ふと、赤目のことを思い出した。
今から十年ほど前、当時住んでいた大阪北部の自宅から、毎週日曜日、電車を乗り継いで赤目自然農塾に通うた。
月一回、川口由一さんが現地で実地指導してくれはる。
希望者には、敷地内の畑や田んぼも貸してもらえる。
私も運よう畑と田んぼを少しずつ貸してもらえた。
で、日曜ごとに着替えとか飲み水とか種とか、しこたま縛り付けたキャリー引っ張って、朝まだ薄暗いうちから出かけて行った。
近鉄「赤目口」が最寄り駅。
ここから線路沿いに進んで、田んぼ道抜けて、ずうっと山の方に歩いて行く。
道はだんだん上りになって、ラストはかなりの急坂。
しこたま荷物持ってる身には鬼の坂。
途中、いつもつながれてる犬がおる。
「どない ? 元気でやってるかぁ ?」
返事なんかないけど、なんとなくしんどいの軽なったような気ぃして、もうひと踏ん張り、登って行く。
これが「赤目自然農塾」の目印。
私が通うてた頃、月一回の塾日には大勢の人が来てた。
九州やとか東北やとか、遠いとこから泊りがけで来てる人も多かった。
小さな子供連れてる若いカップルとか、案外若い人らが多かったなあ。
その真ん中で川口由一さんが、道具の選び方とか種の蒔き方とか、自然農の基本から実地指導してくれはる。
見学してる人から質問出たら、川口さんはすぐそれに答えてくれはる。
畑仕事なんかしたこともないゆうド素人がほとんどで、とんでもない質問が飛び出したりする。
それでも川口さん、丁寧に丁寧に、私らの頭撫ぜ撫ぜするみたいに答えてくれてはった。
お昼頃に川口さんの指導は一旦終わって、あとはそれぞれお昼食べる人、すぐに自分の畑行く人、いろいろ。
お昼は、お味噌汁がふるまわれる。
山ひとつが丸ごと塾になってる感じやから、自分が借りてる畑に行くまでがまた大変。
要所要所、方向指示は立ってるけど、それでも最初のうちは何回か道に迷うてた。
川に渡された橋は、塾生の人らが作ったもん。
鍬とかスコップとか手箕とか、自由に使える道具が置いてある小屋も、塾生たちで建てたんやって。
赤目って、奈良県と三重県の境にある。
塾は駅から歩いたら40~50分かかるし、自宅からやとほんま朝星夜星やった。
あんなとこまで毎週えっちらおっちら、よう二年間も通えたなあ。
今、赤目はどうなってるかしらん。
なんでかしら、急にそんなこと思い出した。