孤独を愛するスピカ。
「いち」のラブコールが熱すぎて、ねぐら飛び出してしもた。(「片想い」)
「グスン。せっかく機嫌ようねんねしてたのに‥」
まあ、まあ、まあ。
「いち」はスピカちゃんとくっついてたかったんよ。
堪忍したってえな、まあ、まあ、まあ。
「えー ? 」
「いち」はな、スピカちゃんのこと大好きやねん。
そやからな、まあ、まあ、まあ。
「うーん‥」
まあ、まあ、まあ、まあ。
「ごろ゛ごろ゛ごろ゛‥‥」
孤独を愛するスピカ。
「いち」のラブコールが熱すぎて、ねぐら飛び出してしもた。(「片想い」)
「グスン。せっかく機嫌ようねんねしてたのに‥」
まあ、まあ、まあ。
「いち」はスピカちゃんとくっついてたかったんよ。
堪忍したってえな、まあ、まあ、まあ。
「えー ? 」
「いち」はな、スピカちゃんのこと大好きやねん。
そやからな、まあ、まあ、まあ。
「うーん‥」
まあ、まあ、まあ、まあ。
「ごろ゛ごろ゛ごろ゛‥‥」
白菜とか、カボチャとか、大根とか、
そうゆう太らさなあかんもん育てんのは苦手。
そやから、たまにしか作れへん。
今年はその「たま」ゆうのにあたった年なんか、春に種蒔いた。
お蔭さんですくすく育ってくれて、
今、おかちゃ家の食卓をひたすら支えてくれてる。
大根料理の中で一番好きなんが、ゆず大根。
いつもの拍子切りの他に、今年はいちょう切りも作ってみた。
時々歯ぁの調子悪なるんでね。
それから、葉入りカクテキ。
おかずにパクパク食べられるように、薄めに漬けた。
ビンゴ ! やったんは、これ。
ゆず大根作る時にむいた皮を、葉っぱと、ちりめんじゃこと、去年収穫した残りの金ゴマと一緒に軽うく炒め煮。
初めて作ってみたけど、割といける。
大根作った年は、ゆず大根と一緒に定番にしよ。
というわけで今我が家は大根責‥いや、大根づくし。
「明日は一日、傘は必要ないでしょう」
「洗濯日和です」
各局の気象予報士が口揃えてそう言うてても、
信じたらあかんで、そんなこと。
ピンポイント予報で「晴れ」マークがついてるまさにその時に、
雨ザーザー降ってるのがこの村やねん。
いろいろ干さなあかんこの時期、
なるべく家に居られる間に、干して、干して、干しまくる。
と言うか、干し物日和には家に居る。
冬ごもり用の大根干す。
人間の布団と、お猫様達のマットも干す。
洗ったお猫様ベッドも、一輪車の上で干す。
洗濯日和は、行楽日和や農作業日和やない。
ひたすら自宅待機の山里暮らし。
スピカ大好きな「いち」。
孤独を愛するスピカ。
スピカと一緒に寝んねしたい「いち」。
丁重にお断りしたいスピカ。
そないに嫌がらんでも、スピカ。
どないしても潜り込みたい「いち」。
ついに突撃。
即、立ち上がろうとしてるスピカ。
きっちり逃げられてもた「いち」。
「あ~ぁ‥‥」
出来上がった元種使こうて、いよいよパン焼く。
玄米ご飯練りこんだもちもちパン焼きたいなあ、てことで、あっちこっちのレシピ参照。
これでええんかなあ、どうかいなあ、言いながらなんとかパン生地完成。
これを一次発酵させて、
なんか、お好み焼きの生地みたいになってへん?
個数分に分けて丸めて、
二次発酵。
膨らんだ。
これをオーブンで焼く。
キュウリ挟んで、いっただっきまーす !
