こないだ、もの凄い風吹いた。
大体風強い土地みたいやけど、
それでもこないだのは特に凄かった。
裏手の竹やぶの竹、折れそうになるくらいしなってた。
物干し竿がガタンッ、ガタンッて大きな音立てる。
ベランダのサンダルが、風にあおられてズリズリ動いてく。
竿は慌てて下におろし、サンダルは部屋の中に取り込んだ。
PCニュースでは「全国的に春の嵐」て報じてた。
こういう時、以前住んでた山奥の家やったらもっと怖かったやろなあ。
以前住んでた村。
山の斜面に沿って段々に家が建つ村。
うちの家もそうやったけど、すぐ下の家もかなりの古民家。
築100年ほどの家。
瓦はところどころ反り返ってる。
道具小屋のトタン屋根はペラペラ。
古うから「吹上」ゆう地名で呼ばれてたくらい、下から吹き上げる風の強い地域。
台風、暴風雨のたんび、下の家の瓦やトタンが飛んでけえへんか気が気やなかった。
瓦だけやない。
家の前の崖は、しょっちゅう石が転げ落ちてくるし、雨降ったら斜面から水が噴き出す。
すぐ下の川は水嵩増して、ゴーゴー水しぶき上げる。
いつ崖崩れ起きるか、河氾濫するか、瓦飛んでくるか。
雨風治まるまで、ひたすら耳すましてた。
私の勝手で、選択の余地なくこの村に連れて来られた「いち」とスピカ。
いざとなったらこの子らどうして守ろ。
そればっかり考えて、暴風雨のたんび、ドライフードや水、トイレ砂、バッグにぎゅうぎゅう詰め込んでた。
猫カートとキャリー、雨除けのビニール袋かぶせて、スタンバイしてた。
あれから何べんか転居して、
「いち」とスピカは、ここに来る前に亡くなってしもた。
今回の風、それから雨も、強さは多分あの山の家とおんなじくらいなんかもしれん。
窓に打ち付ける風や雨の音には、やっぱり多少気持ちざわざわする。
それでも、あの頃みたいにチクチク刺されるような緊張はせんで済んでる。
なんでか。
地形とか、そんなこと以外のことも多分‥。
その理由、ここに住みながらゆっくり確かめていこ思てます。