首脳会談を受けて、北朝鮮から露に対してコンテナ1000個以上(報道)の兵器、軍需品を提供したと米国が衛星画像で明らかにした。
(3)露の兵器、銃弾不足が伝えられてウクライナ軍事侵攻で使用するものとみられる。さらに露は国際的孤立から回避するためとみられる旧ソ連諸国で構成する独立国家共同体の首脳会議が開催されて、プーチン大統領も出席した。プーチン大統領は大ソ連邦再構築を掲げて米国との対立を強めており、NATO参加を目指すウクライナへの軍事侵攻もその一環とも考えられている。
(4)米国はトランプ前大統領が米国第一、保護主義を掲げて国内経済第一主義を主張し、その後のバイデン大統領も中東、アフガンからの米軍撤退を進めて米国だけが世界の警察国家ではないと米国の覇権主義の影響力を低下させてきた。
民主主義の後退、米国の世界からの政治的影響力の後退が中国など専制国家、権威主義の台頭を招いたともいわれて、それは米国なき中東でのサウジとイランの国交関係改善にイスラエルも中東諸国との関係改善、連携を強める動きをみせて、今回の取り残される危機のハマスのイスラエル地上進攻にもつながったということも考えられる事態だ。
(5)米国は中東での反米イスラム主義国家に対抗するために自由主義のイスラエル支持を打ち出しているが、イスラエルの先鋭化に手を焼いているところもあり、中東での米国の撤退、影響力低下を受けての今回のハマスのイスラエル地上進攻、人質作戦に戦線拡大したことも考えられる。
(6)米国の逆手をとっての今回の露の安保理での即時停戦呼びかけは茶番で、恥も外聞もない露のダブルスタンダードが受け入れられるはずもなく、まずは露のウクライナ軍事侵攻の自国責任での即時停戦こそが求められるものであり、それを受けてのイスラエルとハマスの停戦協議に向かわせるのが良心的な解決方法論だ。