うん、うん、うん、もちもちしてる。
ビギナーズラックやなあ、けっこうおいしいでー、
なあ、「いち」。
ふ~ん‥‥
何とか出来上がった発芽玄米酵母液。
パン焼くのに、このままストレート液のまま使う方法もあるらしいけど、
元種ゆうのを作って使うことにした。
その方が、パン焼く時に失敗しにくいんやって。
発芽玄米酵母液と強力粉、同量ずつを保存用の瓶に入れてよう混ぜる。
これが2倍に膨れてくるまで待つので、まずは現在の高さに輪ゴムを巻いて印にしておく。
時々蓋を開けて空気入れる。
そろそろ倍に膨れたかな。
そしたらこの瓶を蓋したまま冷蔵庫に6~8時間入れておく。
6~8時間たったら冷蔵庫から出して、
また発芽玄米酵母液と強力粉、同量ずつを瓶に継ぎ足して混ぜる。
印のゴム輪を、中身の位置に合わせとく。
これが更に倍の量まで増えるのを待つ。
はい、増えました。
これを冷蔵庫に6~8時間入れといて、
ここにもういっぺん同量の酵母液と強力粉を入れて混ぜて、倍に増やすんやけど、
このままでは瓶から溢れてまう。
大きい瓶に入れ替えて、
倍に増やして冷蔵庫に入れる。
要はおんなじこと三回繰り返して出来上がったねばねばの白いもん、これが「元種」。
さあこれでやっと、パン焼く材料揃うたことになる。
何もかも初めて尽くしやけど、ここまでのとこ、びっくりするくらい順調 。
ふん、ふん、ふふん ♫
人気のテレビ番組のひとつに「ポツンと一軒家」がある。
なんでこんな人里離れた不便なとこで暮らしてんのか、
そこの住人のこれまでの人生とか、これからどうするつもりなんか、
そんなことが紹介されて、視聴者は「ほうー」なんて思いながら見てはるんやろね。
あんな景色のええとこで暮らせたらええなあ、とか、
人とのいざこざもないんやろなあ、とか、
毎日、好きな時に好きなだけ好きなことしてみたいなあ、とか、
けど実際にはあんなとこで暮らすんは自分には無理やろなあ、とか、
なんやかんや勝手に思いめぐらしながら皆見てはるんやろねえ。
番組での紹介の仕方もあるんやろうけど、登場する住人達は皆、なんか満足そう、幸せそう。
なんでやろ。
「趣味はなんですか ?」番組スタッフから聞かれたお婆さんが答えてた。
「‥‥畑」
店の一軒もない、
冬になったら道も閉ざされてしまう山の中で、
食べ物手に入れるためには、自分で野菜作るしかあれへん。
それをこのお婆さんはニコニコしながら、
趣味ゆうたら畑かなあて、言うてはる。
幸せそう、なんやのうて、ほんまに幸せなんかもしれんね、このお婆さん。
スピカが、不穏な動き。
台所で、
なんや、どしたん ?
台所に入ること自体珍しいスピカ。
おまけに、そのスピカのこんな姿勢、ひょっとして十年ぶりかもしれん。
上、なんかおんのん ?
話しかけてる私を振り向きもせんと、
もう一生懸命のスピカ。
すわ、ムカデか !
調理台周辺見回したけど、そういうおぞましいもんは見当たらん。
スピカが見上げてる先にあるんは、
畑から採って来たイチジクと、味噌汁用にお椀の中に準備した大根葉と、
それから柿酢。
柿酢か ?
仕込んでからもう一月以上たつから、そろそろ出来上がってもええ頃やねんけど。
香りがまだやらかいというか、ツンとしてないから、
まだかもしれんと勝手に思てるだけかもしれん。
そうゆうたら、一週間ほど前から急に、瓶の口付近にコバエ御一行様が遊びに来てはる。
柿酢のおいしい香り、上がってきてんのかなあ。
一番先に気づいたんがコバエで、
その次がスピカ ?
あんたたち、どっちも柿酢好きなん ?
日中の最高気温が15℃にも届かん日ぃが出てきたこの頃、
発芽玄米酵母の発酵がなかなか進まへん。
仕込んでから一週間近こうもたつのに、泡出てけえへん。
冷蔵庫の上に置いたらええゆう人もいてはるけど、あんな上に瓶置くの怖いしなあ。
そこで、
ストーブの上に置いたった。
燃料タンクの上の、温度にしたら多分38~40℃くらいかなあ。
あっためたったせいか、次の日ぃくらいからぷくっ、ぷくって遠慮がちに泡が立ち始めて、
おーっ !
こういうことか ?
泡立つって、こうなったらええんか ?
自分で自分に聞いて、「よし !」とする。
待ってる間、ネットいろいろ見てたけど、なんやらようわからん。
ストレート液種やとか、中種やとか、元種やとか、湯種やとか。
私、要はパン焼きたいだけやねん。
なんでそないに種の種類あるのん ?
どの種使こたら一番簡単でおいしいんや ?
種をめぐって、もうしばらくネットサーフィン続きそう。
こちらさんも、来年の種になるべく、上手に枯れようとしてはる最中です。
夏の間、ねばねばで元気くれてありがとうね、オクラさん。
どうかな、秘伝豆。
刈り取りにはまだ若いかな。
ふん、ふん、ふん ♪
て、機嫌よう見て回ってた。
足元に張り巡らしてた倒伏防止用の麻紐。
これがところどころ切れてる。
ああ、そろそろ傷んできてるんかなあ、
簡単にそう思うてた。
ところめが、
お豆さんようよう見てみたら、
ん ?
た、食べられてるやん !
改めて見回してみたら、
あっちこっち切れてる麻ひもは、
何者かが噛みちぎったに違いない。
どんならんな、
言いながら紐切れてるとこつなぎ直し、
その日はとりあえず帰りましたがな。
あくる日行ってみたら、
紐はまたきっちり噛みちぎられて、お豆も枝についたまま食べられてしもてる。
こりゃあかん。
収穫するにはまだ青すぎるんやけど、
このまま畑に置いといても誰かさんのポンポンに入ってまうだけや。
ゆうことで、しゃあない、刈り取って来た。
そうよなあ、秘伝豆おいしいもんなあ。
どなたさんか存じませんが、お目が高い。